ホラー

人は本当に恐ろしいものを見ると笑うしかない。


こんな命題が存在しますが果たして本当だろうか、と思っていたわけです。自分は身の毛もよだつような恐怖に直面した記憶が幸いにしてない。借金取りにコンクリート詰にされて東京湾(まあ札幌なら石狩湾だろうが)に沈められそうになった経験もなければ、霊感もないので悪霊さんこんにちは(まあ往々にして悪霊が見えるのはなぜか夜なので「こんばんは」なのだろうが)という経験もない。だから実際に恐ろしいものを見たらどうなるか経験上では分からない。


映画「リング」では、当時女子高生役を演じていた竹内結子が呪いのビデオから出てきた貞子を見て、酷い恐怖に晒されて顔面がえらいことになって死体で発見されるというシーンがありますが、実際にああなるのか、それとも前述の命題のように笑ってしまうのだろうか。


この答えが先日判明した。答えは「しょうもないくらいに笑ってしまう」である。


というのも、「ゴッドタン」の「キモンスターズ・チャンプ」を見た自分は笑いが止まらなくなったのである。死ぬかと思った。


バナナマン日村、ハイキングウォーキング鈴木Q太郎おぎやはぎの小木がそのキモさを競い合うという企画。そもそもゴッドタンは芸人のキモさにスポットを当てた企画が多い(「芸人マジ歌選手権」もベクトルは同じ)のだが、ここまでド直球な企画は初めて。ハイキングウォーキングのQ太郎(ミスタースズキックスのほうが通りはいいのかも)も充分にキモかったが、日村と小木のキモさには到底及ばない。


日村はその風貌にアレンジを加え、ヘンな動きでキモさを見せ付ける。お茶漬けを食べたときの顔面黄色に唇緑という組み合わせは特殊メイクをはるかに凌ぐ気持ち悪さ。現在のCGや特殊メイクの凄さは誰もが認めるところであろうが、そんな小手先の技術では及ばないキモさだった。


一方の小木は顔面の中身だけ見ればそこまでキモくないものの、内面から滲み出るキモさはとんでもないものがある。おでんを食べるときにちくわを舌でねちっこく舐め回す様は、男性の自分ですら「こいつはキモいぞ」と戦慄を覚えるほど。


ビジュアルでダントツのキモさを発揮する日村のキモさは、言うなればハリウッドホラーのキモさ。誰が見ても分かりやすくキモい。ビジュアルのキモさも然ることながら、内面からゾクっときてじっとりくるような感じを醸し出す小木のキモさは言うなればジャパンホラーのキモさ。日村のキモさは後味がいい(というのもおかしな話だが)キモさであり、小木のキモさは後々残るキモさである。


どちらがキモいという話ではなく、ハリウッドホラーの怖さとジャパンホラーの怖さそれぞれに良さがあるように、日村のキモさと小木のキモさもそれぞれに良さ(良いのか?)がある。ただ自分はやっぱり日本人であるから、どちらによりキモさを感じるかといえばそれはやっぱり小木のキモさかなあとは思った。


この放送を見たとき、彼らのキモさに怯えるアイドルを見て笑っているような気がしたんだけども、よくよく考えたら彼らがキモいことそのものに笑っているんだと気付いた。人は本当に怖いもの、キモいものに直面したら笑うしかない。そして何より怖いのは、こんなものを堂々と放送するスタッフの度胸だろう。その心意気にも笑うしかない。