実効支配

日テレで放送された「ノンレムの窓」がとても「世にも奇妙な物語」でしたね。おそらく見た人が全員思っている感想でしょうけども。

 

本当は別のこと書くつもりだったのですが(「夜もヒッパレ」の話ですが、そのうち書きます)、ちょっとあまりに「世にも」しすぎていたので書かざるを得ないですね。

 

世にも奇妙な物語」はフジテレビで放送されている人気オムニバスドラマシリーズ。自分のブログのタグに「世にも」というものが実はあるのですが、物心ついたときから見ている自分のテレビ視聴の核になっている番組でもある。ちょっと不思議だったりホラーだったり、その手のオムニバスドラマはもはや「世にも」の専売特許でしかない。

 

この「世にも」が長年守り続けている「不思議オムニバスドラマ領域」は一度、日テレの「週刊ストーリーランド」において侵略された過去がある。しかしこちらはあくまで「バラエティ」の枠組みであり「アニメ」であったので、一応の棲み分けがされていたし、どちらかといえばプロ野球中継で潰れなかったときの番組でもあった(今では信じられない話だろうが、当時はまだプロ野球中継がゴールデンの番組を平気でつぶす時代でした)ので、さほど気にもされていなかった。いや自分は気にしていなかったというのが正しいか。

 

んでまあ今回の「ノンレムの窓」だ。ストーリーテラー的な立場にバカリズムがいる。タモリと大きく違うのは、バカリズム本人が脚本も手掛けているところだ。いうなれば「バカリズム不思議ワールド」的な感じだろうか。しかし誰が何と言おうとこれは「世にも」の枠組みだ。バカリズムも「世にも」と無縁ではない。自分のコントを原作にしたネタ「来世不動産」がかつて世にもでドラマ化されている。バカリズム本人も「これは世にもだよなあ」と思いながらやっているんだとは思う。

 

あまりに長いこと「世にも」がここらへんの領域を独占していたので、他がマネしようと思ってもなかなか難しかった。しかしバカリズムという「脚本自分で出来ちゃうし出演も出来る人」が自ら書いてやるならば、それはもう「バカリズムでしか出来ないもの」であり、「世にも」でありながら「世にも」じゃあない、という強弁がまかり通ってしまうところに日テレの狡さを感じる。

 

でも放送された3本「私達の恋」は「自分も」系であり、「解約ゲーム」は理不尽コメディ系であり、「カスタマイズ」もコメディ系ではあるが、オチにバカリズムイズムを感じる部分もある。ただやっぱり大枠でいけば「世にも」の掌の中にはいるよなあ、と感じる。これは仕方ない。

 

これ系のドラマは全て「世にも」じゃなければいけないという理由もない。だから日テレがバカリズムを擁してこういうことをやるのは別に問題はないんだけど、日テレの「なし崩しにここの領域を実効支配してやろう」くらいの野望が見え隠れしている気がして、「世にも」原理主義者の自分からすれば若干ザワザワはしますわな。

 

どのくらいのザワザワ感かといえば、別にもう見る手段なんていくらでもあるからいいといえばいいんですけど、地元テレ朝系列で「水曜どうでしょう」でもお馴染みHTBが「テレビ千鳥」の放送をやめたことと同じくらいですかね。もうここらへんの気持ちも誰にも理解されないような気もするんですが、オジサンなので言い続けるようにしたいと思います。*1

 

日テレは時に「なんだそれ」と思うことやるので油断できないですよね。つい最近堺雅人のドラマでそう思ったのは気のせいだったかと思ったのですが、連続でそういうことやってきたのでやっぱり気のせいじゃないなと思い直しました。日テレは堺雅人でスケベ心出しすぎなんだよなあ。

 

 

*1:追記:HTBでも遅れて放送が始まりました

反省なんかしない

なぜ義剛はどこまでも義剛で在り続けるのか。一連の花畑牧場ストライキ事件を簡単におさらいしてみよう。

 

花畑牧場が、自身の会社で雇っていたベトナム人40名が寮の光熱費値上げに抗議しストライキを決行したことに対し雇い止めを行い、それに反発したベトナム人側がさらに労組に駆け込み徹底抗戦する構えを見せた。

 

田中さんは電話取材に「今後は顧問弁護士が団体交渉を行う。示談するつもりはない」と話した。(共同通信

 

