ブランクは存在しない

大改造!!劇的ビフォーアフター
所ジョージ司会の住宅リフォーム番組。


世の中には「ブーム」というものが存在し、そのブームの渦中には必ず「仕掛け人」が存在する。自然発生したブームというのはブームでありながらブームではない。誰かが仕掛けてこそはじめてブームといえるもんである。そんな定義はどうだっていいのだが、世の中に「リフォームブーム」を送り出したのがこの番組である。


今住んでいる住居にちょいと難がある。そんなお宅を取材して番組にする代わりにデザイナーの代金は取りません、つう話でもってリフォームの以前(ビフォー)と以後(アフター)を丸々紹介する。アフターのほうの出来映えには色々と思うところがあるが(こんな洒落た住宅の佇まいが生活空間でどれだけ保つことが出来るのかいな、とか)、改造する前のビフォーの住宅には「よくもまあこんなところに住んでいるよなあ」という感心が先立ち、これを見るだけでも番組を見る価値がある。


てなわけで、結構好きだったこの番組。2006年で一旦終了してしまう。番組の人気に翳りがあったことに加え、アスベストやら耐震偽装やらとリフォーム調査に時間がかかるようになり「番組にしたいけど間に合わない」という事情もあってレギュラー放送は終わったが、以降も特番として度々放送されていた。そして今回「シーズン2」と称して復活したのだ。


一旦終わった番組がまた復活するのは非常に珍しいケースだ。なぜなら「終了する番組」というのは、大抵人気が落ちたから終わるわけで、復活させる必要がない。まあ昨今なら製作費の削減という要素も絡んではくるが、基本的には人気がないから終わる。だから復活しない。当然の流れである。


しかしこの番組は決して人気がないから終わったというわけでもない。前述のように特番も放送されてきているわけだ。だからよその終了番組と比較するのもなかなか難しいところではあるが、それでも一旦終わった番組が復活するというのは珍しい。


似たようなケースで、「テコ入れ」という現象がある。番組タイトルは同じものの番組内容が一新され、事実上の新番組である場合。あるいは一部を変更したマイナーチェンジ。これは「2」とかをタイトルにつける場合に多く見られる。


今回のビフォーアフターも位置付けとしては一応「シーズン2」という扱いである。だから従来の放送と比べて何かマイナーチェンジがあっても不思議ではないのだが、変わったものといえば「数人のレギュラー出演者」と「エンディングテーマ」である。レギュラーと言ってもスタジオにいて必要だかそうでないんだか分からない人たちばかりで、司会の所ジョージ、解説の江口ともみ、そしてナレーションの加藤みどり共々健在であり、大きな変更点には当たらない。


一部出演者とエンディングテーマの変更。こんなもの普通に放送している番組が改変期をまたいで普通に行うことであり、マイナーチェンジでもテコ入れでもなんでもない。感覚としては「久々にまたレギュラーが始まったのに、先週まで普通に放送していた流れ」なのだ。ちゃんとリフォームした家のカウント(物件○○)も続いている。


スペシャルを挟んだとはいえ、3年のブランクを挟んで番組を復活させるとするならば何か前回にまではなかった要素などを新たに付け加えて、ちょっとしたパワーアップ感を漂わせたくもなりそうなもんだ。しかし今回復活した「ビフォーアフター」は恐ろしいまでに「そのまま」だった。一見「何も変えようと工夫しない手抜き」にも思えるが、自分には「何も変えなくても見てもらえる自信のあるクオリティ」という感じがした。自信があるからこそ何も変えない。番組の復活に際してはビフォーもアフターもないのだ、と。かっこいいではないか。


ま、この番組は短い時間でやらなければならないことが決まっているので、余計な時間を使うことが出来ないので「構成を動かしようがない」という事情も介在しているんだろうが、それにしても「このリフォームはどうなるか」の推理部分までも笑っちゃうくらいに「今までのまま」でした。あれはやっぱり必要なんだな。


本当は最初の15分くらい見て他の番組を見ようと思っていたのに、あまりに変化がないもんだから「どこか違うのでは?」と思いつつも内容が面白かったのでついつい最後まで見てしまった。完全に虜だ。復活してくれてありがとう。