嫉妬

リクエストも頂きましたので、リハビリがてらに「世にも奇妙な物語2016春の特別編」の感想でも書いてみますよ。

美人税

佐々木希主演。生まれながらに得をしている美人から税金を取るしか財政再建の道はない、として美人なほど課税される美人税が導入される。美人の主人公は税率20%も取られる超美人。しかし相続にも美人税がかかってしまい、税金逃れとしてブサイクを装ったところ、逮捕されてしまう。出所後も美人税を払おうとしたら、美の基準が大きく変化しておりブサイク呼ばわりされてしまう。


まあオチとしては妥当な落としどころで「世にも」のお手本のような作品だけれども、この作品の一番の肝は「佐々木希が自分を『美人』とした役に出演する」ところでしょう。いくらずーっと美人美人言われているとはいえ、「美人の役」ってのは抵抗あるような気がするんですけども、ちゃんと美人の役を演じてそして美人という佐々木希の度量。本当に税金払ってほしいくらいな作品でした。まあ眼福ですよ。

夢見る機械

窪田正孝主演。自分の母親を不意に突き飛ばしてしまうと機械だったことに気づく主人公。そのうち自分の周りが皆機械になっていることに気づく。「ユートピア配給会社」という謎の会社を尋ねると、周囲の人間は自ら自分の理想の夢を見させてくれる機械に入ってしまい、全てロボットに置き換わっていた。機械を破壊しロボットが動かなくなった状態で町へ出てみると、みな動きが止まっており、自分以外は全てロボットだったことに愕然とする。


「夢と気付かなければ、現実と何が違うのかね?」というセリフが重い。「アイアムアヒーロー」の作者花沢健吾のデビュー作「ルサンチマン」は、それこそ夢というか2次元の世界でしか希望を見いだせない、底辺の現実を生きる男の話であったが、そういう人間にこそ夢が必要か。うーん、考えさせられる。

通いの軍隊

西島秀俊主演。近所で戦争が行われている世界で、電車で戦地に赴く主人公。人の命を奪う軍隊ながらも、生活の隣に組み込まれるとそれが「日常」となり、危機感が希薄となる。子どもが出来たことを嬉しそうに「戦地」に報告しにくる妻、そしてそのまま空襲を受け帰らぬ人となる。そんな姿を見た主人公も、最後には爆撃されてしまう。


筒井康隆原作ということでいかにもブラックユーモアにあふれた作品。日常と戦争は地続きであり、実際の軍人もここまで牧歌的ではなくても、自分たちと同じような「日常」を過ごしているのだということを考えさせられる。そして自分には吉田戦車のマンガ「戦え!軍人くん」が頭をよぎる。

クイズのおっさん

松重豊高橋一生主演。クイズ番組優勝の副賞として「クイズ1年分」を手にした主人公(高橋)。クイズを出題するおっさん(松重)が1年間つきまとうことに戸惑いを覚えるも、孤独でうだつの上がらない日常におっさんが入り込むことで何か心の隙間を埋めていく。1年間クイズを出題し終えおっさんは去る。そして同じクイズ番組でまた優勝者が決まるとき、主人公に芽生えた感情は「嫉妬」であった。


随所にBL風味の描写があって腐った人は盛り上がっていたようですが、敢えて言うならば、クイズ好きには「理解できる」感情なんですよね、あれ。クイズ好きというのはクイズが出題され、それに答えるということで快感を得る人種ですから。もちろん劇中ではおっさんに対するある種の友情みたいなものが描かれているわけですけども、それを抜きにしても「1年間ずっと出題されていたクイズがなくなる」のは、喪失感以外の何物でもなく、そして「嫉妬」を覚えますよね。こんな感想を抱く人はあまりいないんでしょうけど。コメディ寄りの作品ですが、自分の中では「感動」系の作品だと思ってます。


ただ、クイズ好きも「クイズ王」レベルになると、実生活でも優秀な人が殆どですよね。だって、無駄な知識を詰め込むだけの脳の容量と、そのことに時間を割ける根気の持ち主ですから、大抵は実生活でもちゃんと出来る人。自分のような中途半端なレベルの人間が一番ダメです。


今回は2時間で5作ではなく4作ということで、見応えもあり全体的によく出来ていたと思います。半年に一度とかこだわらなくてもいいんで、「また次も見たいな!」と思わせるようなハイクオリティな作品を量産してほしいっす。