マツコが語る性なんて

前回の「探検バクモン」内で予告されていたEテレ「ハートネットTV」において、「多様な“性”と生きている」と題された6月期。何やらマツコデラックスが「マツコ・デラックス “生きる”を語る」というテーマで元NHKアナウンサーの加賀美幸子さんを相手に「性」を語るらしいので、録画して見てみた。


すげえ上品な放送でした。ええ。


もちろん「NHK」というフィルターがかかればこんなもんか、というのは想像に難くなく、また加賀美アナというNHKの良心を体現化したような方が相手では下品になりようがないのです。だから至極真っ当に、そして丁寧に語るマツコが印象的でした。マツコデラックスはどちらかといえば「攻撃的」なイメージが強いのだけど、非常に場の空気を察するのが上手な人で、引くこともできるし、相手を立てながら話を進めることもできる。「徹子の部屋」のマツコもこんな感じだったなあと。


HPにはマツコが「性」と「生」を語る、なんて書いてあって、実際その通りだった。「多様な性」がテーマの割には、マツコの「性」に関する話はあまり飛び出さず、どちらかといえば「性」に対する両親への負い目だったり、そのことから派生した「死生観」なんかを語る内容だった。まあ「性」を考えることがそのまま「生」を考えることにもなっている、というメッセージだと考えればいいのだろう。


ただやっぱり物足りなかったなあ、と。


NHKの30分番組、しかも超お固い感じの番組でこれ以上を望むのは到底無理な話。けど「マツコが性を語る」というテーマで持ってこられた日には、やはりこれ以上の何かを1%でも期待していた自分が心の片隅にいたわけですね。原因は分かっている。かつて、マツコはラジオ「加藤浩次の吠え魂」において、まあこれは到底テレビでは放送出来ないであろう「性」の話をあけすけに話していたことがあった。いまから5年前、2008年末のことだ。マツコデラックスが徐々に世の中に認知されはじめてきた頃であり、まだまだこのようなきわどい放送が(キャラとして)許された頃の産物である。今ならたぶん無理だろう。その時の内容はこちらに詳しいです。今回これを書くにあたって、今一度当時の放送を聴き返してみたのだが、やっぱり酷い。NHKで神妙に性について語ってる場合じゃない面白さ。


自分が思うに「性」のことなんて、最終的には「性欲」の話になってくるのだから、いくらマジメに「性」を語ったところで「性欲」の話がないと、物足りないというか核心を避けているというか、そんな印象なんですよね。もちろんいきなり性欲ありきの話にはならないし、「いやらしさ」を排除したうえでの議論はしなければいけない。けど、最終的に誰かがそこに切り込まなくてはダメだとは漠然と考えたりします。もしかしたらマツコがそこに切り込んでくるのか、というありもしない妄想をしていただけだった。