現実と虚構の狭間で

GW中はどこに出かけることもなく、友人と酒を酌み交わすこともなく、けっこうひたすらに「たまった録画や未見のTVerの番組を消化する」に費やしていました。それは「例年通り」とも言うのですが。

 

連休中にこっち(北海道)では地上波放送されていませんけども「イシナガキクエを探しています」という番組がテレ東で放送されました。これを書いている時点で初回はまだTVerで見ることができます。

tver.jp

テレ東は有望なディレクターがここんとこ退社続きではあるんだけども、その中で気を吐くプロデューサー大森時生が手掛けるモキュメンタリーの新作である。

 

モキュメンタリー、別名フェイクドキュメンタリーと呼ばれるジャンル。ドキュメンタリー、あるいは他の番組の様相を見せておいて、その中に仕組まれている「何か」を見せられる番組。ミステリーやホラーと相性がよい。自分も熱狂的にハマったフジの「放送禁止」シリーズがこれにあたる。

 

大森プロデューサーが手掛けた作品は「Aマッソの頑張れ奥様ッソ」「テレビ放送開始69年 このテープ持ってないですか?」「SIX HACK」「祓除」と、どれもがモキュメンタリーである。最初の「奥様ッソ」はBSテレ東で年末にこそっと放送され、見た目普通のバラエティに見せておいて、中身がちょっとずつ不穏。「放送禁止2」の大家族を彷彿とさせる出来で話題になったのである。以降の作品は「奥様ッソ」ほど分かりやすくなくなり、少しずつ「不穏」の要素が強くなっていく。「SIX HACK」あたりは10代で何も知らずに見てたらガチで小便ちびりそうな衝撃がある。大人でよかったとつくづく思う。

 

そんな大森Pが仕掛けるモキュメンタリーの新作「イシナガキクエ」を見るにあたり、TVerでおおよそ見ることができるこれらのシリーズをGW中にあらかた見ました。なんかモキュメンタリーばかり見ていると気持ち悪くなってくるので、それこそ普通のバラエティとかドラマとかをはさみながら、である。で、これを書こうとしたら麒麟川島がtwitterで「見てる」というつぶやきをしていて、便乗したみたいで恥ずかしすぎるという事態に。まあ書くんですけど。

 

「イシナガキクエ」の初回は自分も大好きだった「TVのチカラ」的な「公開捜索番組」のていで始まる。取り上げるはずだった「イシナガキクエ」さんを探しているという老人は、今年の最初に亡くなってしまったのだという。それでもこの「イシナガキクエ」が誰なのか、実在するのかを番組が募集し、少し情報が集まった時点で番組は終了する。まあ見てもらうのが早いので、先ほどのリンクからどうぞ。初回の放送だけでは何が不穏でどういう仕掛けなのかまだ正直よく分からない。連作だから当然といえば当然か。だからこそ「先に楽しみがある」というのは、5月病になりかねないこの時期にはありがたい。これのために5月頑張れる。

 

モキュメンタリーは地上波と相性の悪い番組でありながら、地上波でやってこそ最大限の効果があるような気もしている。テレビでの先駆けとなった「放送禁止」シリーズは、ここ最近放送されていない。後期の作品では「この物語はフィクションです」が頻繁にテロップで出るようになり、何も知らずに見た人が勘違いしないようにという配慮が足されるようになった。本当なら「何も知らずに見てしまった」のが一番美味しいモキュメンタリーなのだが、多くの人が目にしてしまう可能性があるメディアであるが故に、その美味しさを損なうような事態になってしまった。致し方ないことではあると思うが、そこに「なんかよく分からないけどゾクゾクする」という原体験は得られないのがつくづく惜しい。最近は「世界でいちばん怖い答え」シリーズが後継番組として放送されているが、多少の物足りなさはある。

 

じゃあこういうのは「好きな人が見る」ネットでやればいいのかと言われれば、そうでもない。ネットはまだまだ「胡散臭い」ものが混在するメディアなので、それが本当っぽく見せてあっても、やっぱりまだ「ニセモノだよな」になってしまう。それがテレビ、とりわけ地上波という「万人が見て差し支えないもの」の中に混じるとやっぱり面白い。実際大森Pがそう述べている。自分の意見のように書いてしまって申し訳ないが、ちゃんと作っている側がそれを認識している。実に頼もしい。

——インターネット発のコンテンツと比較した場合、テレビ放送についてはどう考えていますか。

大森:自分の選択でクリックして見るのと、テレビをつけたらたまたま遭遇したというのでは、やっぱり出会いの質が違いますし、偶然に出会ったものに惹かれるほうが、より強く響くんじゃないかなとは思っています。あと、ネットはそもそもカオスなものとして認識されていますよね。非公式もイリーガルも有象無象が混在している。なので、歪なものに出会ったとしても、そんなには驚かない。でもテレビは、カオスとは程遠い、整然としたメディアなので、ちょっとした異物が混入しただけでも驚きがあるし、バグが起きた時のインパクトも大きい。

——テレビは日常であり安心感のあるメディアだからこそ、「日常を侵食するような怖さ」を演出しやすいと。

大森:わかりやすいことが前提になっているので、わかりにくいことが放送されると、それだけで怖さも増幅されます。そこを利用して、テレビだからこそ、わかりにくいことを意図的に流したいなと思っているんです。

tokion.jp

もはやモキュメンタリーの名手と知られてしまった大森Pが、今度は「イシナガキクエ」において、どのような形で視聴者の意識をぶん殴ってくるのか。自分の興味はここに尽きる。考察も謎解きもキレイな伏線回収なんていらないくらいの「不穏な何か」でもってゾクっとさせてほしい。

 

そんなことを考えながら、空いた時間で自分はこちらも多少話題になっている少年更生施設に関する何らかの謎も追いかけていました。まだ全部終わってません。自分はもはや現実と虚構の狭間から戻ってこれないような気がしています。興味のある方は「イシナガキクエ」も「愛宝学園」も、是非。戻ってこれなくても知らな

kagamino-jrep.net

www.youtube.com

 

jsdhidhuaudakklcp