とあくまで戦う姿勢を見せていた。

 

これに関して自分は

 

と呟いた。自分は外国人労働者の問題に詳しいわけではなく、またそこに存在する難しい話に首を突っ込みたいわけでもない。これを読んでいる方や、そして義剛本人ももう忘れているかもしれないが、そもそも花畑牧場は「地域の雇用」とか「従業員は家族」とか散々言ってきた経緯がある。それなのに、いまや外国人労働者を使い捨てる様態でしか労働者がいないのか、そして地域から断絶されているのか、と切ない気持ちになった。

 

また、義剛が数年前からアジアにしょっちゅうちょっかいを出している、もとい進出しようとしていたことを知っていたので、そこの絡みもあって「どうせ技能実習とかいう名目で安い人件費で使ってやろうとか思ってたんだろ」と何の疑問もなく思ったわけです。

 

それら全部ひっくるめて、北海道の片田舎に大量のベトナム人といういびつさの味わいが深すぎる、と思ってのつぶやき。

 

断っておくが、こういう労働問題はどちらが100%悪いってことはないのだと思う。もちろんベトナム人労働者側の言い分があり、そして花畑牧場側の言い分もあるはずだ。ベトナム人が何の遠慮もなく光熱費をバカスカ使っていたのかもしれない。それにしても半年で倍はやりすぎだろうというのも分かる。両者の言い分をまとめたうえで、互いが現実的に歩み寄ることは全然出来たはずだ。

 

けど自分は義剛をウォッチしすぎているあまり、上記のような冷静な判断は一ミリもせずに「こんなもん義剛が悪いに決まってるよね」と秒速で思ったわけです。だって義剛は「そういうことやる人」だから。この事件の構図として「義剛がやりたい放題やってやがる」以外の選択肢はないのだ。偏見よくない。そして残念なことに、この直感が100%正しいことは後に証明される。

 

 

次の展開として、花畑牧場側は義剛の発言を断片的に切り取り発信したとして3名を名誉棄損だと告訴した。簡単に言えば「悪いのはベトナム人!イメージ下げられて迷惑してんのはこっち!」というわけだ。商品と同時にイメージを売っているブランドが打つ手としては最悪に近いなあ、とは思いつつも、こういう下品な戦略を何の恥ずかしげもなく打てるのが義剛。こういうところのブレなさは本当に凄い。凄いけど尊敬は絶対にしない。どうすればここまで立派に下品になれるのか。

 

自分はこの時点でこう思っていた。

 

ひとつの訴訟に対して別方向からの訴訟をぶつけたりすることで、全部ひっくるめて和解に持ち込むというのは法廷での常套手段。今思えば「ベトナム人側を訴えたのは単なる腹立ち紛れ」だったような気がしないでもないが、こうやって泥沼戦法に持ち込むことで、ブランドイメージを損なってでも金は支払わないという、確固たる意志が見て取れる。素人に見て取らされるなよそんなもん。

 

 

簡単に言えば、「当事者同時の契約云々の前に、国にウソついてるよね義剛?やってるよね?」である。相手が立場の弱いベトナム人労働者にはえらく強気だった義剛。しかし、知ってか知らずか国を敵に回すことになった義剛。この件に関し、何ら後ろ暗いところがなければ「入管に提出した書類に不備はあったけれど、それはそれ、これはこれ。こっちはストライキに関しては断固戦うつもりだし、名誉棄損もはっきりと争う」とすればよかったはずだ。

 

しかし義剛が、花畑牧場側が下した結論はこうである。

 

 

 

 

こうやって速攻で白旗上げたことによって、「ちゃんと自分たちの非を認めて謝ったことは評価できる」とか訳知り顔で言うバカが出てくることを自分は危惧している。はっきり言っておくが、義剛が謝罪したのは「ベトナム人」にでは絶対にない。言うまでもなく、これ以上問題を長引かせることによって、もっとヤバいことになりそうだから早めに「国」に謝っておきます、である。ベトナム人たちに本当に悪いと思っていたらこの速攻での変わり身はないし、そもそも最初から相応の対処が出来たのだ。これ以上粘ると、ベトナム人に支払うよりももっと大きな損をしそうだから、ここらへんで損切りだ、くらいの感覚だろう。経営者判断としては正しい。ただ自分に与える印象としては、一点の曇りもない「嫌い」の二文字だ。

