みのもんたが息子の逮捕を受けて、「朝ズバッ」などの報道番組を降板。
息子が他人の鞄に入っていたキャッシュカードを用いて口座から金を引き出そうとした「極めてあくどい」窃盗容疑で逮捕されたことを受け、暫く出演を自粛していた。逮捕当初は「番組を降板するつもりはない」と言い張っていたが、世論の反感を鑑みたうえで降板することを決めたようだ。
なぜみのもんたが「降板しない」と言い張ったのか。それは息子とはいえ30も過ぎたいい歳のオッサンが犯した犯罪に関し、その父親であるみのもんた本人は責任を取る必要はないと考えているからだ。降板を決めた今でもみのもんた本人はこう思っているのは、記者会見のやりとりをみてもそれは明らかだ。降板する必要はないが「道義的な親の責任で、一番苦しい道を選んだ」という言葉でもって「不本意だけども世間が辞めろを言っている」という内容を言い換えた。つまりは世間の反発が強くなければ辞めなくていいけど、あまりに反発買ったから辞めますよ、と遠回しに不貞腐れている。
いい歳こいて不貞腐れているみのもんたを擁護する気はないのだけど、実は自分はみのもんた本人に「道義的責任」は全然ないと思っている。だって、いくら息子だとはいえ30過ぎたオッサンの犯罪だ。育てたみのに責任がゼロとは言わないが、かといってみのが背負うべき咎があるとも思えない。どう考えても悪いのはみのの息子本人に決まっている。言ってしまえば、30代のオッサンが全て悪い。道義的責任なんかみの本人にあるわけがない。
しかし自分はだからといって「みのが報道番組を続けるべきだ」とはちっとも思わない。辞めて当然とまでは言わないまでも、「辞めるのはごく当たり前」とは言いたくなる。道義的責任はないけど報道番組は辞めるべき。それはなぜか。考えるまでもない。
単純に、恥ずかしくないのだろうか。
報道番組のメイン司会だ。身内が犯罪を犯した、しかも言い逃れしようもない極めて悪質な窃盗容疑である。もし自分がみのもんたならば、真っ先に報道番組から降板することを考えるだろう。言うまでもなく「恥ずかしい」からだ。親の責任とかはどうでもいい。仮にも報道番組の司会をする人間の息子がしょうもない犯罪で逮捕される。どの面提げて番組をやるというのか。考えるだけでも死にたくなる。そしてこの感覚は決して自分固有のものではなく、遍く一般的な感覚だと自分は思う。
しかし、みのもんたにはこの「恥ずかしい」という感覚が欠落していた。ここが非常に重要だと思う。
会見の内容をすべて熟読したわけではないが、斜め読みした限りではみのもんた本人から「恥ずかしい」という心情を垣間見ることが出来ない。最後の「バカヤロウ」に関しては完全なるパフォーマンスである。息子に向けているのはでなく、確実に世間に向けたメッセージだ。もし息子の行為そのものを恥じるのであれば、このようなパフォーマンスをする気にはならないはず。全ては自分の保身のため。その点からもみのもんたには「息子のやった行為を恥じている」という感覚が見受けられない。
いくら道義的責任がなくたって、「恥ずかしい」という感覚を持ち合わせているならば、もっと早い段階で「降板」という選択肢は登場したはずである。にも関わらず今更「道義的責任」を持ち出して降板を述べるのは、「息子が逮捕されてても報道番組をやっても恥ずかしくない」と思っていたからだろう。世間の感覚とみのの感覚が大幅にズレていたからこそ、「やめなければ収まらない」なんて発言につながっているのだ。なぜ「やめなければ収まらない」かを、本質的に理解していない。
要するにみのもんたは「恥知らず」なのである。それは「報道番組の司会者」という肩書に溺れて周りが見えないせいなのか、元々みのもんたが恥知らずなのかは分からない。ただ一つ言えることは、その境遇から他人と比べても金回りが悪いわけではないだろうに、他人の財布を抜き取るどころかキャッシュカードを使って口座から金を盗もうとした息子もみのと同じく、いやそれ以上に「恥知らず」だということだ。
結局この親子は揃って「恥」の概念が世間一般の感覚と大幅にズレて欠落しているということなのだろう。だからこそ、みのは大物司会者になれたのかもしれないけども、こういう場面で「責任がないから辞める必要がない」とも言えてしまうのだ。ルース・ベネディクトは著書「菊と刀」で日本を「恥の文化」と形容した。みのの外国人の知り合いは、みのが責任を取らなければならないという風潮に対して「日本はおかしな国だ」と評したとみの本人は述べていたようだが、この感覚こそが日本の、そして日本人特有の「恥じらう」ということなのだ。日本人からすれば、みのもんたほど「おかしな振る舞い」をしている人間はいないだろう。
もう一度言うが、みのもんたに道義的責任はない。しかし親子揃って「恥」の概念がないということを露呈した今回の事件で、みのもんたが報道番組から姿を消すことになるのは「必然」と言って差し支えないのではないか。
