紅白が切った舵

今年の紅白にももクロちゃんが出ない。これはモノノフ的には非常に衝撃だったわけです。


ももクロにとって紅白とはどのような位置づけかを一言でいえば「約束の場所」なのですよ。結成当初から「紅白に出る」ことを目標にし、そして早見あかりが脱退するときに「ももクロは歌手で、早見は司会で共演する」という約束をしたのです。だからこそ世間的な価値が相対的に下がったところで、ももクロにとっての紅白は3年連続で出場したとはいえ、いまだに非常に重要な意味を持っていました。昨年は有安さんが紅白直前でインフルエンザに罹患したこともあり、今年はその忘れ物を回収するという意味合いもあったわけです。


おそらくモノノフの中で今年ももクロが紅白に出ないという事態を予測していたのはゼロだったんじゃないかと思います。ゼロ。そのくらい「紅白には出るもの」と思っていたし、また「今年は危ないんじゃないか」なんて思っている人もいなかった。だってももクロを差し置いて出場にふさわしい歌手なんて、客観的に見てもそんなに多くない。今年もNHKにはそこそこの頻度で出演していたわけで、覚えが悪かったわけでもない。前述の事情があるので、オファーを断るとは考えにくい。そこにきての「卒業」および年越しライブ開催の発表だったので、「辞退したのか?」という憶測も飛んだが、落選だったことがももクロ側から発表されてさらなる衝撃を与えた。


「卒業」という言葉づかいは「もう出ないよ」という意味合いを多分に含んでいるわけで、このことから一部のモノノフは反発。「早見との約束はどうなるんだ」というやつですね。ももクロ側だってこのことは誰よりも理解しているわけで、それを全部ひっくるめたうえでの「卒業」なんだってことを受け止めなければいけない。


ももクロに関してはのちほど続きを書くとして、とりあえず紅白そのものの話に戻す。


紅白の歌手の選考基準は一応に提示されているものの、結局のところはNHK側のさじ加減ひとつなので、選ばれなかったことに文句を言うのはお門違いである。落選した人にも注目が集まっているが、白組のジャニーズ7組もよくよく考えるまでもなく大概である。ジャニーズカウントダウンなのか紅白は、というツッコミが入ってもなんら不思議ではない。しかしNHKが「これでやります」と決めた以上はそれが正義だから仕方ない。誰もMステスーパーライブの人選に文句は言わないだろう。


前回和田アキ子の話でも書いたけども、もはや紅白が「売れている人が出る」という枠組みで考えるのはやめたほうがいい。売れてなくても出る。それは紅白という番組を成立させるためだ。しかしその一方で「売れている人が満を持して出る」という側面が全く消えたわけでもない。だからこそももクロ及びきゃりーぱみゅぱみゅらが「出たいのに出られない」のは、そりゃザワザワするわけですよ。


でも紅白は、NHKは「彼女らを出さずとも満足できる番組を作る」と舵を切ったわけだ。その意思は尊重するが、それが真っ当な判断とはどうも考えにくい。まあそれはこちらが勝手に思うことであり、NHKは知ったことではないのも承知している。ももクロやきゃりーに代わる歌手が出場者にいるとは自分には思えないけども、それを納得させるような番組を作る自信があるのだろう。決して「判断を誤った」とか「どうかしている」わけではあるまい。自分はそう思っているけども。


またももクロちゃんの話に戻しますが、ももクロちゃんが落選したことにより「卒業」という選択肢を選んだのは、「じゃあ結局どうしたら出れるのよ」というレジスタンスではあると思うのですよね。過去3年出場出来たのは、その年しっかり活躍したという自負がももクロ側にはあったはずだ。今年は前3年と同じくらい、いやそれを遥かに凌ぐ活躍をしたという自負もあっただろう。でも選ばれなかった。納得がいかないだろう。だから「紅白に選ばれることで活躍を認めてもらった」という考えを棄てた。だってそうじゃないんだもの。そうでなくても紅白に求められる歌手であれば「売れてなくても」出られるのだ。しかしそうでもなかった。求められていないのであれば、新たな価値基準を創造するしかない。「卒業」という選択肢は至極当然だ。


もちろんモノノフが、ももクロ本人たちが感情的に整理がつかない部分は大いにある。「卒業」としてしまうことで紅白に「二度と出ない」という含みを持たせた宣言になっていたり、また辞退したならともかく、落選を機に「卒業」を言い出すのはカッコ悪いとか(自分は前述のとおり、落選したからこその「卒業」だとは思うんですけども)、早見との約束を、5人でエンディングに参加するという願いは果たせていないだとか、もちろん全て色々あると思うのです。


けど、ももクロはまたも「次元上昇」したのである。紅白という自らが一番こだわっていた旧来の価値観を脱し、次のステージへ進もうとしている。果たせなかった夢はまた夢として、いつか叶う日が来るかもしれない。しかしここでああだこうだ言っていることがもはや虚しい。


「次元上昇」とは2ndアルバムの1曲目「Neo STARGATE」の一節であるが、このアルバムが発売されたときにヒャダインツイッターでアルバム批判をうっかり呟いてしまい、遺恨となって2年の時間を空白にした。いまや笑い話であるが、この時自分は「ヒャダインももクロの進化についていけなかった」と思っていた。ヒャダインが描いていた旧来の「アイドル曲」の枠(パラダイム)に囚われ、ももクロの進化についていけなかったのだ。まさに「Neo STARGATE」の歌詞通りだ。

舞い上がって 舞い上がって 囚われを全部解除して
迷いを蹴り上げ その時は来る
研ぎ澄ませ 自らを 削ぎ落とせ 古いパラダイム
今なら間に合う シフトしてゆけ


今のももクロと紅白の関係もこんな感じである。モノノフは「約束」に囚われず「紅白」という古いパラダイムを削ぎ落とし、次のステージにシフトすべきなんだろう。モノノフは紅白側が百田夏菜子を泣かせたことを忘れてはいけない。しかしこれもいつかはヒャダインと同じように「笑い話」に転化される日が来る。


運営側を批判する声も少なくない。しかし素人の運営批判はハナクソ以下であることを自分は「Egirlsを真面目に考える会議」で痛いほど感じた。誰よりも真面目に真剣にももクロのことを思っているのは運営側だ。こんなもん信じてついていくしかないだろう。ハロプロの時には感じなかった信頼が、ももクロにはある。だからこそ今回の判断も大いに支持する。


紅白が今回の判断を「やっちまった」と気付き、認め、そしてももクロ側が再び紅白に「降臨」するその日まで、追いかけるのも悪くないじゃないか。そしてその時はきゃりーぱみゅぱみゅさんも一緒に復帰で頼むよ!