 

 

ここ数年やっぱりまた大幅に調子に乗っていた義剛であるが、これでようやくまた反省モードに突入するのであろう。自分はどちらかといえば「謙虚に反省してます」という態度の中に横溢する傲慢さにこそ義剛を感じるタイプなので、分かりやすく傲慢な義剛はつまらなかったのだ。これでいいのである。そしてあくまで「反省モード」であり、反省することはない。これまで起きた事にひとつでも反省をしていたら、こんな地平に到達していない。孤高の存在である。悪い意味で。

 

外国人労働者に対する不適切な対応を真摯に反省し、再発防止に努める」(週刊文春の記事より)

 

とあるが、ウーソーだーねー(ゲスニックマガジン西条)。せいぜい「もうベトナム人労働者は使わないから、再発のしようがない」が関の山だろう。本当に誰が働くようになるんだ花畑牧場

 

私事ではありますが、もう最近ずーっと今の仕事辞めたいと思ってるんです。けど「いっそのこと花畑牧場で働こうかな」とは絶対に思わせない強さ。仕事は辞めてもウォッチは辞めない。そう思わせてくれた2022春。

 

あけましておめでとうございます

もう2月でまたオリンピックやってるんだってね。

 

気付いたら2022の2月になっていました。あんまり1月の記憶がありません。年末年始も仕事してましたし、1月も仕事してました。こんなに仕事していると自分が仕事大好き人間だと錯覚してしまいますが、全く仕事したくないです。仕事したくないしたくない言いながら仕事たくさんしてるんだから饅頭怖いと同じ現象ですね。本当に仕事はしたくないんですけども。わたしゃテレビが見たいのですよ。いや、見てるんですよテレビも。ずっと仕事してテレビ見て仕事してテレビ見てます。全部見てるわけじゃあありませんけども、自分の見始めた1月期のドラマがつまんなくて、ドラマ制作者が全員オミクロンで休養しているとしか思えないとか勝手に思ってます。大河朝ドラは面白いのにね。

 

もう「テレビがオワコン」とかいうのは現代人の共通認識なのかもしれませんが、そのくせアンジャッシュの渡部がテレビの地上波復帰とか言い出すとすげえ文句言うのな。舞台ならいいのか?ネットならいいのか?テレビがオワコンなら「オワコンで復帰するあたり渡部らしい」とか言ってあげるべきじゃないのかね。日テレのプロデューサーがabemaで文句垂れてましたけど、どこのテレビ局が最初に復帰させようとしたんでしたっけ?とか言ってはいけないんでしょうね。

 

ただまあテレビの勢いのなさと、自分の尿圧の勢いのなさがどっこいであることは認めなければいけない哀しい事実であります。もちろん自分の尿圧の勢いがバリバリだという可能性は否定しませんが、自分ももう40手前ですし(もうこんなもの足かけ20年やってると思うと自分でも虫酸が走ります)そこは推して知るべしなのです。テレビで話題になるのはいまや「あの番組も終了」という後ろ向きなものばかり。ワクワクする新番組の話はねえのか、と思ってしまいます。

 

北海道ではなぜかドラマ「ウォーターボーイズ」の再放送が始まったんですよね。山田孝之が主演のやつ。全裸監督になるまえに半裸で主演やってる。森山未來瑛太田中圭星野源も出てる。これだけ今もバリバリ活躍している男性陣に対してヒロインが宮地真緒ってのが今では笑えてしまうのですが(当時からすれば朝ドラヒロイン経験者なので、全然おかしくないのだけど)、なかなかどうして面白い。それは放送当時自分が夢中になって見ていたドラマである、ということもあるのかもしれないけど、やっぱり単純に作品として面白いってだけなんだと思う。今のドラマより全然凝ってないし、話も単純。けどその単純さにパワーがあった。役者の力も大きいのだろうけど。

 

今見ているドラマを20年後見たいと思うかどうか、それはどうなんだろう。20年後還暦だぞ自分。そんなこと言ってる場合じゃない気がする。20年後もこんなこと書いているのか。吐きそう。仕事やめたい。誰か仕事ください。

 

 

