圧倒的華

「M-1グランプリ2015」をリアルタイムで見ました。


5年ぶりの復活となる大会。昨年までの「THE MANZAI」がただの特番になり、年末の漫才レースは事実上こちらに統合されたことに。「THE MANZAI」の筆頭スポンサーだった日清もちゃっかりこちらに鞍替えしているので、まあそれで良かったとしておこう。何がだ。


今までの大会と大きく違うのは、審査員がアンタッチャブルを除く歴代王者のネタ作りを担当している9人だということ。「M-1」が漫才の大会としてここまで権威になることが出来たのは1000万円という賞金もさながら「大物審査員に評価される」という側面が大きかった。だからこそ今回の復活に関して「誰が審査員をやるか」は大変な問題ではあったのだけども、歴代王者という非常に落としどころのいい結論に落ち着いたと思う。今までの審査員ほどではないにしろ、「歴代優勝者」という権威があり、なおかつ文句が出にくい。


今日は珍しく敗者復活から決勝までほぼリアルタイムで見ることが出来たので、敗者復活から順番に軽く感想を書いておきます。そのあとで全体を俯瞰した感想を述べてみたいと思います。

敗者復活

ニッポンの社長

ケツさんがスギちゃんに似てるなあ、という感想しか覚えてない。

アインシュタイン

ラジオDJ。こんなに面白くなかったかなあ?と思った。

モンスターエンジン

言いたい言葉。ちゃんと伏線回収するよねー。

チーモンチョウチュウ

白雪姫。「過去の」M-1対策のお手本みたいな漫才。面白いんだけど、今じゃない感。

学天即

カッコつける。安心して見られる漫才です。

相席スタート

ちょうどいいブス。力あるよねー。あんなにムカつくのに。

笑撃戦隊

ツッコミが先。「ツッコミ先行宣言」という単語が頭をよぎる。

かまいたち

バカにする。フラッシュモブだけで10分くらい見たいな。

POISON GIRL BAND

巨人軍。面白いけど設定がズルいかなあ。

セルライトスパ

取材。「三宅健の健に森田剛の剛で健剛」はいい自己紹介。

囲碁将棋

チアリーディング。とっても面白かったけど、視聴者投票の結果低すぎ。女性視聴者を敵に回した感がアリアリと。

とろサーモン

石焼イモ。「継続!」は笑ったなあ。てっきりオチは久保田が石焼イモ屋を実際に失敗した話かと思ったけど、違った。

ダイタク

双子で電車。双子にしかできない漫才だが、それが逆に「双子のコンビならやりそうな漫才」っていう感じもした。難しいねえ。

天竺鼠

相変わらず頭おかしい。最高。

ナイツ

おら東京さ行くだ。塙がツッコむ。ハライチの時にも書くけど、やっぱり「期待されているものをスカす」というのは、本人たちには挑戦で勝負であっても、見ているほうは「物足りなさ」を感じることもあるんだよなあ。これも難しい問題です。

東京ダイナマイト

テレビ。「風邪ひけ」っていいツッコミだよね。

尼神インター

軽い女。仕方ないとはいえ、同じ切り口なら「相席スタート」のほうが上かなあと思ってしまう。

トレンディエンジェル

結果的に敗者復活をして、そのまま優勝してしまうわけだけども、個人的には「いつもの出来に比べるとイマイチかなあ」と思ったので投票しなかった。けど圧倒的得票でしたね。もちろんいつもに比べると少し劣ると思ったものの、当然面白かったわけなので、まあ順当ですわ。

ダイアン

バーベキュー。ところどころキレのあるフレーズが登場するものの、決め手に欠けたかなあ、と。裏を返せば「関西以外の賞レースでいつもみるダイアン」でした。

さらば青春の光

プロポーズ。とってもいいネタだし、面白かったし、迷わず投票。あんまり伸びなかったなあ。なんでだろう。「不毛な議論」で披露した3回戦までのネタ「能やん!」も見たかったなあ。


決勝

メイプル超合金

いやあ面白いですよ。漫才としての技術はまだまだなんだろうけども、ひとつひとつのボケが重く爆笑を誘う。会場のウケも良く「これは最初から番狂わせがあるか?」と思ったんだけど、審査員慣れしていない歴代王者たちがこぞって「様子見の基準点」をつけたため、思ったより点数が伸びず。

