過去から何も学ばない人間は愚かである

・コードブルー
ドラマ全体の平均点の高さはひとえにフジの医療ドラマに対するノウハウの賜物ではあるけども、かといって「救命病棟24時」「白い巨塔」「医龍」などの過去の名作ドラマに肩を並べることが出来たかといえば、一歩、いや二歩及ばなかったと思う。


山下智久は思ったほど悪くはなかった。決して良くもなかったけど。少なくともセリフが多くて影のある役だった「クロサギ」よりはセリフも少なく安心して見ていられた、という程度の話。主演としてはギリギリ及第点でしょう。新垣結衣だって大根と笑い飛ばすほど下手ではないけど、かといって主演で見ていられるかと問われればやっぱり疑問。


一方で三番手に甘んじた戸田恵梨香と、最終回でようやくヘリに乗ることが出来た浅利陽介のほうの演技力が確かであり、前者ふたりが医療行為に当たっているときよりも後者ふたりが医療行為をしているほうが名医に見えたのはなんでだろうという状態。劇中での医者の実力としては逆なんだけど。


最終話でレスキューの避難勧告が出ているにも関わらず、トンネルの中で医療行為を行ったのは納得出来ない。ちょっと前に白石(新垣)が判断を誤って黒田(柳葉敏郎)の右腕を切断せざるを得ない状態にしたにも関わらず、トンネルの中に残って患者を救おうと言い出したのがその白石だったというのは単に「学ばない人」じゃないかよ。結果的に何事もなく人命が救われたから話としては美談なのだろうが、プロフェッショナルとしては失格だろう。三井(りょう)が感情を優先させて母親と胎児の両方を救うことが出来なかった話はなんだったのだろうか。その場にとどまった三井ですら何の教訓も得てないじゃないか。


「常に揺れ動く感情と理屈の間で医療行為を行っているのが医者だ」というのを描きたいのは理解出来るけど、あのトンネルでの医療行為がこのドラマの「結論」となるのでは、初回から何も進歩していないということではないのか。ラストの感動を優先させるために甘っちょろい選択肢を選んだのだとしたら、この脚本は相当にセンスがない。脚本家の林宏司は血迷ってしまったのだろうか。


ヘリコプターが飛ぶという映像の迫力に比して、ドラマの内容は登場人物の成長の描き方も人間ドラマも地味だった印象。先達がなければ充分に面白いドラマなんだろうけど、いかんせん比較してしまうと弱さが目立つ。☆2つ半。「救命病棟」シリーズを知らない人や山下のファンなら3つかな。