逆行

「M-1」で死闘が繰り広げられる直前、「笑点」では林家三平が年内での番組卒業を発表。

 

先週「重大発表がある」というお決まりの常套句が持ち出され、「どうせ大した話じゃあないんだろう」と思っていたら三平卒業である。「卒業」という言葉を使ってはいるが、なかなかどうして「戦力外通告」という言葉が頭を過る。

 

とまあ訳知り顔で書いてはいるが、ここ数年はとんと「笑点」を見る機会も減っていた。もちろんこの重大発表のフリもそして発表そのものも見ていない。ニュースとして流れてきたものを見て「ああ、三平やめちゃうんだ」と思っただけだ。だから三平が現時点で本当に戦力外だったのか、はたまた実はちゃんと機能していたのかを自分で判断できる材料はない。

 

これだけ長く、しかもほぼ同じようなメンバーで続いている笑点に新規参入するのはどんな落語家だってハードルが高い。今司会をしている春風亭昇太だって新メンバーに加わった時はかなり苦戦していて、「いい歳こいて独身」(当時)キャラが定着するまでは時間がかかった。だから三平もなんだかんだで落ち着くのかと思ったら、どうもそうじゃないらしい。

 

三平が自分の評価の低さにあえいでいたのは容易に想像がつく。伊集院光が「終身名誉いっ平」を与えているように、昭和の爆笑王であり父の名前である林家三平を襲名するのはとてもじゃないが名前負け。同じ笑点メンバーの林家でも木久蔵を襲名したきくおとはレベルが違うのだ。どこまでいっても名前負け。最初は上手いこと言うキャラで推し進めていたが(今もそうだったのかな)、どうにもこうにも上滑り。ただまあいっ平の落語家人生が総じてそんな感じ(めちゃくちゃ失礼)なので、それはそれで面白いんじゃないかと自分は思っていた。まあ見ていないからこそ言えることではあるけど。

 

この卒業を番組から打診されたのか、それともいっ平が自ら申し出たのかは分からない*1。しかしひとつだけ言えることがあるならば「一番若いメンバー辞めさせてどうするんだ」ではある。

 

「ガッテン」「生活笑百科」という長寿番組の終了が次々と発表されている。番組そのものの寿命をまっとうしたという言い方も出来るが、それと同時に「視聴者層の若返りを狙っている」という目的も少なからずある。「噂の東京マガジン」が地上波から追い出されたのは記憶に新しい。ジリ貧のテレビがこれからのことを考えると「正しい動き」ではあるんだけど、かといって今の体勢で若者をテレビに繋ぎとめておくことが出来るかどうか、を考えたときに「長寿番組を改めることが若者に対するアピールじゃあないだろう」とも思う。でもそういう流れになってるんだよななぜか。

 

日テレが「笑点」をどこまで続けて行こうと思っているのかは分からない。ただ昇太を司会に据えたのだから、まだしばらくは続けるつもりではあるだろう。にも関わらず、いつ倒れてもおかしくないお歴々を差し置いて、「つまんないからいっ平退場!」はさすがに「え?笑点の平均年齢を下げるつもりがないの?」となる。昨今の流れから行けば「ギャラも高いし高齢化も激しいので、木久扇も小遊三も好楽も圓楽も全員卒業!」だろうよ。ここだけ時空が歪んでいる感すらある。

 

いっ平がいなくなるのなら、いっそのこととびきり若くて場違いの人間を連れてきてほしいな。もはや落語家じゃなくてもいい。みちょぱ連れてこいみちょぱ

 

 

 

*1:一応三平からの申し出という発表はされているし、引き留めがあったことも本人が語っている

ライフイズビューティフル

M-1グランプリ2021の感想を敗者復活から手短に。

 

敗者復活戦

キュウ

こんなにトップバッターに向かない漫才があるか。

 

アインシュタイン

もう見た目に頼らない漫才でもいいのかも。

 

ダイタク

昨年に引き続き日本で二番目に面白い双子(1位は引き続きおすピー)。

 

見取り図

昨年の自分たちの漫才と今年の忙しさというハードル。いや面白かったんだけど。

 

ハライチ

制限時間のブザーにキレる澤部にはさすがに笑うけど、それをノーペナルティ(かどうかは分からないけど、少なくとも見ていたぶんには説明されず)で敗者復活を通してしまうと、やったもん勝ちになってしまうわな。

