なぜ義剛はどこまでも義剛で在り続けるのか。一連の花畑牧場ストライキ事件を簡単におさらいしてみよう。
花畑牧場が、自身の会社で雇っていたベトナム人40名が寮の光熱費値上げに抗議しストライキを決行したことに対し雇い止めを行い、それに反発したベトナム人側がさらに労組に駆け込み徹底抗戦する構えを見せた。
田中さんは電話取材に「今後は顧問弁護士が団体交渉を行う。示談するつもりはない」と話した。(共同通信)
とあくまで戦う姿勢を見せていた。
これに関して自分は
と呟いた。自分は外国人労働者の問題に詳しいわけではなく、またそこに存在する難しい話に首を突っ込みたいわけでもない。これを読んでいる方や、そして義剛本人ももう忘れているかもしれないが、そもそも花畑牧場は「地域の雇用」とか「従業員は家族」とか散々言ってきた経緯がある。それなのに、いまや外国人労働者を使い捨てる様態でしか労働者がいないのか、そして地域から断絶されているのか、と切ない気持ちになった。
また、義剛が数年前からアジアにしょっちゅうちょっかいを出している、もとい進出しようとしていたことを知っていたので、そこの絡みもあって「どうせ技能実習とかいう名目で安い人件費で使ってやろうとか思ってたんだろ」と何の疑問もなく思ったわけです。
それら全部ひっくるめて、北海道の片田舎に大量のベトナム人といういびつさの味わいが深すぎる、と思ってのつぶやき。
断っておくが、こういう労働問題はどちらが100%悪いってことはないのだと思う。もちろんベトナム人労働者側の言い分があり、そして花畑牧場側の言い分もあるはずだ。ベトナム人が何の遠慮もなく光熱費をバカスカ使っていたのかもしれない。それにしても半年で倍はやりすぎだろうというのも分かる。両者の言い分をまとめたうえで、互いが現実的に歩み寄ることは全然出来たはずだ。
けど自分は義剛をウォッチしすぎているあまり、上記のような冷静な判断は一ミリもせずに「こんなもん義剛が悪いに決まってるよね」と秒速で思ったわけです。だって義剛は「そういうことやる人」だから。この事件の構図として「義剛がやりたい放題やってやがる」以外の選択肢はないのだ。偏見よくない。そして残念なことに、この直感が100%正しいことは後に証明される。
次の展開として、花畑牧場側は義剛の発言を断片的に切り取り発信したとして3名を名誉棄損だと告訴した。簡単に言えば「悪いのはベトナム人!イメージ下げられて迷惑してんのはこっち!」というわけだ。商品と同時にイメージを売っているブランドが打つ手としては最悪に近いなあ、とは思いつつも、こういう下品な戦略を何の恥ずかしげもなく打てるのが義剛。こういうところのブレなさは本当に凄い。凄いけど尊敬は絶対にしない。どうすればここまで立派に下品になれるのか。
自分はこの時点でこう思っていた。
ひとつの訴訟に対して別方向からの訴訟をぶつけたりすることで、全部ひっくるめて和解に持ち込むというのは法廷での常套手段。今思えば「ベトナム人側を訴えたのは単なる腹立ち紛れ」だったような気がしないでもないが、こうやって泥沼戦法に持ち込むことで、ブランドイメージを損なってでも金は支払わないという、確固たる意志が見て取れる。素人に見て取らされるなよそんなもん。
しかし翌日事態は一変する。
花畑牧場(北海道中札内村)のベトナム人労働者が寮の水道光熱費値上げに抗議した事実上のストライキを理由に雇い止めされたと訴えている問題で、入管当局にベトナム人側と交わした書類とは異なる契約期間の文書が提出されていたことが15日、複数の関係者への取材で分かった。入管は虚偽の届け出に当たる可能性があるとして、調査を始めた。
関係者によると、昨年3月15日付のベトナム人労働者との「労働条件通知書」では、契約期間が「2022年3月15日まで」となっている一方、昨年10月20日付で入管に提出された「雇用条件書」では期間が「22年10月31日まで」となっていた。(共同通信)
簡単に言えば、「当事者同時の契約云々の前に、国にウソついてるよね義剛?やってるよね?」である。相手が立場の弱いベトナム人労働者にはえらく強気だった義剛。しかし、知ってか知らずか国を敵に回すことになった義剛。この件に関し、何ら後ろ暗いところがなければ「入管に提出した書類に不備はあったけれど、それはそれ、これはこれ。こっちはストライキに関しては断固戦うつもりだし、名誉棄損もはっきりと争う」とすればよかったはずだ。
しかし義剛が、花畑牧場側が下した結論はこうである。
速攻で白旗。安直に安直を重ねる安直かつダサい対処は、義剛が義剛たる所以の集大成であるともいえる。花畑牧場の在り方はもはや義剛そのものとなった。自分がローソンの社長ならすぐさま契約切る。
こうやって速攻で白旗上げたことによって、「ちゃんと自分たちの非を認めて謝ったことは評価できる」とか訳知り顔で言うバカが出てくることを自分は危惧している。はっきり言っておくが、義剛が謝罪したのは「ベトナム人」にでは絶対にない。言うまでもなく、これ以上問題を長引かせることによって、もっとヤバいことになりそうだから早めに「国」に謝っておきます、である。ベトナム人たちに本当に悪いと思っていたらこの速攻での変わり身はないし、そもそも最初から相応の対処が出来たのだ。これ以上粘ると、ベトナム人に支払うよりももっと大きな損をしそうだから、ここらへんで損切りだ、くらいの感覚だろう。経営者判断としては正しい。ただ自分に与える印象としては、一点の曇りもない「嫌い」の二文字だ。
ここ数年やっぱりまた大幅に調子に乗っていた義剛であるが、これでようやくまた反省モードに突入するのであろう。自分はどちらかといえば「謙虚に反省してます」という態度の中に横溢する傲慢さにこそ義剛を感じるタイプなので、分かりやすく傲慢な義剛はつまらなかったのだ。これでいいのである。そしてあくまで「反省モード」であり、反省することはない。これまで起きた事にひとつでも反省をしていたら、こんな地平に到達していない。孤高の存在である。悪い意味で。
「外国人労働者に対する不適切な対応を真摯に反省し、再発防止に努める」(週刊文春の記事より)
とあるが、ウーソーだーねー(ゲスニックマガジン西条)。せいぜい「もうベトナム人労働者は使わないから、再発のしようがない」が関の山だろう。本当に誰が働くようになるんだ花畑牧場。
私事ではありますが、もう最近ずーっと今の仕事辞めたいと思ってるんです。けど「いっそのこと花畑牧場で働こうかな」とは絶対に思わせない強さ。仕事は辞めてもウォッチは辞めない。そう思わせてくれた2022春。