敵塩

マツコデラックスが国会議員に絡まれている。

 

さきの参院選議席を獲得したNHKから国民を守る党、略称N国の党首立花孝志に対してマツコが自身のレギュラー番組である「5時に夢中!」で

「この人たちがこれだけの目的のために国政に出られたら、迷惑だしこれから何をしてくれるか判断しないと。今のままじゃ、ただ気持ち悪い人たち」「ちょっと宗教的な感じもあると思う」「(票数には)冷やかしもあって、ふざけて入れた人も相当数いるんだろうなと思う」

 (引用「Abema Times」N国・立花党首のマツコ・デラックス突撃に弁護士「喧嘩の仕方が上手い」 | AbemaTIMES

 

と発言したことに立花氏が激怒。「5時に夢中!」の放送局であるTOKYO MXのスタジオ前で抗議。今後マツコの出演する月曜には毎週来るという。

 

 

一連の騒動、自分はどう思ったかを情報を整理しながら書いてみたい。

 

まず、マツコの発言は案外保守的である。

 

言いたいことを歯に衣着せずズバズバ言うマツコなので、古い価値観に対しても否定的なのかと思いきや、年を取ったこともあるのか保守的な発言が多い。N国に対しても「NHKなんてやっちまえばいいのよ」とか言いそうなもんだけど、言わない。それは立花氏が「NHKの犬」と揶揄したように、NHKの仕事もしている立場であるわけで、積極的な否定ができないという事情はあるのかもしれない。

 

しかし単にマツコは「NHKを壊す必要性を感じない」と思っているのだろう。余計なことやってくれるな、と単に思っているんじゃないだろうか。だからこそ余計に「それだけのため」に国政に出て、しかも議席を獲得したN国および立花氏に対して嫌悪感をあらわにしたのは、なんら不思議ではない。だから世論におもねって「そういうのもアリよね」と言うより、こうやって「気持ち悪い」と発言しているほうがしっかりマツコらしいと自分は思う。

 

一方で立花氏からすれば「それのみ」(ワンイシュー、言ってしまえば一点突破)で当選した人。もちろん個人的に(投票してくれた有権者をバカにしている、なんてことも言ってはいたが)頭に来たこともあるんだろうし、何よりマツコにかみつけばまた話題になり、雪だるま式に話が大きくなっていくことを期待しているのだろう。何も考えなしに抗議をしているわけじゃあない。そこまでバカならさすがにここまで来ていないとは思う。

 

自分は「NHKの在り方はおかしいし見直す時期だろうなあとは思うけども、かといってそれのみで国会議員になられてもなあ…」とは思う。ただし議員になる目的は人それぞれで構わないし、国会議員になることそのものを否定するわけではない。冷やかしで入った票だとしてもそれは「そういうことにしか政治の意義を見い出していない」という民意と考えることもできる。だからマツコの発言が全て正しいとも思わないし、かといってN国を応援する気にもあまりなれないかなあ、とも思う。

 

その上で今回の立花氏の行動は「気持ちわりいなあ」と思った。

 

立花氏のこの行動はおそらく「今までやってきた方法」なんだろう。話題になるためにはどうすればいいか、を考えていけば、この行動はある程度「理にかなった」作戦であると思う。

 

しかしそれが「国会議員の振る舞い」となると、それはちょっと気持ち悪い。いちいち政治信条に合わない発言をした人に対してこうやって抗議活動をするのか。「するな」というルールはないのだろうから、しても構わないと思いますよ。しかしその代わりとして自分は「気持ち悪い」のレッテルをやっぱり張ってしまうんだろう。それも自由だ。

 

「気持ち悪い」と批判されていて、それに対する抗議の仕方が気持ち悪かったら、それはもう「気持ち悪い」というマツコの主張を補強しているに過ぎない。マツコが放った「気持ち悪い」と自分が感じた「気持ち悪い」の種類は違う。しかしそれらをひっくるめた「気持ち悪い」が全体のイメージとしてつくことがマイナスじゃないのか、とは考えないのだろう。N国側は抗議しているようで、「自分たちは気持ち悪いですよー、あっちの言い分は正しいですよー」と喧伝しているようなもの。敵に塩を贈りまくりである。争う前にもう結論は出ている。

 

立花党首は「民意」っていうけど、N国に投票した民意が全てじゃあないからねえ。マツコのような「気持ち悪い」と思っている民意が、もしかしたら投票した民意の10倍くらい大きかった場合、それは「民意」として自分たちに襲い掛かってくるんじゃないのだろうか。まあそのときは上杉隆丸山穂高がどうにかするんだろう。どうにもならんな。