どうかしてる

泰葉の記者会見が支離滅裂を通り越してちょっとヤバかったというのは、あの記者会見のVTRを見た人ならば誰もが感じたことだろう。何がどうヤバいという説明がいらない、正真正銘の「ヤバい」。元々エキセントリックな人ではあったのだろうけど、マズい具合にネジが外れてしまったようで、もうどう手をつけていいのか判らない状態。


そもそも何のための記者会見だったのかも分からない人が多いと思う。そりゃそうだ。元々は泰葉がブログで元夫である春風亭小朝のことを「金髪豚野郎」と罵ったり、谷村新司の所属事務所社長のことを攻撃したりという「ちょっとどうかしてる」感じを面白おかしく報道したのが原因で、泰葉の心に変な火をつけてしまったからこうなった。小朝が悪いわけでもなく、泰葉が悪いわけでもない。泰葉はあの記者会見が「ちょっとどうかしてる」だけで、ああなったことに関し全て泰葉が悪いとは思わない。おそらく半分以上はマスコミのせいだ。


当然のことながら、マスコミはそれを狙っていたはずだ。泰葉をたきつければ思ったとおりに泰葉は燃えてくれる。現にそうなった。しかし泰葉はマスコミの想像以上に燃え具合が良かったのだ。しかし泰葉が想像以上に燃え上がるのを見て、マスコミはみんな怖くなった。高校生が公園で花火をやっててなんか燃えそうなものを発見して、高校生特有の悪ノリで「これ花火で燃やしちゃおうぜー」とか言って火をつけたら、その物体が思った以上に燃えがよくて、高校生は怖くなって燃えたのもほったらかしにしたまま逃げた感じ。マスコミは泰葉燃やし逃げである。


さんざん泰葉を燃やすだけ燃やしておいて処分しない。あの記者会見で泰葉を泣かせるような質問をしておいて、実際に泣き出し「撮るなー」と記者会見やってるのに理不尽なこと言い出したり、記者会見の最後に上手いんだか慶應大学で売ってもらった薬物に手を染めているんだか分からない変な謎かけを披露した泰葉に対する取材記者の「こいつどうしたらいいんだ……」という空気は、一般人ならば至極当然のリアクションではあるけども、あろうことに自分たちが燃やした相手に対しての反応としては最悪である。前述の花火に擬えれば分かりやすいが、おまえらは火をつけた責任があるんだから、泰葉の珍奇な行動にも責任をもって処分しなければならない。何勝手に逃げてるんだ、と。


取材記者のみならず、これを受けるワイドショーも殆どが及び腰。やっぱり真っ当な人間ならばあの記者会見を見て「なるべく関わりたくない」と思うのは当然だし、あんなものを見せられてもコメントのしようがないのだが、しかし自分たちの仲間が燃やした以上処分する責任はある。司会者ならびコメンテータは「自分たちが燃やしたくて燃やしたんじゃないんだけどな……」とは思っているんだろうが、テレビの向こう側に存在する以上は同罪だ。間違っても「なんでこんな事取り上げてるんだろう」なんて顔はしちゃいかん。本当にそう思ってるのは、最初から何の興味もない泰葉騒動を見せ付けられている視聴者なのだから。


現象としては数年前のミッチーサッチー騒動に似ている。当事者同士のしょうもない喧嘩。視聴者に利害が全くないにも関わらず延々と垂れ流し続けられる。あの頃はなぜかしらワイドショーもマスコミもこの騒動を「悪ノリ」と分かりながらも楽しむことが出来、そしてワイドショー内で処分できていたように思う。ミッチーサッチーというゲテモノをきっちりゲテモノ扱いして調理し、そのゲテモノを視聴者も食べていた。しかし今回の泰葉に関しては、ワイドショーが自分で拾ってきたのに途中でワイドショーが諦めて捨てた。勝手に拾われた泰葉も、そして勝手に目の前に捨てられた視聴者もこれほど迷惑なことはない。


ただ、マスコミの誤算も一応擁護しておくと、本当に「思ったよりはるかによく燃えた」んだろうという気はする。ミッチーサッチー程度に程よく醜ければいくらでも貶しようはあるんだけども、泰葉のように「ちょっとどうかしてる」のレベルは、気軽に茶化せないヤバさ(精神病んでるのでは?という疑い)を孕んでいるのがこっちにもヒシヒシ伝わってくるわけで、一歩間違うと取り返しのつかない領域に足を踏み入れてしまう。そりゃ及び腰にもなる。処分しきれない。


でも昔のワイドショーなら平気で「この人どうかしてますよね」と言ってた気がするんだ。それがワイドショーのせめてものエンタテインメントであり責任じゃないのか。「どうかしてる」という状態だけは記者会見の映像を流すことで提供するのに、ワイドショーのコメントで誰も「どうかしてる」と言わない。泰葉の行動に理由を求めたりしてお茶を濁そうとするだけ。これって責任放棄だろ。そんなものはどうでもいい。視聴者が聞きたいのは、あのVTRを見たら誰もが思う「どうかしてる」の一言なんじゃないのか。その一言が言えないのに、あの記者会見のVTRを平気で流すほうがどうかしてる。だったら最初から扱うべきじゃない。


泰葉が予想以上に燃えてしまったことは不運だった。しかし燃やした以上はその責任として「どうかしてる」という結論でもって騒動を一蹴する(つまりはそもそも取材したことの落とし前を「どうかしてる」発言でカタをつける)くらいの気概は見せるべきだ。泰葉は単に「よく燃える素材」だっただけで、素材そのものに罪はない。燃やしたほうが悪いに決まってて、その火災のとばっちりを食らったのは紛れもなく視聴者。そのくせマスコミは「もうついていけません」と被害者ヅラで泰葉を突き放すのだから始末に終えない。


なんかこう、今回の騒動は泰葉の「どうかしてる」感じによってマスコミのやった悪さを全て誤魔化されている感じがしてならんのです。この点に関して泰葉は気の毒だ。かといって泰葉が「どうかしてる」ことは覆らないのだけど。やっぱり言わなきゃウソだよな、「どうかしてる」。