寝てた子どもが死んでいる

・魔王
韓国で社会現象にまでなったドラマをリメイク。生田斗真大野智主演。


結構期待して見たわけですが、うーんどうだろう。ちょっと厳しいかも。連ドラのサスペンスというのは「次にどうなるんだろう」という見せ方が肝要。成功例でいけばフジだと「眠れる森」「アンフェア」、TBSでも「QUIZ」なんかが上手かったという記憶。もっとも「QUIZ」は最後がグダグダすぎたけど、翻って考えると最後がグダグダでも途中の緊迫感があれば「この次どうなるんだ」と思わせてくれればいいということでもある。


その点「魔王」はリメイクであるという不利な点を除いても(もっとも韓国ドラマのほうの「魔王」を既に見ている日本人は視聴率にして1%にも満たないはずなので殆ど問題はないはずだが)、あまりに先を読ませすぎ。初回にして「成瀬(大野)が芹沢(生田)の周辺を狙うのは、芹沢が中学生の頃成瀬の弟をナイフで刺し殺したものの無罪になったから」という復讐の動機を明確に紹介し、そして次々に巧妙なやり口で殺していくだろうことを提示されては「この先どうなるんだろう」もクソもない。きっとみんな死ぬ。簡単に言えば全く謎がない。


犯人が判明している以上「誰が犯人なのか」で引っ張ることは出来ない。となれば犯人と探偵役(警察)の推理合戦に主軸が置かれるのは自明であるが、初回を見た限りでは明らかに成瀬の芹沢に対する態度が怪しい。もちろん全体像を知っているからそう思うのかもしれないが、それにしてもあんな敵対心を匂わせるような言動や雰囲気では、なんだかすぐに捕まってしまうような気すらする。だが捕まらないという視聴者にとっては「なんだかなあ」というフラストレーションを抱えて今後展開する気がするのだ。


犯人が分かっていながらでも「DEATH NOTE」のような高度な心理戦に持ち込むという手段もあるだろうが、芹沢が高度な心理戦を展開するようなキャラでもないし無理。となると、「裏で糸を引いているいかにも怪しい弁護士を全く捕まえることが出来ないマヌケな警察」をずっと見せられることになるんじゃないだろうか。テレビの前では「おいおい、いくらなんでもそれは怪しいだろ」ということがあっても、なんだか知らないけど捕まらないんだろう。


とりあえず今の段階では「いつの時点で芹沢がこの事件の犯人が成瀬であることに気付くか」で引っ張っていくんじゃないだろうか。この後同じように芹沢の関係者が殺されていけばさすがに「これはどういうことだ?」という話になる。気付いてから本格的に「対決」になるんだろうけど、これがどの段階で移行されるかがこのドラマそのものの命運も握っているはず。比較的早い段階(具体的に言えば3話まで)で気付けば次の展開にいけるわけで視聴者の関心も持つだろうが、それ以上引っ張られると視聴者の関心は間違いなく落ちる。ここに制作側が気付いているかがカギ。


たとえ最後に大どんでん返しがあって「結末まで見ると素晴らしいドラマ」と評価されることがあっても、連ドラのサスペンスとしては失敗作になると思う。「あしたの、喜多善男」だって最後のほうはまあまあ良かったと思うけどいかんせん前半が退屈すぎた。だからこそ初回で手の内を見せてしまった「魔王」は早い段階で「次」に移行すべきだと思う。あとサイコメトリーの濫用だけは避けてほしい。


最後に枝葉の部分に触れておくなら、主演大野の不敵な感じは非常によい。小林涼子もよい。三宅裕司だけちょっと浮いてる。


というわけで、どちらも7月いっぱいが勝負のドラマじゃないでしょうか。ただでさえ視聴者の関心はオリンピックが始まったらそっちにいってしまうので、それまでにいかに固定客を離さない「面白さ」が出せるかが肝要かと。特に「魔王」は「あれ、つまんないかも」と思われた時点で終わりでしょう。初回ならびに2回目の視聴率が全てかも。