その決断は本物か

事あるごとに「ヒマになりたい」とか「自由な時間がほしい」とか口にする人って結構多い。自分もそのうちの一人であるが、自分の場合は本当にヒマな上にそのようなセリフを吐くので「おめえどれだけヒマなら気が済むんだ」と大体罵り返される。そんなもんだ。

しかしまあ、一般的に「忙しい」とされている人もよくこのようなセリフを吐くのである。まあ気持ちは分からないでもない。時間が忙殺されるという経験は自分だって人生のうちに何度かある経験であるし、そのような時には本当に時間ってなんてこんなに短いんだろうと嘆きたくなる気持ちもある。

でも恒常的に忙しい人っていうのは、忙しいのが「普通」であるから、いざヒマになったところで何をしていいのか分からんという状態によく陥るようだ。つまりは、今まで目的に向かって突っ走ればよかったのに、その目標を急に失うことで迷走してしまうんだなぁ。

芸能人にも、そういうことがままある。それは、芸能活動休止とか、引退とか。

まあここまで書けば何がいいたいのかは分かると思うが、ZONEのリーダーTAKAYOが芸能活動を一切引退するようだ。事務所とのマネジメント契約が年内いっぱいということは、今後の活動はまったく考えていないということだろう。そんでもって、道内の大学(今のうちに決まっているということは私大なんだろう)に進学するそうだ。

一見堅実に見えるこの卒業、別に異議を唱えるつもりはない。本人が確固たる決心を持ってやめるのだから引きとめても無駄であろう。

でもその「確固たる決心」というのは、案外グラつきやすいものである。

今の地位に甘んじているのは決して楽ではないのかもしれないが、道が見えているぶんまだ「実際は楽」なのである。逆に「自分の時間が持ちたい」という理由でそのレールを外れて、自分のレールを引くのがどれだけ難しいのかはおそらく「若いうちに一度成功を収めてしまった」人間には想像がつかないかもしれない。

別にTAKAYOが努力をしてないだなんて思っていないが、実際「脱退→その後」というケースをモーニング娘。というカテゴリだけでも何人も見てきているわけだが、決して順風満帆なわけではない人もいる。「勉強がしたい」と脱退しても学校を辞めたり、「シンガーソングライターの勉強がしたい」とまったくスキルの上積みも覚悟もないまま芸能界に戻ってきて返り討ちにあった人もいる。それらを一笑に附すのは簡単なことであるが、自分たちの人生だってステージは違うが同じような経験をしている。安易に笑えまい。

つまりは、人間の決意などあっさり翻る。

もう芸能界の表舞台に立つことはないのかもしれないが、「ああ、やっぱりやめるんじゃなかった」とだけは思わないように、年末いっぱいがんばって活動してもらいたいもんだ。

最後に、今日本当は書こうと思っていた文章とまるっきり別の文章を書いた人間が、えらそうに「決断は本物か」なんて書いてることも申し添えておこう。決断は翻るよ。あっさり。