鬼瓦

古沢良太(こさわりょうた)に酔うお盆。


このお盆に何をしていたかといえばただ質問に答えていたわけではなく、ちゃんと(ちゃんとの意味が分からんけど)テレビを見ていたわけで、中でも「ALWAYS三丁目の夕日」「相棒」シリーズの脚本も手掛ける現在注目の脚本家、古沢良太の2作品の面白さに酔い痴れていたわけであります。

キサラギ

B級アイドル如月ミキの一周忌にネットの掲示板を介して集まった5人が、彼女の自殺の真相に迫る過程で話は二転三転し…という映画。ただ、映画というよりは出来のいい舞台を見ている印象、と思ったらそもそもが舞台作品のようだ。そりゃ舞台っぽいわな。この「舞台→映画」の流れからしてもそうだが、密室で話が二転三転していくという構成も三谷幸喜の「12人の優しい日本人」と似ている。まあ舞台として密室劇はポピュラーなジャンルなので特に「似ている」ということでもないんだけど。


脚本もよく練られているが、何より「アイドルとオタクの距離と関係」が絶妙に描かれているのがツボ。劇中では登場人物全員に救いを持たせるために「アイドルにとって一番大事なのはファン」という構成を取ってはいたが、「ファンなんぞアイドルのことを知っているようで何も知らん」という近くて遠い存在であることも同時に描いている(というか、この作品の大きなギミックのひとつ)のが秀逸。映画としても充分に面白いが、アイドルという分野を考察する上でも非常に参考になる作品でもあった。


また、作中で詳しくは描かれていなかったが、家元(小栗旬)が警視総監を父に持ち自分も警察官でありながら職場では使えない人物として扱われ周囲に劣等感を抱いており、その劣等感を如月ミキというアイドルにぶつけていることで救われている(であろうと推測される)設定が妙にリアル。もっとも現実にアイドルと付き合って、その相手を某アイドルグループから脱退させた経歴を持つ小栗が演じているという強力な歪みを感じずにはおれないけども。ま、塚地が自身のコントのような振る舞いだったりユースケ・サンタマリアにオダ・ユージの名前を与え「踊る」の引用をさせるのと同じ歪みと解釈すべきなんだろう。

ゴンゾウ・伝説の刑事

連ドラ。初回の感想はここにも書いたけど、初回から勢いを増すようにここ数回は突き抜けて面白い。いかにして黒木(内野聖陽)がゴンゾウとなったのかを描いた13 日放送の回は、もう最初から最後まで目が離せなかった。


黒木の行動全てが悪いわけでもないし理解できなくもない。しかし当時の黒木の悪い部分は目に見えてしまう。しかもゴンゾウとなった黒木の今を知る視聴者からすれば尚更、というところが憎い。誰しもが正と邪の部分を抱えており、その時の行動が正しかったのかなんて傍目から見れば分かりきったことでも、当人からすればその判断すら分からない。杏子(池脇千鶴)との結婚を約束し「もう一人にはさせない」と言っておきながら、裏切るかのように犯人確保のためにひとりにしてしまい、最終的に殺されてしまったという判断の危うさを、視聴者は責めることはできようか?


この作品に関しては脚本が手放しに素晴らしいとは思わないんだけど(もちろん面白いことを前提で話はしてますが)、内野聖陽の演技が脚本のアラを補い余るほどに素晴らしい。昨年の大河を見ていない身としては、内野に山本勘助の面影を見ることがないのもあるだろうが、ここまで素晴らしい役者だったかなと今までの自分の見識を疑うほどである。不真面目なゴンゾウのときとマジメなときのギャップときたら、また月並みな発言ではあるが抱かれてもいい。


そして13日の回だけではあるが登場した池脇千鶴が最高すぎる。池脇も「風林火山」に出演していたゆえ、大河ファンへのサービスか?みたいな声もあるんだろうが見てない自分は関係ない。ただひたすらに池脇千鶴のうらぶれ感とエロさに身悶えるばかりである。池脇千鶴って本当に懐の深い女優で、見た目どおりの清純そうな役もこなすが、その清純さを逆手に取ったイヤな女や、今回演じたような「ひたすら不幸な女」という役までこなす。しかもどちらかといえばイヤな女や不幸な女のほうが上手いんだから面白い。


さらに池脇千鶴は抜群にエロい。「ジョゼと虎と魚たち」でヌードを披露しているから、という話ではなく、池脇千鶴の醸し出すオーラって普通の女優よりも格段にエロい。あんな可愛らしい顔をしているのに、だ。いや、あんな可愛らしい顔をしているからこそかもしれない。体つきもいわゆる「ナイスバディ」ではないけども、なんかこうこちらの(というか自分の)劣情を喚起させる肉付きなのです。これって単に自分の性癖を暴露しているだけだろうか。いや、そんなことはない。きっとディスプレイの前で頷いている人がたくさんいるはずだ。


というわけで(ってこれじゃあ池脇千鶴がエロいから、みたいな理由に思えるがそうではなく)「ゴンゾウ」は今最も見逃せないドラマである。オリンピックの余波で今週放送された連ドラが「太陽と海の教室」に限らず軒並み壊滅的な数字を叩き出している中、「ゴンゾウ」も圧倒的に面白かった13日の第7話の数字が6.3%だった。あんなに面白かった回を6.3%の人間しか見ていないことが残念でならない。


ちなみに今この作業をしているPCの壁紙は「ゴンゾウ」である。内野聖陽かっこよすぎ。