ガチ中のガチ

今回の「水曜日のダウンタウン」は、まだ今年10か月を残していますが、今年最高のバラエティだったかもしれません。

 

最初の説は「家に人が山ほど隠れていても意外と気づかない」説。以前知らないオジサンが自宅にいるのがドッキリで一番怖い、という説の発展形。とにかく自宅に知らないオジサンが隠れまくっているという状態。もうこれだけでどうかしている。

 

実際ドッキリを仕掛けられたさらば青春の光森田は2人目を発見した時点でマネージャーにドッキリであるかを確認した。それに対して仕掛け人側のマネージャーは「知らない」と言うのだけども、一歩間違えば警察に通報されるレベル。芸人の「これはドッキリであるべきだ(あってほしい)」というセーフティーネットが辛うじて通報を思いとどまらせるわけだけど、これで通報されたらツーアウトなわけで(ナダルの時にワンアウト)、番組そのものが危なくなるのだから、番組ファンとしてはあまり攻めすぎてもいけないとは思ってしまう。

 

この説だけでもかなりお腹いっぱいではあったが、この後の説「芸人解散ドッキリ、師匠クラスのほうが切ない説」は、久々に「テレビを見て緊張する」という体験を与えてくれた。1組目「東京丸・京平」師匠は仲良しコンビで解散ドッキリも心温まるもの。これで済んでいれば本当によかったわけだが、2組目「おぼん・こぼん」が発表された瞬間に戦慄が走る。

 

お笑い好きの方はご存じかと思うのだけども、現在の「おぼん・こぼん」師匠の仲の悪さはガチ中のガチである。芸歴の長いコンビは普段そんなに仲がいいわけではない、というレベルではなく本当に仲が悪い。案の定ドッキリなど全然関係ないくらいにガチのケンカを始める両師匠。不仲の老人のガチのケンカをテレビで見るほど気まずいものはない。なぜ我々は大して知りもしない師匠クラスの芸人のケンカを見なければならないのか。そんな疑問を抱く暇もないくらいに緊迫する画面。見よ、これが地上波の最前線だ。

 

結局ガチの解散になってしまいそうなのでネタバラシで突入するナイツ。普段ラジオやテレビで見せる飄々と毒を吐く塙がただの「気を遣う副会長」になっていたことからも、これはもうガチ中のガチでしかないと何も言わなくても伝わる。VTR終了後に長々とフォローする出演者たち。いまやこんなにフォローされるVTRが放送されることなんてあるだろうか。自分はしばらく見た記憶がない。

 

しかし最終的に素晴らしいのは、これがお蔵入りではなくちゃんと放送されているところ。結局おぼん・こぼん両師匠が「放送してもよい」と言わなければ放送はないわけで、あんなにただのガチ喧嘩の放送を許可した両師匠はやはり芸人と言わざるを得ない。浅草芸人の懐の深さと、これをオブラートに包むことなくガチめで放送するスタッフに敬礼である。

 

これだけでももう年間ベスト10入り決定であるが、サインの説を挟んで、「ダウンタウンの二人、外国人にどっちがゴリラに似ているかを聞いたら浜田ではなく松本説」でオブザイヤー決定。思い込みの盲点を突く痛快すぎる提案で説立証。最初から最後までほぼ隙のない素晴らしい回。

 

「面白い」ってなんだろうと常々考える。他人のガチ喧嘩なんて普通に考えたら気分のいいものではないし、面白いなんてものでは全然ない。けど間違いなく面白かった。これがネットで放送されていたら面白かったんだろうか。正直自分ではよく分からない。ただテレビでこの番組が放送されていることに自分は感謝し、面白いと思うのである。ごちそうさまでした。