50TA

「ロンドンハーツ」SPの狩野英孝どっきりが凄すぎました。テレ朝50周年特別番組の一本でしたがどっきりとしてはテレ朝史上、いやテレビ史上最高峰と言ってもいいくらいで、おそらくこれに匹敵するどっきりは向こう50年も登場しないのではないだろうか、というくらいに凄まじい面白さでした。


「ロンドンハーツ」という番組は過去にも名作どっきりを量産している。その核となるのが「田村淳(及びスタッフ)の天才的なまでに周到な仕掛け」と「面白さの為なら予算を厭わない姿勢」の2点に集約されると思う。どちらが欠けてもあの面白さは生まれない。また彼らの凄いところは、相手が誰であろうとその相手に合わせたどっきりをちゃんと仕掛けられること。「めちゃイケ」の濱口どっきりが名作であることは間違いないけども、あれは濱口だからこそ成立する世界であり、詰まるところ濱口に依るところが大きい「濱口頼み」とも言える。


しかし相手を選ばないロンハースタッフが狩野英孝という濱口に匹敵する、いやそれ以上の素材を発見したことで、濱口どっきりなど相手にならないような奇跡的な面白さのどっきりを仕上げてきた。はっきり言って笑わないところがなく、最初から最後まで笑いとおしだ。普段どっきりを仕掛けなれている田村淳が正体を隠して狩野に質問するときに思わず笑ってしまっていたことからも、このどっきりが、というより狩野の存在そのものがいかに面白いものであったかが分かる。


狩野がどっきりの素材として優れているのは、番組中何度も登場した言葉を使うと「素直でいい子」ということ。まず疑わないし、おだてられれば分かりやすく調子に乗るし否定しない。そして最大の特徴は本来ならばかなり可哀相なことをやられているんだけど、不思議と可哀相に思われないこと。どっきりは少しでも「可哀相」が入ると途端に笑えなくなるが、狩野に関しては自ら「勘違い」という最大の武器でもって一切そう思わなれない方向に持っていく。「勘違い」もひとつの才能であるということを身をもって証明していると言っていいだろう。


本当に全編通じて面白かったので、取り立てて書く事もない。いや、書く事だらけで何を書いていいか分からない。だから何も書かないという卑怯な方法を採ろうと思うが、ひとつだけ書いておきたいことがあるので書いておく。


狩野の「ペイチャンネルを見て作詞」だが、あれ他のミュージシャンもやってると思う。


もちろん狩野は実際にペイチャンネルを見て作詞していることがバレているのにも関わらず、翼がどうたらとウソをついているから笑いになる。でも本物のミュージシャンがたとえペイチャンネルとかAV見ながら作詞して、なんか適当なこと言い張ったとしてもそれは誰にも分からないもんなあ。ネタに困ったミュージシャンがいかにもやりそうなことなんじゃなかろうか。


ニセ対談の相手として登場した大友康平は狩野に対して「(狩野は)ミュージシャンよりミュージシャンだ」と淳に言わされていたが、あのどっきりの中で唯一狩野がミュージシャンっぽいなあと思ったのが自分はこのペイチャンネルの部分でした。もっとも最近のミュージシャンはこういう秘話も隠さず発表してしまうので、そういうのを変に隠すあたりが狩野のまがい物感を醸している気もするけど。


あと「愛しさと切なさを兼ね備えてる男子」は名フレーズだと思います。誰しもが篠原涼子の曲を思い浮かべてしまう言葉選びに才能の無さが垣間見えるあたりも含めて。


50TA」のお披露目ライブの中で、狩野は芸人を辞めて歌手一本で行くと宣言した。それほど本気だった(そして本気で売れると思っていた)わけだがそれはどうでもよく、自分はいっそのこと本当にこれで芸人を辞めても良かったんじゃないかと思う。なぜなら、断言してしまうが狩野が今後芸人を続けてもこのドッキリ以上の面白さを生み出すことは出来ないと思うからだ。だったらこの歴史に残るドッキリで華々しく芸人を引退したほうが、それこそ伝説になるんじゃないかなあと当人の思惑無関係で思ったりしたのでした。


とりあえず大友康平に謝るまでがこのドッキリだと思ってるんで、そちらを楽しみに待つ。