虚飾

まずはこの記事から。サンスポの記事である。

 お笑いコンビ、ダイノジのボケ担当、大谷ノブ彦(41)が、ニッポン放送の平日午後のワイド番組でメーンパーソナリティーを務めることが3日、分かった。31日にスタートする「大谷ノブ彦 キキマス!」(月〜木曜後1・0)で、お笑い芸人が同局の同時間帯ワイドでパーソナリティーを担当するのは今世紀初めて。まさに異例の大抜てきだ。

(中略)

新番組は、大谷が時に激しく、時に緩やかなトークで、いま話題になっている事柄の“本質”に迫る3時間の生放送。同局によると、お笑い芸人がラジオの“ゴールデンタイム”ともいわれる平日午後帯にパーソナリティーを務めるのは今世紀初という。

(後略)

要はサンスポ、つまりフジサンケイグループであるニッポン放送の宣伝記事でしかないわけで、「そんなこと記事にするな」と言いたいわけではない。それより気になるのがこの一文である。


「お笑い芸人が同局の同時間帯ワイドでパーソナリティーを担当するのは今世紀初めて」
「お笑い芸人がラジオの“ゴールデンタイム”ともいわれる平日午後帯にパーソナリティーを務めるのは今世紀初という」


よっぽど強調したいのか、二度も文中に登場している「今世紀初」という言葉。これだけ聞くと「今までの歴史を覆すチャレンジだし、よっぽどダイノジ大谷に期待しているんだな」的な印象を与える。実際大谷のANNは好評のようだし*1言ってることに間違いはない。


しかし自分のような物事を斜めからしか見ないような人間には、この文章の胡散臭い部分がぷんぷんにおってくるのである。ゲロの臭いです。


みなさんもお気づきであるとは思うが、「今世紀初」という言葉づかい。これが非常に臭いますよね。換言すれば「ここ14年はそうじゃなかった」というだけ。この言い回しだけでも相当に誤魔化している感が強い。「史上初」ではないのだ。てことは前にやっているわけです。じゃあいつ同局の平日午後の帯のパーソナリティをお笑い芸人が務めていたか当然調べますよね。


すると答えは出た。「6年前」である。実は「今世紀初」ですらない。今放送している「上柳昌彦 ごごばん!」の前番組である「テリーとたい平のってけラジオ」では、そのタイトル通り、笑点でもおなじみの落語家林家たい平がパーソナリティを務めている。どこが今世紀初だというのか。


もちろん解釈の問題はある。もともとテリーのこの番組のシリーズのアシスタントパーソナリティだったたい平が、パーソナリティに「昇格」したという事情を鑑みて「林家たい平はメインパーソナリティじゃないじゃん」という言い方が出来なくもない。ただ記事では別に「メイン」パーソナリティとは一言も言っていない。あるいは「落語家」をお笑い芸人として認めていないということなのか。それはそれで落語家差別なのか、それともダイノジ大谷を差別しているのかは分からないが、「林家たい平が6年前にニッポン放送の午後帯でパーソナリティを務めていた」のは紛れもない事実である。


もっともこの解釈に関してはニッポン放送が「お笑い芸人のパーソナリティ」をどう捉えているのか、という話になるので、「今世紀初」の真偽に関しては強く責めないでおきたい。ただ、「今世紀初」というクソみてえな言い回ししか出来ないことで、「なんだかよく分からないけど凄い」んだってことを表現しようとしているならば、それ以上に「こんなクソみてえな宣伝しか出来ないのはどうなんだ」という虚飾感のほうが勝ってしまい、結果的に評判を下げているということになぜ気づかないのか。聴いたこともないのに「ダイノジ大谷ってなんか過大評価されてんじゃないの?」という疑念すら湧いてくる。大谷ちっとも悪くないのに。


ラジオとは言葉が、表現力が勝負のメディアである。それでいてこんな表現しか出来ずに宣伝とは笑わせる。まあ自分はこの時間帯ラジオ聴くなら地元HBCの「カーナビラジオ午後一番!」聴くからいいんだけどね。

*1:自分は完全なる裏番組の南海キャンディーズ山里JUNKを聴いているので聴いたことないんですけど