人生がもう終わっている

ポリオワクチンは一人分約20円で購入できるらしい。


自分はこの手の話が好きではない。発展途上国の20円の価値と我々の20円の価値は等価ではなく、またその等価ではない、要するに我々からすれば「大したことのない金額」で救える命があるならば、それは救ってあげなければならないという話をしてくるわけですよね。間違ってはいない。しかしその20円を払うことで我々が「命を救ってあげている」というのはもっと傲慢な話であると思うわけですね。ニュアンスが上手く伝わるか難しいところですけども。


24時間テレビ」よろしく、「やらない偽善よりやる偽善」ではあると思うので、そうは言っても金を出さない自分のような人間よりも、進んで募金をする人のほうがそりゃ間違っていないとは思うのです。間違っているのは「そのお金は本当にワクチン購入に使われるんですかね」と思う自分の心ほうでしょう。


そんなエヴリデイ歪んだ心のオッサンなのですが、そんなオッサンでもさすがに「このお金があれば何人の子供の命が救えたのか……」と冷静に考えてしまったことが今日ありました。


ももクロマン」23個購入。2450円(税込)也。


ももクロマン」とはももいろクローバーZとロッテの人気菓子「ビックリマン」がコラボした商品。先日から関東コンビニ駅売り限定で発売している。かつて子供たちを熱狂させたビックリマンシールももクロがコラボし、彼女らがビックリマンシールになっているのである。ビックリマン世代の端くれでもある自分からすれば、こんなもん買うしかないことは分かっていたが、いざ買ってみると「よくもまあここまで買うよね」と思ってしまった。


当時のビックリマンチョコは1つ30円。普通の家庭に育った自分は、いわゆる「大人買い」であるところの箱買いなんか望むべくもなく、母親に事ある毎には「チョコ買ってくれ」とねだっては100円で3つ購入、しこしことシールを集めていたもんでした。そして開封されて手つかずのチョコだけがたまっていくわけです。さすがに捨てることはしませんでしたが、不良債権のようにたまっていったチョコは冷凍され少しづつ消費されるのでした。


そんなビックリマンも「ももクロ」とコラボすることで値段は一気に100円(税込105円)。今売っているレギュラーのビックリマンが80円なので、20円は余計にふんだくられている感満載ではありますが、そこに目を瞑るのが正しい武士(モノノフ)としての振る舞い。


シールは全部で22種類(シークレット含む)。すべて集めるには最低でも2300円は必要なわけですね。もっとも全てが1回で出るわけでは当然ないので、もっともっと費用がかかるわけです。だからいっそのこと30個入っている1箱を箱買いすれば、コンプリートにもぐんと近づく。だから自分は漠然と「子供のころにままならなかった箱買いを遂にするときが来たようだな」と漠然と思っていた。


しかし北海道のコンビニ、みんな「箱」では置いてないんだよね。


いやもちろん「箱」には入って売られているんだけども、それは陳列のために箱を開けた状態で売られているだけ。つまりは「1個ずつ買う」ことを想定された売り方でございます。東京のほうでは「箱買い」を前提にした売られ方をしているところまであるようだけども、そこらへんは北海道。熱狂具合がふつう。


そしてワタクシもそこそこいいオッサンなので、その箱を「全部くれ」という傲慢さが足りない。正直な話をすれば、全く恥ずかしいわけではない。そこらへんの羞恥心は20代のうちにどこかに忘れてきたらしい。じゃあなぜ買わないのかと言われれば、自分が買い占めることで商品が無くなってしまうのはさすがに「大人げない」と思ってしまうのですね。簡単に言うと、なんか申し訳ない。自分のようなオッサンが買い占めて誰かが買えないのはさすがに違うと思ってしまうので。


そんな妙な気持ちが交錯したもんで、いろいろな場所のコンビニを巡っては購入すること23個。16種類までは集まりました。あと6種類です。達成感と同時に「ポリオワクチンが120人分買えたな」と思ってしまう自分も存在します。あのとき出来なかった(準)大人買いを果たしたことによって得られたものは「俺の人生は大丈夫なのか」ということだけ。虚しいわけではない。自分で「大丈夫なのか」と確認しただけである。


もちろん答えは「大丈夫なわけがない。しかしもう仕方ないだろ」である。今更まっとうな生き方ができるわけじゃない。だからどこかで間違ってしまった人生を正しく生きようと思う。ポリオワクチン募金をするだけが正しい生き方ではないと自分に言い聞かせながら、子供のときに学んだ「ビックリマンチョコは冷凍保存すべし」を忠実に守り、冷凍保存パックに詰めて冷凍庫に寝かせるのでした。合掌。オチはない。