 

マユリカ

近年稀に見る大ビンタ。

 

ヨネダ2000

THEWで決勝進んでたらこのネタやったのかなあ。個人的敗者復活2位。

 

ヘンダーソン

途中から少しクドかったかなあ。ハマれば強いけど。

 

アルコ&ピース

ひいきが強すぎてマトモな判断が出来ないけど、少なくとも勝ち残りではなかった。夢をありがとう。

 

カベポスター

去年よりも分かりやすく分かりにくくて。個人的3位。

 

ニューヨーク

持ち味が出てないよ。

 

男性ブランコ

「全治癒」というワードの強さ。勢いある。

 

東京ホテイソン

年々力強くなっていくなあ。

 

金属バット

なぜ勝てなかったのか分からないくらい個人的には圧勝。もっといえ坊主に。

 

からし蓮根

決め手があればなあ。

 

さや香

清々しいまでの力技。

 

 

決勝

モグライダー

さそり座の女テンダラーの必殺仕事人を彷彿とさせるイントロとボケのリフレイン。結局さそり座の女にたどり着かないんだろうな、と思いきやちゃんとたどり着く優しさ(と感じたのは自分だけか)。トップバッターとしてこれだけ盛り上がるのは素晴らしい!

 

ランジャタイ

猫。自分がこの1年でランジャタイに慣れてしまったのか、思ったほどぶっ飛んでると感じなかった時点でランジャタイの勝ちなのかなあ。点数がつかないのは「面白くない」とか「漫才じゃない」ではなくて、単に「点数として評価しにくい」ですよね。審査員泣かせ。富澤のコメントはただの照れ隠し。

 

ゆにばーす

ディベート。男女コンビなら1万回は聞かれるであろう「恋愛感情は?」という質問を最高の形でネタに。審査員も触れていたがはらちゃんのスキルが上がっていて、単純に漫才の面白さがエグい。

 

ハライチ

やりたいこと。敗者復活のやつをそのまま持ってくるかと思いきや、全然別でかつ「たぶんこれがやりたかったんだろうなあ」というネタをちゃんとぶん投げてくる強さ。「出るからには勝つ」という意思を感じました。

 

真空ジェシカ

一日市長。単発のボケを大量に放り込んでくる旧M1スタイル。ただしどのボケも個人的にあまり見た事のないタイプであり、巧いこと裏切られる。おばあちゃんのハンドサインは吹き出した。これで尻上がりの構造になったら無敵じゃないのか。

 

オズワルド

友達。いやあ、これは圧巻。最初から最後まで非の打ちどころがない構成で、今年の大本命だと言われるのも納得の出来。頭一つ抜けた1位もなんら不思議なところがない。畠中の気持ち悪い、ともすれば荒唐無稽なボケをちゃんと漫才の形にしている伊藤のツッコミ。来年は自分たちとの闘いじゃないか。

 

ロングコートダディ

生まれ変わる。生まれ変わる先が「肉うどん」というパワーワードと、そしてボケが来るなと分かってはいるけど、見ていてじわじわ欲してしまう独特の感覚。爆発力には欠けるかもしれないけど、ずーっと見てられるやつ。4分は短い!

 

錦鯉

合コン。最初から最後までバカな50歳がボケ倒すという錦鯉にしか出来ない漫才。錦鯉を最初に見たときに感じた「尻すぼみ」がここまで見事に解消されるか、という感動。「ひざ」の二文字でこれだけ爆笑を生むM1出場者はいない(寄席にはいるだろうけど)。これまた納得の2位。

 

インディアンス

怖い動画。今までのインディアンスは田渕の手数の多いボケが先行しすぎていた感があったけども、そこにしっかりきむのツッコミがかみ合ってくることによってひとつひとつのパンチが重くなった印象。一発の重いパンチを食らわす錦鯉に対して、ひとつひとつの重さでは負けるけど手数の多いインディアンス。これまた納得。

 

もも

欲しいもの。見た目とズレているというテンプレートが出来上がっているので、あとはもうここからもう一裏切りするかどうか、だよなあ。「ネタパレ」のショートで見るものと4分のものの差があまりなく、ここからうねるような展開があればそれこそ「来年優勝顔」になるのかも。「EXILEオーディションで1次審査で落ちる顔」のときに上戸彩のカメラに切り替えたのはスイッチャ―のファインプレー。相変わらず上戸彩愛に溢れているM1スタッフ。

