覆水盆に返るほど甘くないんだが

今年は「高校生クイズ」の感想を書いておきたいと思う。


「クイズオタク高校生どや顔選手権」という失われた5年を経て、今年はようやく「らしさ」を取り戻したかのような編成になった。いわゆる知力(というか古典クイズ常識のほうが表現として正しい)偏重ではなく、高校生クイズの祖ともいえるウルトラクイズのスローガン「知力」「体力」「時の運」という3本柱に加えて「チームワーク」が加わった、「正しい」高校生クイズをやろうとしていた。その点だけは素直に褒めていいと思う。戻すことに意義がある。


もちろんそれだけで手放しに褒められるわけではない。高校生クイズの最大の見どころは「クイズを勝ち進む度に深まる友情」なのだが、そのためには「全国の代表として集められた高校生たちが少しずつ敗れていき、その無念を勝ち進んだチームに託す」という様式美が必要なのである。しかし今回は6チームが海外で競うということばかりに主眼を置きすぎて、せっかくの全国大会なのにそこまでに敗れたチームがほぼ「いない」がごときに扱われていたこと。これはいただけない。


「どや顔選手権」のときにも同じ指摘をしたが、勝敗や実力は結果論であり、全国大会に進んだチームは最初は等しく扱われるべきなのである。学校が名門だとか関係ない、同じ代表なのだから。あれを見て「なんかつまんねえな」とやっぱり思ってしまうわけですよ。特に地元がぞんざいな扱いを受けて、それでもまだ見る気になるか、つう話である。そこらへんの配慮が絶望的に足りない。なぜ高校生の参加者が激減しているのかの理解が甘いと思う。


もちろん最大の原因は「どや顔を選手権を5年も放送した」ことに尽きるわけだ。あれを見て「私たちも参加しよ〜」と思うリア充の女子高生はいない。結果残ったのはクイズオタクのメガネ男子だけだった。それが悪いとは思わないが、人は集まらないのだよ。その上本戦に出ても扱いがぞんざいではそりゃ思い出づくりにすらならない。だって映らないんだもん。開催すれば人が集まる時代が終わったことに気づいてないのか。北海道なんて今年228人しか集まってないんだぞ。文化祭じゃねえんだぞ。この現状をちゃんと見つめているのだろうか?


中身に関しては「ウルトラクイズ」へのオマージュが多数見受けられた。「今までの高校生クイズウルトラクイズとは違う!」とか謳っていた割にはウルトラのクイズ形式ばかりという、ギャグなのかわざとなのか分からん感じ。空港前の大声クイズ、敗者復活の泥んこ○×、決勝でのバラマキはいずれもお馴染みのクイズ。こうなりゃウルトラハットまで用意してほしかった。欲を言えば体力系クイズのマラソンクイズが欲しかったかな、と。


クイズの中身は「元に戻った」という認識が正しい。まあもう少し難しくてもいいとは思うんだが、本来の高校生クイズの問題はこんなもんである。決勝で「難問」指定されていた問題ですら、高校生には多少難しいものの、決して「難問」という類ではない。あと、知識偏重ではないにしろ「高校生クイズ」であるからには、最後はふつうの早押しが見たかったのはやはりワガママなのだろうか。


番組としては、これはもう長野高校の1年生女子御子柴さんに救われたと言っていい。ていうか御子柴さんいなかったら、かなりゾっとする。あまり言うべきではないのかもしれないが、やはり女の子は必要だ。圧倒的に「テレビ的な画」が違う。内容こそ違えど、去年と同じくむさ苦しいメガネ男子だけでは視聴者もうんざりする。美少女じゃなくていい。ちょっと元気な女の子が青春しているだけで番組の風合いが格段に違ってくる。もし彼女がいなければ今回の大会も「結局メガネ男子が海外をかけめぐる」だけだったもんなあ。まさに紙一重


もちろん失われた5年があるので、今回長野高校のような男女混成チーム*1が出てきたこと自体奇跡的だった。来年もこの路線でやっていく決意があるならば、せめて「男女混合チーム優遇!」くらいの制度は打ち出してもいいのでは?クイズオタクからリア充優遇とは振れ幅大きすぎですが、この路線に必要なのは紛れもない「女子の力」である。今年の番組を見てつくづくそう思った。


今回の最大の見どころは長野高校の微妙な男女関係にありました。御子柴さんが準決勝フランスで一人でゴールしたときに、二人いた男子の先輩のうち片一方に抱きついたわけですよ。本人無意識なのかもしれないけど、ここで抱きつかれなかった男の子には軽い「イライラ」が生まれていたはずです。これが決勝のラスト3人4脚での足並みが揃わなかったことの原因になっていたと思えば、こんなに面白い大会はなかった。そりゃ雑念の混じらない男3人慶応ボーイズが勝つわけです。でもやっぱり高校生クイズにはこういう雑念があってほしい。あるからこそ面白い。見所は決してクイズだけじゃないわけです。


というわけで、今年の高校生クイズ、自分は割と楽しみました。しかしまだまだ改善点は多い。内容はもちろんだが、「来年参加してぇ!」と思わせるような番組作りをあと3年はやっていかなければいけないよな。そのターニングポイントとして意義のある大会だった、と後年思えることを願う。

*1:今は「ドリカム編成」なんて言わないし言えないのよね。今なら「いきものがかり編成」とでも言うのだろうか?