KOCアナザーサイド

NHK新人お笑い大賞」を見ました。


チョコレートプラネット、巨匠とキングオブコントのファイナリストが2組が出場し、両者ともKOCでやったネタをかけてきました。もちろん賞レース用に鍛え上げたネタでしょうから、インパクトには欠けてもやりますよね。2度見ても面白いですし。


しかし必ずしもKOCのようにはいかないのが賞レースの難しいところ。こちらは西川きよしをはじめとする「割と老人が多い審査員」です。斬新な切り口よりはやっぱりベタを好むわけです。あまりに斬新なものは笑えるどころか理解すら出来ないですから。個人的にはKOCなんかよりもよっぽど波乱の展開でしたが、KOC同様理解に苦しむ審査ではありませんでした。至極穏当な結果です。


巨匠が入っていたAブロックから感想を簡単に。

巨匠

KOCと同じオッサンのネタ。二度見ても素晴らしいです。発想が常人の3歩先を行っている。もちろん大抵の面白い芸人も常人の発想を超えているけども、彼らのこのネタはそれより先に行っているからこそ評価されるんだろうなあ。

ジグザグジギー

オンバト+で王者をもぎ取った席替えのネタ。キレイにまとめてあると思いきや、「健勘千(けんかんせん)」「志更穂(しさらぽ)」とか、かなり強引な名前が組み込まれているところが素晴らしい。無理やり作ってるんだからキレイにまとめたくなるところを、あえて有り得ない名前で強引に持ってくるところがセンスだよなあ。これも何度見ても笑えるいいネタ。

エル・カブキ

元ネタが分かりにくい漫才。この漫才は4分は短いよねえ。チョイスが絶妙に「分かりにくい」んだけど、それがただの「?」から、分からない加減が楽しくなってくるまでに時間がかかる。10分くらいあったら最後は爆笑になるんじゃないだろうか。そういう意味では「まだまだ見たいネタ」ではあった。

藤崎マーケット

ビンタ。一般的には「ラララライ」のイメージなんだろうが、もう関西ではバリバリ漫才やっていることは割と有名な話。披露した漫才もキレイにまとまっていて、腕のあるところを見せつけてくれた感じ。


この並びならやっぱり巨匠のネタがズバ抜けていると思うのだが、いかんせん老人には理解できない世界のような気もした。だから分かり易くバカだったジグザグジギーが勝つのかな、と思ったら巨匠が勝ちぬけて逆にちょっと驚いた。KOCでは実現しなかった「勝てば披露するはずの2本目」を見れるのかと思うとこの時点でちょっとワクワク。ただ、今回2本目に披露したネタがKOCでも披露するはずだったのかは不明なんだけど。


チョコプラが入っていたBブロックの感想も。

Yes-man

駅の忘れ物。新人お笑い大賞なのだが、40手前のコンビ。だからなのか、コントの型が古いですよね。それはこの大会で言えば長所でもあり短所でもあると思うが、たぶん他の賞レースでは勝てないだろうなとは思った。

アイロンヘッド

算数。小学生が今後自分の身に降りかかる算数の恐ろしさを説く、というコント。誰しも身に覚えがある体験を切り口にしているので、これはもう分かりやすい。笑いどころも明確。ただ自分には少し物足りなくは感じました。

タナからイケダ

バイトの辞め方。「大阪の漫才だなあ」と思った。好みの問題。いやもちろんつまらないことはなかったんだけど。良くも悪くも大阪の漫才。

チョコレートプラネット

KOCと同じ開封のネタ。文句なく面白い。


こんなもん個人的にはチョコプラの圧勝なのですが、そうならない難しさ、そして面白さ。自分には全然Bブロックのレベルが高いとは思わず(なぜならチョコプラが頭3つくらい抜けている印象だから)、他のコンビのネタはピンと来ないわけです。ただ、自分には退屈と感じたネタも審査員のお年寄りからすれば「分かりやすく面白い」ものに映ったのだろうということは理解できるわけです。だからこそ審査結果が割れ、アイロンヘッドが勝つというのも不思議な話ではない。単に自分の感覚と違うというだけ。特に井筒監督の感覚と自分はほぼ相容れないです。


でもそれは「自分が正しい」わけでも「井筒監督の感覚が古臭い」わけでもないです。ただの好みの問題。井筒監督が審査員に名前を連ねている以上、彼が面白いと思うネタが正義なのですから。そこに文句をつけるのはアホなんですよね。


それはともかく、勝ち残った巨匠とアイロンヘッドによる決勝。巨匠が決勝のネタで「金田一少年の事件簿」のパロディをやった時点で、審査員に面白さが伝わるはずもなく、アイロンヘッドが勝つことは自明でした。誤解のないように書けば、巨匠の金田一ネタは1本目のおじさんネタほどのインパクトも凄みもなく、またアイロンヘッドのネタは「一番怖いのっは時間を無駄に過ごすこと」というフレーズ、そして本当に無意味な踊りを何度も見せつけられるという中毒性において巨匠を上回っていたことから、優勝は「ごく自然な流れ」だったように思います。


今回の新人お笑い大賞は「もし巨匠がシソンヌに勝っていたら」というKOCのifを見られたような気がして面白かったです。そしたらたぶんチョコプラが王者だった。そんなチョコプラもこっちであっさり敗退するんだから、賞レースの難しさをつくづく感じます。