ふわふわふるる

世にも奇妙な物語」が好きです。


何を思ったか、小学2年生の時のクラス換えに際して作られた文集の「好きなテレビ」という欄に「世にも奇妙な物語」と書いてしまうようなヘンな子供だったんです。もうその時何を考えていたか覚えちゃいませんが、おそらく陰毛も生えていない小学生ながらに「ちょっと変わったことを書いてやろう」という欲目があったんでしょうね。つくづくイヤな子供だったと思います。


ただ、「世にも」が好きなのは偽りではなく、今でも半年に一回放送される特別編は欠かさず観ていますし、このサイトを始めたときからその感想は書き続けているわけで、半年以上ここのサイトをご覧になっている方ならば一度は目にしたことと思います。


「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、幼少期に慣れ親しんだものは大人になっても変わることはありません。自分の場合「世にも」はこれに該当するわけで、あのオープニングテーマが聞こえてくると反射的にゾクゾクするようなそれでいてワクワクするような妙な感覚に陥るのです。


もちろん「世にも」で放送された全ての作品が好きだということはありません。ただ、オムニバスで別作品でありながら、「世にも」というドラマの枠には根底に流れる共通した雰囲気がある。自分は「世にも」のどこが好きかと言われればおそらくは「あの雰囲気」と答えるのではないだろうか。きっと観たことがない人にとってみれば全くピンと来ない表現方法だろうけども、今の特別編ではなく毎週放送されていた頃の90年代前半の作品を見たことがある人ならば「ああ、なんとなく分かる」と言ってくれそうな気がする。


ドラマ「鹿男あをによし」はその「世にも」な空気をまとったドラマのように思えた。


万城目学の小説が原作のドラマ。急遽奈良の女子高の教員になった主人公の小川(玉木宏)は、喋る鹿に声をかけられ…と第1話までの内容はこの1行で済んでしまう放送だった。正直初回の中身としては物凄く薄い。


しかし物語の雰囲気は抜群。「のだめ」の時の演技とは対照的に、常になんだか半分眠そうな顔をして病んだ感じの玉木宏の主人公っぷりがたまらなく良い。これまた「のだめ」の時はさほど気にならなかった撫で肩(いや、本当言うと指揮のシーンとかでは少し気になった)もここでは「ヘンな主人公」に妙にマッチしている気がする。千秋真一が当たり役だとは思っていたが、今回の主人公のほうが実は当たりなんじゃないかと思わせる。


これはもう完全に映像の作為ではあるが、画面全体を覆う「ぼんやり感」が、いかにも「世にも」っぽくてたまらない。話の内容もファンタジーだということでそもそも「世にも」向けな内容ではあるようだし、ドラマの出来もまさに「世にも」。それを毎週のように楽しめるのだから、自分の大好物が出ましたと言わざるを得ない。


脇を固める役者も地味に豪華だったりする。ていうか自分好みの役者ばっかり出ている。テレビを見ているとたまに「これは自分を喜ばせるために作ったんじゃなかろうか」と思える幸せな瞬間がたま〜にあるが、このドラマはまさにそれ。役者も、ゆる〜い雰囲気も自分好み。それでいてEDのスタッフロールが「鹿が走ってくる」というこれまたバカっぽい映像でマル。トドメに鹿の声が山寺宏一だもの。これは自分の接待用ドラマですか。


とにかく、「世にも」が好きな方にはオススメ出来る作品だと思う。玉木宏の常に夢見心地のような顔が「奇妙な世界」の住人の顔です。間違いなく。きっと数字は伸びないでしょうが(数字を取る要素が殆ど無いもんで)、個人的には自信を持って◎をつけたいと思います。