逆行

「M-1」で死闘が繰り広げられる直前、「笑点」では林家三平が年内での番組卒業を発表。

 

先週「重大発表がある」というお決まりの常套句が持ち出され、「どうせ大した話じゃあないんだろう」と思っていたら三平卒業である。「卒業」という言葉を使ってはいるが、なかなかどうして「戦力外通告」という言葉が頭を過る。

 

とまあ訳知り顔で書いてはいるが、ここ数年はとんと「笑点」を見る機会も減っていた。もちろんこの重大発表のフリもそして発表そのものも見ていない。ニュースとして流れてきたものを見て「ああ、三平やめちゃうんだ」と思っただけだ。だから三平が現時点で本当に戦力外だったのか、はたまた実はちゃんと機能していたのかを自分で判断できる材料はない。

 

これだけ長く、しかもほぼ同じようなメンバーで続いている笑点に新規参入するのはどんな落語家だってハードルが高い。今司会をしている春風亭昇太だって新メンバーに加わった時はかなり苦戦していて、「いい歳こいて独身」(当時)キャラが定着するまでは時間がかかった。だから三平もなんだかんだで落ち着くのかと思ったら、どうもそうじゃないらしい。

 

三平が自分の評価の低さにあえいでいたのは容易に想像がつく。伊集院光が「終身名誉いっ平」を与えているように、昭和の爆笑王であり父の名前である林家三平を襲名するのはとてもじゃないが名前負け。同じ笑点メンバーの林家でも木久蔵を襲名したきくおとはレベルが違うのだ。どこまでいっても名前負け。最初は上手いこと言うキャラで推し進めていたが(今もそうだったのかな)、どうにもこうにも上滑り。ただまあいっ平の落語家人生が総じてそんな感じ(めちゃくちゃ失礼)なので、それはそれで面白いんじゃないかと自分は思っていた。まあ見ていないからこそ言えることではあるけど。

 

この卒業を番組から打診されたのか、それともいっ平が自ら申し出たのかは分からない*1。しかしひとつだけ言えることがあるならば「一番若いメンバー辞めさせてどうするんだ」ではある。

 

「ガッテン」「生活笑百科」という長寿番組の終了が次々と発表されている。番組そのものの寿命をまっとうしたという言い方も出来るが、それと同時に「視聴者層の若返りを狙っている」という目的も少なからずある。「噂の東京マガジン」が地上波から追い出されたのは記憶に新しい。ジリ貧のテレビがこれからのことを考えると「正しい動き」ではあるんだけど、かといって今の体勢で若者をテレビに繋ぎとめておくことが出来るかどうか、を考えたときに「長寿番組を改めることが若者に対するアピールじゃあないだろう」とも思う。でもそういう流れになってるんだよななぜか。

 

日テレが「笑点」をどこまで続けて行こうと思っているのかは分からない。ただ昇太を司会に据えたのだから、まだしばらくは続けるつもりではあるだろう。にも関わらず、いつ倒れてもおかしくないお歴々を差し置いて、「つまんないからいっ平退場!」はさすがに「え?笑点の平均年齢を下げるつもりがないの?」となる。昨今の流れから行けば「ギャラも高いし高齢化も激しいので、木久扇も小遊三も好楽も圓楽も全員卒業!」だろうよ。ここだけ時空が歪んでいる感すらある。

 

いっ平がいなくなるのなら、いっそのこととびきり若くて場違いの人間を連れてきてほしいな。もはや落語家じゃなくてもいい。みちょぱ連れてこいみちょぱ

 

 

 

*1:一応三平からの申し出という発表はされているし、引き留めがあったことも本人が語っている