ひきぎわ

世にも奇妙な物語’24夏の特別編」の感想を。「世にも」の感想だけは死んでもやめんじゃねーぞと誰にも言われてないけど勝手にやります。

 

追憶の洋館

若村麻由美主演。気づいたら謎の洋館にいた主人公。自分のことは知られているが、主人公からは誰か分からない数名の人物が洋館にいる。何を聞いても「自分で思い出さなければ意味がない」と言われ教えてくれない。生活を送るなかで断片的に色々なことを思い出す主人公。最終的にそこにいた人物たちは「自分が殺した人間」であることに気づく。しかし本当は主人公が「作品の中で殺した登場人物」であり、主人公自身スランプに陥って出かけた先で事故で無くなっていた。遺作となった作品では前述のやりとりが記されており、その作品が編集部に送られたメールの時間は、死亡推定時刻よりも後だった。

 

んまあ、やりたいことは分かるし、しっかり練られた作品ではあるんだけど、なんだかあまり面白くはなかったんですよね。しっかり練られたものがしっかり面白いわけではないというこのジレンマはどう形容したらいいんですかね。自分が歳食っただけなのかね。

 

 

友引村

原菜乃華主演。仲の良い3人組の男女だったが、自殺をしてしまった友人の葬儀に出かけた主人公(原)。いかにも怪しい雰囲気の村に訪れ、ただごとではない雰囲気に気づく。火葬の際に故人の友人の名前を書いた人形を入れると、その友人が一緒に死後の世界に連れていかれるという風習。さらには死んだ人間と連れていかれた友人は入れ替わるということが起きていた。

 

かなり大雑把にストーリーを書いてしまったが、なんか真面目に書くほどのもんじゃなかった。ちょっと陳腐で長い。まあかわいい女の子にストレートのホラーやらせるのは正しいんだけど、さすがに「本当になかった怖い話」すぎる。

 

 

人類の宝

高杉真宙主演。グラフィティアートの才能がある主人公(高杉)は、ある日いつものようにグラフィティアートを書いていると、謎の男(新納慎也)に保護される。文化財は正しく保護されなければいけないとされ、軟禁されてしまう。脱出を試みたものの敵対していた組織に無理やり作品を強要され命の危険を感じた主人公は、再び保護される道を選ぶ。しかし作品の影響力が強くなりすぎて、他の文化財の価値を脅かすまでにカリスマ性を帯びた主人公は、保護団体によってコールドスリープされることで「保護」されてしまう。

 

今回の一本を敢えて選ぶとしたらこれかなあ。前半は割と面白いコメディの雰囲気があったんだけど、割とシリアスよりに振り切って、最後はいかにも「世にも」な話に着地した。今回はここまでの3本がオリジナル脚本で最後だけ原作あり。原作なくてもこれだけできるんだから、日テレみたいなことにしないためには、こういう「脚本家の体力づくり」も必要だよねえ。

 

 

週刊 元恋人を作る

高橋ひかる主演。起業セミナーの講師に振られたが、忘れることのできない大学生の主人公(高橋)。そこで目にしたのが「週刊 元恋人を作る」という毎週パーツが届くタイプの雑誌。元恋人を再現するためにバイトに明け暮れ購入費を稼ぎ、上半身完成までこぎつける。そんな中バイト途中で元恋人を目撃。幻想が出来上がった元恋人はよく見たらそれほどかっこよくもなく、そして胡散臭かった。一気に醒めた主人公は、その上半身を友人に見せてライトアップすることで忘れる。一方元恋人のほうは、主人公を作ろうとしていた。

 

これもとっかかりまではとても面白く、オチが尻すぼみ。最終的には「世にも」の常套手段「自分も」パターンでお茶を濁されてしまった。なんかもっとうまく転がせそうな気もしたんだけど。

 

 

うーん、全体的に小粒。そういう時もある。ホラーも感動も王道ではあるが、コメディもナンセンスも欲してしまう。これは自分の好みの問題でしかないのだけど、30年も見ていればそうなる。仕方ない。

 

あとタモリ後継者問題は早めに片づけておいたほうがいいのかも、と少しだけ思った。個人的には「タモリのいない世にも奇妙な物語は考えられない」の理由で、「世にも」ごと幕引きしてもいいような気はしているんだけど、何かと理由つけてやっちゃうのが今のフジ。去年「あのちゃんでいいや」って書いたけど、いや幕引きだなやっぱり。

 

あと頼むからオープニングとエンディングはちゃんと流してくれないかなあ。「世にも」に余韻は絶対必要なのよ。すぐ「向上委員会」の予告入るのは興醒めもいいところなんだ、ってことを2024年に言わなきゃいかんのか自分は。苦しい。また秋かな。