古畑任三郎復活の期待度

来年の年明けに三谷幸喜脚本の人気ドラマである「古畑任三郎」がスペシャル版として復帰することになったようで。

ゲスト(犯人役)に松本幸四郎ということで、キャスティングも豪華。余談ではあるが、これで松本一家の古畑シリーズ出演は3人目である(市川染五郎は犯人の落語家として、松たか子はマジシャン見習として)。そして松本幸四郎といえばこれまた「王様のレストラン」の主演もしていたということもあり、満を持しての登場というとこだろうか。

でまあ、もちろん古畑役として田村正和は出演するわけだけど、どうやら今泉慎太郎こと西村雅彦は出演しないようだ。それというのも、今回の事件の設定が「部下(要するに今泉と西園寺:アリキリ石井)が先に帰ってしまい、古畑が旅行先で一人で事件を解決する」ということだからだ。つまり、冒頭にちょっとだけ出演する可能性はあるが、本編にはほとんど絡んでこないことは確実である。

古畑任三郎といえば、古畑の「和製コロンボ」的な魅力もあるが(もう3作目あたりからはトリックとか謎解きとかはメインではなくなってきたようなきらいもあるが、それはそれで別に構わないと個人的に思う次第で)、部下である今泉刑事の人気が高いのもこのドラマの特徴である。今までシリーズは3作作られてきたが、2作目のおまけとして登場した深夜番組「刑事・今泉慎太郎」はかなりの人気を博した。そんな彼がなぜ出演を見送られることとなったのか?

一番の問題は、脚本の三谷幸喜と西村雅彦の確執ではないかと思われる。この二人はもともと「東京サンシャインボーイズ」という劇団の脚本家と役者という関係であり、三谷脚本の舞台はもちろん、そのテレビドラマのシリーズにすら必ずと言っていいほど西村は出演していた。しかし、あるときを境にぴったりとこの「三谷―西村」ラインが途絶えてしまったのだ。それ以降三谷脚本に西村は登場しない。来年の大河も三谷が脚本であるが、それにも一切登場しないであろう。

つまりは、何が原因かは知らんけども、仲違いがあったということだろう。となれば、今回の古畑シリーズにも西村が出演することはないのである。今回のSPは前作から5年も経つが、それまで何度も要望があったにもかかわらず古畑が復帰しなかったのは、ここの事情で折り合いが付かなかったということなのかも、と邪推をしたくもなる。

というわけで、部下がいない古畑である。たぶん、西園寺ことアリキリ石井もとばっちりを受けた形なのかもしれない。3作目に出演した唯一の「未遂」の犯人である津川雅彦とか、3作目に神出鬼没の準レギュラーとして出演していた八嶋智人などは今回も出演することを考えるとやっぱりそういう裏事情なのかも。

で、結論として「今泉抜きの古畑は面白いのか?」ということに関していえば「微妙」といわざるを得ない。なぜなら、前作(3作目)も、西園寺の登場によって今泉の重要性みたいなものが半分失われかけ、本当に「何のためにいるのかようわからん部下」(結局は事件解決のキーになったりもするのだが)になってしまい、その存在に不必要さすら感じさせる。それを今回は西園寺まで追っ払って(あれってもともと田村が「覚えるセリフが多くて難儀だ」というわがままから出来上がったキャラであるにもかかわらず)古畑が一人で事件を解決するのは、面白いのか自分にはちょっと判断がつかない。

前述したように、ミステリーとしての古畑という側面は作を追うごとに薄れつつあり、今回またその「ガチガチのミステリー」なんかに戻るとは思えないし(もともと三谷はこのドラマをコメディとして考えていたようではあるが)、どんな方向性を打ち出してくるのか、見てみるまではわからんです。ただ、過剰な期待はかけないほうが安全のような気はする。