 

 

最終決戦

インディアンス

売れたい。こっちのほうが従来のインディアンス感があって見やすかった。見やすかったけども、それは同時に決め手に欠けるということでもある。

 

錦鯉

サル捕獲。「(サルが)森に逃げた」「もうじゃあいいじゃねえかよ」が最高。そしてオチの「ライフイズビューティフル」。ちゃんと前半で介護のネタフリをしているところも進化よ進化。

 

オズワルド

1本目と同じく奇妙な畠中なのだけど、1本目の出来が良すぎて「さっきと比べるとそこまで爆発しない」という難しい状態に。前2組の作った空気を戻しきることが出来なかったのだなあ。

 

 

錦鯉まで終わった時点で「これは1本目と同じレベルのネタが出てきたらオズワルドだなあ」と思ったのだけど、オズワルドがそれほどハネなかったことによって錦鯉に勝利の女神がほほ笑んだ。どの組も決定打がなく、本当に紙一重の戦いだったように思うのだけど、審査員が最後に錦鯉に入れたくなる「何か」があったんじゃないかと思う。もう本当にそれくらいの差。

 

優勝が決まったときにオジサン二人が抱き合い、そして長谷川が泣く。それを見てサンドウィッチマン富澤もナイツ塙も泣く。オジサンがオジサンを見て泣き、またそれを見て自分(オジサン)も泣くというオジサンの涙の連鎖。でも最後にそれくらい熱くこみ上げるものがあったということなのだ。

 

錦鯉の最終決戦のオチの一言が「ライフイズビューティフル」だったが、紆余曲折を経てM1チャンピオンという栄光をつかみ取ったこの二人に相応しすぎる。M1終了後の「テレビ千鳥」における千鳥とアルピーの佇まいにも同じく「ライフイズビューティフル」と叫んでおきたい。ここ2年、暗い話題の多かった世界を反映してなのか、M1の決勝に残った漫才はどれもこれも素敵なバカばかり。やっぱりみんな笑いたいんだと思います。自分含めて。

 

来年はもっとバカバカしく楽しい年になるといいですね。

 

 

奇跡じゃないか

「THH W」が面白かったので久々に更新してみよう。

 

Aブロック

・ヨネダ2000

めっちゃボケそうな愛さんがずっとドスコイ言ってる。クセが強いけど構成がしっかりしていて、大爆笑はないけど終始ずっとうっすら笑えるやつ。

 

・紅しょうが

安定の関西の笑い。なかなか優勝できないけど、腐らずにやってほしいよなあ。絶対に報われる時がくる。

 

・茶々

この手のタイプのネタは面白いけど勝ちきれないんだよなあ。でもこの後いろんな需要がありそうで。

 

TEAM BANANA

ライブの中盤に出てきて安心するタイプ。

 

・オダウエダ

昨年の頭のおかしさをブラッシュアップしてもっと頭おかしいとかどうかしてる。

 

勝ち残りがオダウエダ。

 

Bブロック

・天才ピアニスト

設定が巧みよね。どうしても上沼恵美子のモノマネの人って印象なんだけど、それをいい意味で覆す普通に笑えるコント。

 

・女ガールズ

ちょっと相手が悪かった。充分面白い。

 

・ヒコロヒー

0票の出来じゃあないけど、この大会の意義において、どちらかといえば天才ピアニストという審査員の判断はごくまっとう。しかしヒコロヒーは今年MVP級の売れ方であり、僅差なら負ける(勝たせなくてよいかなと思わせる)というのは名誉なことだと思ってほしい。

 

・スパイク

とりあえずは昨年のぶんの借りは返したわけで、来年が勝負よ。

 

・Aマッソ

なすなかにしを放り込んだことで勝負アリ。

 

昨年の4対3の悪夢を振り払い、今度は4対3でAマッソの勝ち。アンガールズ田中の投票が今年はAマッソだったことに興奮する。

 

決勝

・Aマッソ

去年披露したプロジェクションマッピング漫才の進化版。完全に温存してたし「獲りにきた」完成度。どれもこれもばっちり面白く、これを見た時点では「ああ、遂に勝ったかな」と思った。マジで。

