「裏切られた」のは誰

ほこ×たて」で演出と言うには厳しい編集をされたと、出演者がブログで経緯を説明。


ほこ×たて」は故事の矛盾よろしく相反するもの同士を対決させ、どちらが勝つのかを検証するバラエティ。深夜で細々やっている頃は「トリビアの泉」の「トリビアの種」のコーナーを発展させたような感じだったが、ゴールデンに移行してからは「その対決どうなのよ?」というものも多くなっていった。要するにネタ切れつうことである。


それが今回ヤラセとも受け取れる過剰な演出があったことを、ラジコンカーを操作していた側からブログで告発されたのだ。過去にラジコンカー側は何度か出演しており、その時にも同様に演出があったと指摘する。



これを「フジがヤラセを行った。悪い。糾弾。」とするのはアホのすること。もちろん「あまり良いとは思えない」ことではあるんだけど、基本的に誰も不幸にならないヤラセというか演出は許されていいと自分は思っているわけです。視聴者がどこまで純粋に対決内容を信じていたのかは分からない。自分は割とガチンコだと信じて楽しんでいたクチなので、こういう話題は真偽がどうであれ漏らしてほしくないとは思っているが、所詮はテレビの企画。放送内容はファンタジーと同じ次元であり、だったら信じていたほうが楽しいと思っているだけのこと。たとえ対決内容が過剰な演出にまみれていたとしても、「裏切られた」とは思わない。だから、過剰な演出があったことに対して自分がいち視聴者として怒ることはひとつもない*1


もし仮にこの対決で大金が動くギャンブルだった、つうならまだしも、その対決を見て「楽しい」というだけのものに対してエンタテインメントとしての価値はそこまで下がるもんなのか。もちろんこの番組は「ガチンコ」っぽく見せているからこそ支持を得ていたという部分があることは承知しているんだが、それにしてもテレビにおける「ガチンコこそ正義」「ヤラセはいかん」という風潮、そろそろどうにかしたほうがいい。演出・ヤラセによるエンタテインメントが価値を著しく下げるという価値観のほうが危ないんじゃないだろうか。「ヤラセ=悪=糾弾」の図式、いい加減どうにかならんか。テレビが面白くないという奴がヤラセを糾弾しテレビをつまらない方向へ加速させている。ああやだやだ。



今回の件だって「真剣勝負とは言い難い演出」は最初からあったことをラジコンカー側がきっちり説明している。そしてそのこと自体をラジコンカー側は責めていない。つまり「対決の場のヤラセ」はラジコン側も黙認しているということ。問題にしているのは実際になかった勝負が勝負とされ、しかも負けたような編集をされていたこと。この点をラジコンカー側が「裏切られた」と感じたのだろう。


そして過剰な演出に今まで加担していたのも

『ラジコンの認知度を上げたい』『ラジコンを普及させたい』 との強い想いで、制作会社からの度重なる無理な要望にも出来る限り応えて参りましたが、今回の編集内容には愕然とし大きなショックを受けました。

という事情である。自分はこの文章を読んだときに「ああ、なるほどなあ」と思った。進んでではないものの、自分たちにメリットがあることを考慮したうえで演出に加担していたのだから、ラジコン側が絶対的な正義かといえばそうではない。この点を隠さず公表したラジコン側に誠意はある。実に大人な判断だと言えよう。ヤラセを糾弾するならこの点を責めないのはおかしくなる。


で、個人的にはここからが本題なのだが、個人的に今回の騒動で気に食わないのは、今回の件で一番「裏切られた」と思っているのは、視聴者でもラジコン側でもなく、絶対に「ほこ×たて」側だということ。


なぜか。それは「今までラジコン側だって演出に了承してきたのに、なぜここにきてそれをバラすのか」と間違いなく思っていることが容易に想像できるからだ。過剰な演出が傲慢だとは思わないが、過剰演出に付き合わせることで「ヤラセの共犯者」だと思い込み、何度も何度も自分たちの要求がなんでも通ってしまうと勘違いしていたところに、この演出を行った人間の傲慢さが窺える。それが自分にはイヤでたまらない。自分たちのメリットを考えたうえだとはいえ、自分たちの信用を落としかねない演出に加わっている人間の気持ちを考えたことがあったのだろうか?あまりに言うことを聞いてくれるから調子に乗った結果がこれじゃないのか。編集の際に一度警告していたにも関わらず強行しても大丈夫と高をくくっていたからじゃないか。あまつさえ「裏切られた」と思っているんじゃないか。


だから「過剰演出」という面で番組そのものを責めるようなことは思わないが、こういう状態でヤラセ問題が噴出するような事態を招いたスタッフの傲慢さは責めるに値するだろう。「ほこ×たて」の人気企画である「金属VSドリル」は、日本の「ものづくり」の魂を垣間見る好企画であった。そんな現場を見ておきながら、自分たちの「ものづくり」にプライドを感じないやり方。


がっかりとしか言いようがない。

*1:猿の首にヒモつけてラジコン追わせたつうのは多少怒られても仕方ないのかな、とは思うが