仏作って魂入れず

今年も「高校生クイズ」の感想を。とはいっても去年の感想とあんまり変わらないんですけどね。


大いなる遺産「ウルトラクイズ」のクイズ形式をベースに、高校生がアメリカ横断してクイズするんですよ。「ウルトラクイズ」の縮小再生産みたいな感じですね。これだったら「ウルトラ」やってくれよ、とは思うのだけど、もう色々な意味で無理なんだなあと感じてしまう。


ハワイ前の1回戦で大人数のマラソンクイズ。ハワイではどろんこ。準々決勝のロッキー山脈では蒸気機関車(これは「ウルトラ」における山越えでは鉄板)、準決勝のフロリダで奇襲&大声、そして決勝ニューヨークで変則バラマキ(クイズ忍者を探しだし、クイズを持ってくる)+10問選手のクラシックスタイル。もう全て「ウルトラ」におんぶにだっこですよ。


ただ、やってることは「ウルトラ」そのものなのに、何かこう「ウルトラ」とは決定的に違う部分があって、それは「出場者のストーリーが見えてこない」ことなのですね。初代司会者福留功男は、ウルトラクイズを「人間ドラマ」と捉えていた。だからこそ見ているほうもクイズもさることながら、番組として感情移入が出来るわけだ。それが今回の放送はどうだ。まあ今回に限ったことではないが、ちっとも人間ドラマなんか見えてこない。時間の制約などもあるんだろうけど、なんか「そこじゃないだろ」という部分にのみ力が入っていて、余計なものは流されるんだけど、肝心なところが何一つ分からないという。「ウルトラ」へのリスペクトがまるで見えないのです。


例えば自分は2人ペアになったときから、「カップル爆破クイズをやれ」と言い続けている。今回も残念ながら爆破クイズはなかった。もちろんカップルはカップルで番組上もてはやされてはいるんだけど、そのもてはやされ方が何か違うと感じる。煽るべきは「非モテ」の「クイズをしにきたメガネ男子たち」との対立の構図であるにも関わらず、それを煽ることもなく、扱いも雑。もし今回自分がこの番組を仕切るのだとしたら、いかにもモテなさそうだったゴツい佐賀西をこれでもかとばかりに持ち上げていただろう。もちろんラサールでも開成でもいいのだが、いわゆる本当の「クイズ」をしにきたクイズエリートを、何か別の面で心揺さぶってやるのが「高校生クイズ」の役割だろうよ。何普通にクイズさせてんだよ。


カップル爆破クイズをやるとしたらどうだろう。当然クイズの強いメガネ男子優位と思いきや、リア充カップルにしかわからんような問題ばかり出題されて、下唇を噛む男子たち。これぞまさに人生の縮図!とか色々出来そうなもんなのに、やらない。心揺さぶられる場面がないんだよねえ。


完全にしょうもなかったのが、寝起き奇襲クイズ。奇襲は奇襲なのだが、別に早く起こさせるだけでクイズがすぐ始まるわけでもない。1番最初に起きてきたグループには1ポイントあったものの、遅いからといってペナルティがあるわけでもない。女性ペア及び男女ペアが遅くなる(女性のほうが準備に時間がかかる)ことを逆手に取ったメガネ男子ドヤ顔コンビ優遇でリア充爆破しろ的な展開でもなく、ただ早起き1ポイント。バカかと。こんなもん全部カットでもよかったわ。時間の無駄じゃ。


それに加えて大声クイズの絶叫フレーズの淡泊なことときたら。個人的に枡アナのそつのない進行は嫌いじゃないんだけど、こういうところで「それはなあ」と思ってしまうよ。たぶん絶叫フレーズもほぼ台本ありきなんだろうけど、福留なら、福澤ならもっと違ってたんだろうなとかオッサンは思うわけですね。そこに人間ドラマがあることを知っている人たちなら、ね。


というわけで完全にオッサンの小言になってしまいましたが、「ウルトラに寄せるなら、せめてもう少しウルトラの魂まで寄せてほしい」と思ってしまうわけです。さらに言えば、二人一組カップル優遇の記念旅行を装っておいて、今回の問題は「クイズ大会らしいクイズ」ばかり出題され、研究会的なことをしていない一般参加者にはやはりハードルが高い。ドヤ顔男子高校生を排除しつつ、リア充参加待ってます的な雰囲気を出しながら、結局一般的な高校生にはハードルが高い、というもう誰に向けてやってるんだか完全に分からない状態。申し訳ないが今回1秒も映らなかった北海道の代表の高校、とても北海道代表としてクイズに参加するような高校じゃないよ。それだけ「誰も参加していない」ことがバレるだろあれは。


もうそろそろ最終回かなあ。そんな気がした今回の高校生クイズ。一番印象に残ったのはどの高校生よりも、決勝の問題で出てきたアメリカ人尺八奏者の演奏が微妙にヘタだったこと。それでいいのか高校生クイズよ。