 

・天才ピアニスト

買い物から献立を当てるレジのおばさん、というだけなのになぜこんなに面白いのか。力あるなあと思ったよ。

 

・オダウエダ

カニのストーカー。何度も言うがどうかしてる。どうかしてるんだよ。面白いんだもん。

 

 

見終わった時点で「これはAマッソか天才ピアニストか、さあどっちなんだろう」と思っていた。オダウエダは面白かったけど、さすがにこれで勝つネタじゃあないよなあと思っていた。けど「これでオダウエダ優勝したらTHE W最高すぎるな」と思っていた。んで結果発表。Aマッソと天才ピアニストに票が集まりつつも、後半追い上げるオダウエダ。そして最終的にAマッソ2票天才ピアニスト2票、そしてオダウエダ3票で、まさかの優勝。自分はこの瞬間にガッツポーズしてしまった。

 

こんなことがあるから、賞レースって最高だよね!

 

普通の感覚でいけば、Aマッソか天才ピアニストなんだろう。けどここでオダウエダがエアポケットに入ったがごとく3票入って優勝してしまう。審査の妙だ。審査員3人がついうっかり入れてしまいたくなる魅力がオダウエダにあったんだもん。これはしゃあない。視聴者が納得しようがしまいが、これは結果だ。オダウエダに勝利の女神がほほ笑んだのだ。実力的にはAマッソと天才ピアニストのほうが上だろう。けど賞レースは実力があるから勝つとは限らないのだ。何かのイタズラでこういうことが起こり得る。こんな奇跡的な瞬間を目の当たりにしたことに興奮しないことがあるか。文句を言ってる人間の気が知れない。奇跡を目の当たりにしたんだ。喜べよ!

 

今回勝てなかったとはいえ、Aマッソも天才ピアニストも、その実力を見せつけたのだ。もう既にAマッソは売れかけているが、これで本格的に売れるだろう。天才ピアニストも同じ。オダウエダは逆にこれだけで売れるかどうか分からないところも含めて本当に最高だ。去年も書いたけども、誰も損しない。それでいいじゃないか。

 

来週はM-1だ。アルピーが敗者復活から優勝という奇跡を目の当たりにすべく、自分は死んだ目で仕事をして、一切の情報を遮断したのちに夜通し敗者復活から全て見るという来週末の未来予想図。

 

それはともかく、オダウエダ、胸を張ってくれ!最高だ!

 

 

 

メンタルが心配

世にも奇妙な物語」21夏秋をまとめて。理由は先日まとめて見たから。

 

21夏

あと15秒で死ぬ

吉瀬美智子主演。何者かに心臓を打たれ死んでしまう主人公。その間際にいわゆる死神が登場し、自分の寿命があと15秒だと告げられる。残り15秒で誰が犯人だったか、そして犯人に対して一矢報いようと画策する。

 

初手はオーソドックス。人気声優梶裕貴がキャスティングされているが、まあ、特に個人的にはなし。話としてもまあ。

 

三途の川アウトレットパーク

加藤シゲアキ主演。思いを寄せる女性の手術台を捻出するために、金持ちそうな女性からひったくりを行い、その挙句死んでしまう主人公。気付くとそこはあの世の手前の三途の川であり、アウトレットパークまである。そこでは来世生まれ変わるときに有利となるオプションが、現世での行いによって売買されていた。特に望みのない主人公であったが、アウトレットパーク内で出会った少年、さらには手術に失敗し亡くなっていた思いを寄せる女性と出会い、自分が行ったことの因果を知る。そして人間に生まれ変われるはずだった主人公は、償いのためにある決断を下す。

 

一応感動枠になるのだろうか。マンガ原作ということもあるのか、詰めの甘い部分とバレバレな伏線がオジサンにはキツい。そもそもなんで「アウトレットパーク」なのか。ただの「大型ショッピングセンター」でよくないか、とか、なんで来世のパーツは買えるのに、来世に生まれ変わる選択肢だけはくじ引きなのよ、とか、伏線へのご都合がちょっとねえ。お子様向け。

 

デジャヴ

上白石萌歌主演。自宅に強盗が入った時の記憶が何度も繰り返す主人公。それは脳科学者である父親が、自宅に侵入した強盗の正体を暴くために記憶をリピートしていたかただった。何度も繰り返しリピートすることでやがてその犯人の正体を掴む、が。

