たけし映画を見る

土曜の夜中に2本の映画が放映されてました。

一本は「クイーンコング」、そしてもう一本は「みんな〜やってるか!」である。前者は「キングコング」が作られた後にイタリアで作られたが長い間お蔵入りになっていて、数年前やっと日の目を見た作品。内容も酷いけども、日本語版の吹き替えは輪をかけてやりたい放題。主人公の男の吹き替えが映画の口に合わせることなく言いたい放題。挨拶で「おっは〜」とか言われた日にはもうダメでした。早々にリタイア。

さて、もう一本の「みんな〜やってるか!」はいまや巨匠となった北野武監督作品である。今まで北野武監督作品の映画は見たことがなく、果たしてどのような映画なのか若干わくわくしながら見たのである。しかしまあ、言っては何だが駄作。

誤解の無いように言えば、他の北野作品はともかく、「みんな〜やってるか!」に関して言えば最悪。あんな映画劇場で見てたら間違いなく「金返せ!」と紛糾したくなるような内容である。ストーリーとしてはある日カーセックスがしたくなった男がその目的を達成するために奔走する話である、と書けばなんとなくストーリーはあるように感じるかもしれないけども、その実、中身は殆ど無いに等しい。

主演はダンカン。つまらないのは別にダンカンが悪いわけでもない。きっと、監督が悪い。そして脚本が悪い。どちらもたけしなんだけど。とにかく、あの薄ら寒さはない。1994年、つまり今から9年前の平成6年に上映されているのだが、あの作品が平成の世の中に出ていたと思うと、なんとも言えない「ガックシ」感が頭の中をよぎる。いくら90年代とはいえ、あんなものが上映されていた奇跡。

それでも、「最後には大オチがあるんだろう」と殆ど眠りについた状態でオチを見るも、オチも最低。全然ダメ。あんな映画は正直たけしにしか撮れないだろね。他の人なら恥ずかしくて世に出せないだろ、あれは。

しかし、見ているうちに「この薄ら寒さは見覚えがあるかもしれない」ことに気がついた。そう、それは「神出鬼没タケシムケン」でたけし(と志村)が見せた、薄ら寒いコントと同じ感じだった。「タケシムケン」といえば、テレ朝でやってたバラエティであるが、2大お笑い巨匠が手を組んだ甲斐もなくあっさりと終了した。それはまあ、やはりこの映画と同様の薄ら寒さを感じたからかもしれない。

あれが昭和に放送されていたらまだよかったのかもしれない。ただ、明らかに前世紀の遺物であるようなコントまがいの映画は、誰が見ても評価するに値しないのではなかろうか。確かに実験作は必要なのかもしれないが、それにしても酷い。とにかく、「酷い」としか言いようがないくらい酷い。

海外でたけしの評価が高いのは、きっとこの作品を見ていないからであろう。たけしの最新作の「座頭市」も、この映画の中でパロディとして扱っているのだが、その内容は目の見えない座頭市が自分の仕込み杖の代わりに肥え柄杓を掴んで敵にクソをばらまくという古典的な笑いである。しかも今の感覚からすればやはり薄ら寒い。少なくとも映画館に金を払って見るようなものではない。

たけしの「座頭市」を見て面白いと思った人は、ちゃんとこの「肥え柄杓座頭市」を見てからもう一度見るといい。きっとバカらしくなると思う。今まで日本で評価されなかった理由は、それなりにあるような気がしてならない日曜の朝方だった(見終わったらすでに4時)。

最後にひとつ面白かった点を挙げれば、城南電気の故宮路社長が出演してたとこかなぁ。あとオッパイが3回出てきます。この3回のためだけに見るには相当に厳しい映画。きっと、もうたけし映画は見ないような気がする。それが名作であっても。