そして誰もいなくなった

「オドオド×ハラハラ」が1年で終了。

 

「オドオド×ハラハラ」、通称オドハラはフジテレビでオードリーとハライチをメインに据えたバラエティ番組で、佐久間宣行プロデュースとして鳴り物入りで始まった。にも関わらず半年経って番組の枠移動があり、そして終了。正直に言えば「何だったんだ」である。

 

一方TBSでは「リンカーン」の後継番組を謳い「ジョンソン」が始まった。かまいたち、ニューヨーク、見取り図、モグライダーをメインに据えてはみたもののこちらも1年で終了。今のテレビにおいて新規立ち上げのバラエティがいかに難しいか、そして今のテレビ局に1年以上も辛抱強く待って育てるだけの体力がないことを露呈した。まあまあ悲しい出来事ではある。ただ自分の場合は申し訳ないが「ジョンソン」は本当に1秒も見ていない。これは「面白くなさそう」ではなく、そもそも「リンカーン」からあんまり見ていなくて(さすがに全く見たことがないわけではなかったが)、今更後継番組とか言われてもピンとこなかったというこちらの事情のほうが大きい。

 

じゃあ「オドハラ」も同じような感じかと言えば、こちらはTBSよりももっと酷い有様だったと言える。「飛ぶ鳥を落とす勢いのプロデューサー佐久間宣行」が「オードリーとハライチ」で「フジでゴールデンのバラエティをやる」という、「」内のいずれかに引っかかりがある人であれば「じゃあ見てみよう」となるような期待感を抱かせたものの、「」内の看板を超える中身がひとつもない完全ハリボテでしかない番組だったのだから、これは全ての層からの落胆が大きかった。

 

番組から見え隠れするのは「佐久間が信頼しているオードリーとハライチに任せておけば面白いはずだから大丈夫」という、フジテレビ側の分かりやすすぎる安直。もちろんそうではないのかもしれない。しかしそう見えてしまうほどの安直。この座組を作ったことがフジテレビのゴールであり、ここから何か仕掛けていこうという雰囲気はまるで感じられなかった。

 

そして分かりやすく追い打ちをかけたのが、枠移動後リニューアルして始まった芸能人のお宅訪問。この件に関して言及している人全員が触れていると思うが「なぜあの座組であんな激ヌルバラエティを見なければいけないのか」という失望。twitterにも書いたが「誰が誰のために作っていて、そして誰が見てるのか分からない」という、作り手の志も視聴者の気持ちもどこにもなく、そして肝心の視聴者も誰もいないという「そして誰もいなくなった」番組と成り果て、朽ちる。地獄でしかない。マジで来年の「あちこちオードリーオンラインライブ」でハライチと佐久間P出して、この反省会を2時間やってほしいくらいだ。

 

とまあ、ここまで書けば「戦犯はフジ」っていう論調になる。もちろん自分もフジが相当悪いとは思っていることが上記からでも伝わるだろう。ただ、「じゃあ本当にそれだけか」と言われれば、それも違うだろうと思っている。

 

ネット上の記事では「出演者および佐久間Pは犠牲者か」的な論調のものもあった。これはオードリー、ハライチ、そして佐久間Pの能力を考えたときに、それらが全く生かされずにダメになったのはフジの采配のせいだという考えができるからだ。

 

けども、ここは敢えて言わせていただきたい。「オドハラ」は立ち上げの時から、大して面白くなかったのである。フジも悪いが、フジのせいだけでもない。オードリーとハライチはこの番組に対してちゃんと向き合っていたのかが気になるし、佐久間Pはこの番組の方向性をどう考えていたのかも分からない。なんか、互いが互いを信用しているがゆえに軽く遠慮が入った結果こんなことになったんじゃないのかという疑念が残る。

 

オドハラは一度特番を経てからのレギュラー化。こう書けば「オドハラの特番が好評だったから」となるだろう。実際数字は悪くなかったようだ。理由は簡単。出演者および佐久間Pの固定客がちゃんと見たからだ。これを安直にレギュラーにしたフジはもちろん良くない。もしかしたらレギュラーありきでの特番だったのかもしれない。ここら辺の事情は知らないが、とにかく1度の特番を経て即レギュラー化されるほどの完成度じゃあなかったとただのテレビを見ているオジサンは当時思ったのである。

 

しかし今この座組にはファンがついているし、数字も取れると踏んだフジが安直にレギュラー化した結果、レギュラー化した直後から早々に「なんだかよく分からない番組」になり、もう最初から全然面白くなかったのである。この座組なのに。前述のようにリニューアルされてからはもう全部地獄であったことは否定しないが「最初のほうは面白かったのに」みたいな論調には全く賛同できない。絶対最初から番組見てないだろ。最初からちゃんとつまんなかったわ。ただ、「いつかヒットが出るのかも」という淡い期待だけはかろうじて持っていた人が少なくなかったんじゃないか。なぜならこの座組だから。ファンは期待する。しかしそのファンの期待を木っ端みじんに打ち砕いたのがリニューアルのお宅訪問なのである。これで全ファンが見放した。

 

分かりやすく言えば、最初から100点満点の30点くらいだった番組だったが、リニューアルでマイナス100億点になっただけなのだ。最初からさほど面白くもなかったが、リニューアルしてそんなことが些末に感じるほどの絶望で、もう全てがどうでもよくなったのである。もちろんテコ入れが悪い。しかしこの座組でいておいて、このテコ入れに抗うことはできなかったのか、という気もする。「既に関係者がみんなうっすら諦めていたからこそ、こんな地獄になったんじゃないか」という疑問には、誰か答えてくれるのだろうか。たぶん誰も答えない。

 

別に「誰が悪かったか」なんてことを追及することに意味はない。ただこの番組の惨状をフジにだけ押し付けるのはやっぱりちょっと違う気がしている。「出演者」と「プロデューサー」と「テレビ局」が均等に悪かったことにしておかないと、たぶん次も似たような悲劇が起こる。自分のような腐った屍肉を頬張ることを趣味としているハイエナしか喜ばない。