僕は歩く

では「いいとも」を見ずに自分は何をしていたのか。それはEテレ「歴史にドキリ」の伊能忠敬の回を見ていた。


「歴史にドキリ」とはEテレが放送している小学生向けの番組。昨年に続き今年はシーズン2が放送されている。中村獅童が毎回歴史上の偉人に扮し、その偉人について分かり易く説明してくれる番組。中でも内容を集約し歌に乗せる「ドキリ★ソング」が番組の見どころ。すべて中村獅童が歌っていることに加え、作曲はヒャダインこと前山田健一、振付は振付稼業air:manという豪華布陣。この「ドキリ★ソング」のクオリティが無駄に高く面白いので、昨年分の再放送と合わせて、全て録画している。


で、このドキリソングは毎回毎回何らかの曲をモチーフというかパクリというか、パロディにして作られている。
「なんかこの曲聴いたことあるわ」というレベルから、「まんまじゃねえか!」という元ネタが分かりやすいものまで様々。例えば豊臣秀吉のドキリソング「関白宣言(秀吉流)」はまんまさだまさし


んで、ちょっと前に放送された「伊能忠敬」の回のドキリソング「歩く、歩く、歩いて」。これが伊能忠敬が日本地図を歩いて作ったという偉業の「歩く」とひっかけて、「アルクアラウンド」を歌うサカナクション風に作られていておおいに笑った。サカナクションを聴いたことがある人もない人も、とりあえずこれを見てほしい。


こちらがサカナクションの「アルクアラウンド」


比べてしまうとそこまで似てはいない。しかし「サカナクション」風の曲と歌唱、そしてドキリソング側が「アルクアラウンド」のPVを意識して作ってると思いませんか?


大事なのは「歴史にドキリ」を見ている視聴者のどれだけが、このドキリソングがサカナクションを元ネタにしていると気づくのかということ。これを実際に見ている小学生がサカナクションパロディであることに気づけたらそれはそれで大したもんだし、見せている教師側も若い先生の一部が気づくかどうか、つうとこだろう。


つまりは「ハナっから気づかれることを前提に作ってないパロディ」ということなのだが、自分はその事実に笑ってしまう。悪い言い方をすれば「こんな曲も作れるヒャダインすげー」といういびつな評価で叩かれる原因になってしまうが、逆に言うと「パロディをパロディと気づいてもらえない悲しさに自ら突き進んでいる」ということでもある。贅沢な才能の無駄遣いを見ている感じがするところが、気付くオッサンにはたまらない。


単純に中村獅童が偉人に扮し、歌い、踊る。それだけでも面白いが、気づかれないパロディを量産するヒャダインの職人気質と哀愁を知る大人にはもう一味面白い。


こんな面白いものと今の「いいとも」ではやっぱり勝負にならんですよ。