職業意識

情熱大陸」のmiwaが結構興味深かったです。


miwaといえば人気のシンガーソングライターである。個人的にはももクロちゃんとの共演であるところの「miwaクロ」の人という意識が強く、また提供曲である「いつか君が」であーりんが「マロン味のチョコ食べるの 期間限定切ない」と歌うところで癒されます。それはどうでもいい。


自分が番組を見て興味深かったところは「シンガーソングライターという職業に徹している」点だ。もちろんどの歌手だって職業に徹しているとは思うのだけど、なんだろう、同世代の女性歌手にありがちな「自分の気持ちを伝えたい」的なクソッタレ感が薄く、あくまで「請われているものを作り出す」という意識がヒシヒシ伝わってきて、そこらへん好感が持てます。


miwaは大学を卒業するときに、一般企業に就職するかどうか迷ったらしい。しかし最終的に「シンガーソングライター」に“就職した”(と実際にナレーションで表現されていた)のは、この仕事で食べていける目処が立ったからなのだろう。非常に冷静だ。


才能が抜群にある人は別ですが、結局プロとアマを峻別しているものは「需要があるものを供給できるかどうか」ということだと思うのです。自分のやりたいことと他人が求めているものが違うことは往々によくあること。そこに折り合いをつけるのが表現者としてのプロだと思うのですが、miwaはこと曲作りに関して「自分のやりたいこと」に対する優先度を低くしているような感じがします。これは表現者には珍しいタイプのような気がする。


自分もここで調子こいて文章書いてますけど、その目的は「自分が言いたいことを書いて伝える」ことだ。本当はもう少し気にしたほうがいいのかもしれないが、読み手がどう思っているかとか、読み手が何を望んでいるか、なんてことはほぼ気にしない。まあお金取ってないので当たり前っちゃあ当たり前なんですけど。


しかしお金を貰うとなれば、自分のやりたいことだけやってられるわけでもない。けど自分のやりたいことがしたい。この板挟みが表現者を悩ませる。一発当たった歌手はここらへんで勘違いして消えていくわけだけど、どうにもmiwaはそこらへんの感覚がドライというか、自分の作る楽曲を工業製品的な扱いをしている感じがするわけですよ。大量生産で良いものを提供する、ホームセンターの自社ブランド品みたいな感じとでもいうのか。


楽曲を「魂の表現」ではなく「仕事」と割り切る姿勢。もちろん極端にドライなわけではないだろうが、こういう姿勢そのものが昨今の歌手にしては珍しいなあとは思うわけだ。この姿勢は「歌うのが仕事。別に歌うの楽しくない」と言い切る前川清にちょっとだけ似ている。前川清のこの発言をネガティブに捉える人もいるのだろうが、個人的には「歌手という仕事をあくまで俯瞰から見ている」ように思えて、ちょっと面白い。miwaは「歌うのが楽しくない」とは思っていないと思うが、ちょっとだけ似た感覚があるのかなあ、とは思う。


身長は149cmで見た目は可愛らしい。何をしなくても売れる要素満載なmiwaではあるんだが、その恵まれた要素を過信せずに職業としての歌手に徹する姿はマジメでしたたかであり、ちょっとカッコいい。そりゃしっかり売れるわ、と思った。