馬鹿よ貴方は

おにぎり屋。後半で「大丈夫」をずーっと言い続けるという完全に頭がおかしいボケをこの舞台でかけることが出来る凄み。もとい「どうかしてる」感。やっぱり自分はこういうネタに心を惹かれてしまいますね。

スーパーマラドーナ

落ち武者。前2つのコンビの「どうかしてる」感をちゃんと漫才に落とし込んだらこうなる、という非常にきれいな流れ。前2つの審査で困った審査員が安心してそこそこ高い点をつけることが出来る「良心」でしたね。ここで今回の流れが決まったような気がします。

和牛

花嫁。和牛の「男の理詰め漫才」はオッサンは大好きなんですけども、やっぱり苦手な人がいるのかなあという印象。ちゃんと最後に展開をひっくり返す工夫がされてはいたんだけども、届かず。惜しい。

ジャルジャル

互いに細かい言い間違いや存在しない諺など、耳にひっかかる言葉を掛け合っていく。笑い飯のスタイルをさらに昇華させたような非常にレベルの高い「漫才を装った」コント師のネタ。これはそりゃ評価されますよね。好き嫌いはあるんだろうけど、ジャルジャルのネタの発想力とか技術力とか、全てをぶつけてきた感がありました。

銀シャリ

料理。正統派漫才ここにあり、という非常にきれいな、そして分かりやすい漫才。「ベルリンの壁ドン」はいいですよね。

ハライチ

誘拐。いつものノリボケスタイルを封印し、岩井のフレーズに対して澤部がちゃんとノリながらもツッコミを入れる。やっぱり新しいスタイルはこういう場では「肩透かし」になっちゃうんだよなあ。ナイツしかり。かつてR-1においてヒロシが決勝で新ネタ披露して伊東四朗に指摘されたくだりを思い出してしまう。

タイムマシーン3号

特殊能力。前半の畳み掛けからの後半のひっくり返し、スキのない構成でした。芸歴を感じさせます。トレンディエンジェルさえいなければ、分からなかったなあ。今回一番の悲運。

トレンディエンジェル

ハロウィン。敗者復活の勢いというけども、そもそも彼らは会場の空気を一気に持っていく実力と人気、そして不思議と「華」があるんですよね。何もわかってない社会学者こと古市憲寿がM1後番組の「聞きにくい事を聞きに行く」生放送で、本人たちに「驚くほど華がない」なんて言っていたが、あんだけハゲていて面白い彼らに華がないわけなかろう。PSP(ペッ、斎藤、ペッ)で笑い死に。


最終決戦は銀シャリトレンディエンジェルジャルジャルの順番。ジャルジャルが最初のボケで1ネタ目と同じことをやった時点でトレンディエンジェルの優勝は決まってしまいました。なぜジャルジャルは2本とも同じスタイルのネタを仕込んでおいたのか。あそこまで完成されたネタを作っておきながら、なぜもう1本スタイルの違う完成ネタを仕込めなかったのか。もちろん2本目に披露したネタの完成度は1本目と同じくらい高いんだけど、それを同じように見せてもそりゃ評価されんでしょうよ。ジャルジャル本人に聞いてみたい。


前半の空気は完全に荒れ場だったんですが、途中から上手いこと軌道修正され、全てはトレンディエンジェルのお膳立てになってしまいました。非常に順当な優勝だったと思います。審査員の傾向としては、ノンスタ石田、パンブー佐藤の二人が厳しかったように感じました。その場の笑いの総量よりも「いかに漫才として作りこまれているか」という作家目線が強かったのかなあと思います。文句とかでは全然なく、なんかそんな気がしたんで書いただけ。


その他トピックスとしては
上戸彩復帰
もう完全に「ありがとうM1」と言っていい。

・芸能人観覧、なし
なぜ矢口を呼ばない!

こんな感じでしょうか。


審査員の重すぎる圧力が消えたせいか、会場もほどよく笑いが起き、見る側としてはM1特有の緊迫感が薄れた反面、楽しく見れる番組だったと思います。復活一発目の優勝者もある程度名前も知られた実力者ということで文句なし。「新たなスター」的な話にはなりませんけど、非常に収まりがいい結論になったのかな、と。あとは「THE MANZAI」でハマカーンウーマンラッシュアワーが毒づいてくれれば全体として完成です。ともかく楽しかった!