ヌルヌル

いま日本で「ヌルヌル」といえば格闘家の秋山成勲のことを指します。


2年前の大晦日桜庭和志と戦った際に、下半身がクリームによってヌルヌルしていた。桜庭が下半身を捕らえにいこうとしても、そのクリームによって滑って捕えられない。桜庭は「すっごい滑るよ!」という叫びとともに必死にヌルヌルをアピールするも、審判の意図的とも取れる無視によって試合は続行。結果的に桜庭は秋山にボコボコにされるも、ネットを中心に疑問の声が噴出し、結果的に試合は無効となり、秋山には厳しい処罰が下った。さらに秋山といえば柔道をやっていたときにも柔道着が妙にヌルヌルするという疑惑もあったりと、まあヌルヌルに関して話題に事欠かない存在であると。


しかし今回自分が「ヌルヌル」としたいのは秋山ではなく、火曜に放送された「カスペ」の「ギャル曽根世界を喰う」と題された番組である。これが近年稀に見るヌルさだったと思う。10分くらいしか見てないけどそう思った。


番組内容は、ギャル曽根が中国やら台湾やらを巡って大食いをするという、旅番組と大食いが混じったようなもの。土曜の昼間に放送していれば「まあ、こんなヌルさですよね」で片付けられるものであるが、火曜の19時から2時間も使って放送するような内容では決してない。現地の人がギャル曽根に大食い勝負を仕掛けるていになってはいるが、単に「これだけ食べられるかな?」とコース料理を次々と出していくだけ。「元祖大食い選手権」のように実際勝負をするでもなく、ただ単にギャル曽根が行く先々で食べるだけ。勝負の要素はゼロ。


しかも一応勝負のていなので勝敗らしきものを決めるのだが、どう考えてもギャル曽根は負けない。最初から負けるわけがないと分かっているのを承知でつける勝敗なんて何の意味があるのだろうか。いちいち鬱陶しい。


でもって、その勝負を仕掛ける人たちはギャル曽根のことを知らないわけで、ギャル曽根がえらく食べることに驚くわけだ。そりゃ海外の人からすればギャル曽根が食べまくるのは驚くのだろうが、さんざんギャル曽根が食べているところを見せ付けられている日本人からすれば、毎度のように驚く外人たちに逆にうんざりである。いいかげんイチイチ驚かないでくれ、と。もう知ってるんだ、と。


やるせなすの中村豪が現場の仕切りで同行していたので、「ああ、こりゃナベプロの制作なんだろうなあ」と思ったらやっぱりそうだった。言うまでもなくギャル曽根も中村もナベプロ所属。ナベプロの制作だからこそ、あそこまでヌルい番組を堂々と放送するわけだ。今時誰が楽しみにしているのか不明である「かくし芸大会」を制作しているナベプロが作るだけあるな、としみじみ思える。


そろそろギャル曽根の食べっぷりにも飽きが来ている様な気がする。大食い好きの自分ですら昨今のギャル曽根には消耗を感じたので勝手に世間もそう思っていると推定したが、もしかすると世間はまだ飽きてないのかもしれない。しかし、今回のような劇的にヌルい番組でただギャル曽根が当たり前のように大食いをしているだけの番組を放送されたら、いくらギャル曽根が好きな人でも「ちょっとなあ…」となるんじゃないだろうか。今までギャル曽根を見ていてもそう思わなかった人に「実は飽きていた」ということを気付かせてしまう番組ではなかったか。


ナベプロが自社のタレントを使って大々的に番組を作るのは別に構わない。そこに全くニーズがなくても(全くニーズがないわけではないだろうけど)、金を出している人がそれでいいのならば問題ないのである。しかし、自社の売れているタレントを自ら使い物にならなくさせる番組を作っているのでは全く意味が分からない。あの番組を見て「面白い」と思えるならばそれはそれで問題だが、あの番組がつまらなくてヌルい上に、ギャル曽根の大食いに潜在的に飽きが来ていることを気付かせてしまう番組だったことが一番問題ではなかったか。そのことにナベプロは気付いていたか?


少なくとも自分はこの番組で、自分がギャル曽根に飽きていることに気が付いてしまった。所属事務所制作の番組に気付かされるとはなんとも皮肉な話ではあるが仕方ない。