 

やりたいことは分かるけど、ちゃんとオチてない気がした。上白石萌歌ちゃんの驚き顔と苦しみ顔が見たいがために制作された疑惑です。

 

成る

又吉直樹主演。AI棋士との対局に挑む主人公。AI棋士が打つ一手は、敵陣に入り駒が成ると、見たこともないものに変化する。その「成り」に苦しめられる主人公であるが、最終的にオーバーヒートしたAI棋士が倒れてきて巻き込まれてしまう。

 

短めのバカ枠。もっと長くバカバカしくやっても良かったのになあと思った。あと読み上げとして元棋士で現フジテレビアナウンサーの竹俣紅がクレジットされていて「はいはい、こういうとこだよなフジテレビ」とは思った。いまだにこのノリでやってんのかよ。

 

夏は全体的に小粒。

 

21秋

スキップ

赤楚衛二主演。大学生の主人公。イジメてくる先輩がいるサッカー部の合宿の前日、自殺を図った男が落とした鍵を拾う。その鍵は自宅の開かずの扉の鍵であり、その部屋に入り出ると、合宿は終わっていた。同じく大学の試験をその部屋でスキップする。すると片想いの女性とは付き合っており、身に覚えのない暴力事件まで起こっていた。そのとき自殺を図った男性が自分の兄であることに気づき、自分がスキップしている間は、今まで自分が兄と認識していた「何者か」が自分の代わりに生活していることに気づく。そして無理やり「何者か」に部屋に引きずり込まれ10年の歳月をスキップしていた主人公は、自分の人生が乗っ取られていることに気づき絶望する。

 

よく出来ているウェルメイド「世にも」。ただこれ系の「不気味なやつ」が最近坂口涼太郎に依存されすぎているような気がして、坂口涼太郎のメンタルが心配。

 

優等生

森七菜主演。全然勉強が出来ない主人公。一般常識レベルのテストでも全然答えることが出来なかったが、適当に書いたガチエモ神社に「テストで100点が取れるように」とお祈りをすると、自分の書いた答えが全て正解になる能力が備わる。世界に変化が起きないように勉強を始めたり、自分の家族の状態を元に戻そうと奮闘する。

 

バカ枠ですが、これも世にもっぽい。最後のオチ含めて。あと森七菜は今が完全に旬なので、事務所移籍うんぬんの理屈もあるんでしょうが、どんどん起用すべきだなあと。

 

ふっかつのじゅもん

桐谷健太主演。自分の息子がDQ2のふっかつのじゅもん(途中からゲーム再会をするのに必要なパスワード)を入れてゲームをはじめると、亡くなったはずの友人がそこに登場する。亡くなった友人はゲームをクリアしない限り同じように川に溺れて亡くなってしまうのだが、ゲームをクリアしたときに運命が変わる。運命が変わりかけたときに自分の息子が消えそうになっていたこともあり(友人が生きていたら主人公の妻と友人が結婚していて、未来が変わるかもしれない)不安だったが、息子も妻も消えることなく安堵の涙を流す主人公。しかし妻が手にしたDQ3を起動すると、冒険の書(バックアップデータ)は消えてしまい、二人の関係も消えてしまう。

 

DQの35周年記念タイアップだったようですが、それがどうした感ですね。それこそDQ2や3を実際にプレイしてきた立場ですから、最後のオチもなんとなく読めてしまったところも含めてファンサービスなのだろうか。あと野波麻帆のちょうどよさ。

 

 

金の卵

山口紗弥加主演。ある日スーパーで買った卵の中に金色に輝く卵を見つける主人公。その卵を手にしてから宝くじが当たるなど幸運が舞い込んでくる。しかしその卵を狙う人物が現れることで、主人公の生活が大きく変化してしまう。

 

ショート枠なのだけど、ショートにするあまり説明不足が否めない。話としての面白さも広がりもこれ以上でもこれ以下でもないので、大した説明もいらないのだけど、それにしてもなんだか「やっつけた感」がある一本でした。

 

連続で見た故だろうが、夏よりは出来がよかった。全体的に見れば普通。安定の面白さと言えばそれまでだが、突き抜けた何かを期待しちゃうのよねえ。また来年。