新橋ミュージックホール

NHKの朝ドラ「おちょやん」が面白くないですねえ。

 

始まった時から「あー、これはヤバそうなやつだな」という感じはありましたが、そこから持ち直すドラマもたまにありますが、大体は下降線をくだり徐々に面白くなさが増していきます。「おちょやん」はまさにこれ。類似性が指摘される「わろてんか」、名倉潤ゲームしかやることがなかった「べっぴんさん」レベルでヤバいです。自己ワースト「ファイト」ほどではありませんが、まあまあヤバいやつです。

nageyarism.hatenablog.com

主演の杉崎花ちゃんの素晴らしさは語るまでもないのですが、主演が素晴らしいのとドラマが素晴らしいのは全く別。「べっぴんさん」の芳根京子さんも「ファイト」本仮屋ユイカさんも素晴らしい女優ですが、ドラマが面白いことの担保にはなりません。逆に言えば主演が素晴らしい(あるいは出演者が素晴らしい)ので最後までなんとなく見てしまうことに朝ドラらしさがあるとも言えます。

 

だから「おちょやん」も既に録画を消化するのが少々ダルい感じになっていますが、それでも惰性で見てしまうのです。自分の中で朝ドラは一回見なくなるとまたしばらく見なくなりそうな気がするのです。次の次の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」は期待しているので、そこまでは見たい。

 

「おちょやん」のつまらなさは色々指摘されておりますが、その中でもよく見るのが「父親のクズっぷりがキツい」というもの。トータス松本演じる父親テルヲが借金ばかりこしらえて主人公の千代(杉崎)に迷惑ばかりかける、というもの。千代が奉公に出されるきっかけになった、だけだったならまだしも、奉公先の大阪でも、そして現在進行形の京都でも千代に迷惑をかけ続ける父親にうんざり、という声は分からんでもない。

 

自分もトータス松本が出てくるたびに「ああ、またか」とげんなりするのですが、ちょっとだけ他の人が感じている理由と違う部分があるような気がします。それは「トータス松本の演技が苦手」というもの。

 

日本の知の集合体こと「ヤフーコメント」を見ると、「父親が出てくるたびにイヤな気分になるが、それはイヤな父親を演じているトータス松本の演技が素晴らしいからだ」みたいなコメントを見かける。自分はそれを見て「本当かよ」と思う。だって、トータス松本の演技って上手いか?

 

こんなことを書けばアンチトータス松本だと思われるのかもしれないが、自分は20年来のウルフルズのファンなのです。アンチなわけがない。めちゃくちゃ好きです。でもそれはウルフルズが好きなのであり、トータス松本全肯定の好きではないことも添えなければいけない。

 

自分はウルフルズを追いかけていますので、かつてトータス松本が歌を辞めて演技一本で勝負しようか、と思いかけていたことを知っています。そのきっかけになる映画が「UDON」なのですが、どのくらいの人が見たでしょうか。「踊る大捜査線THE MOVIE」で特大ヒットを飛ばしたあとの本広克行監督がメガホンを取ったのでご存じの方も多いかもしれません。映画はつまらないです。

 

「UDON」はユースケサンタマリアと小西真奈美が主演で、トータスは3番手だったと記憶しています。そこでバリバリ演技しているのですが、自分は「下手ではないけど、なんか演技が鼻につく」と思っていました。これで演技一本でやれるのかよ、と思いました。映画そのものも最後にトータスに唐突に代表曲「バンザイ」を歌わせたりと、いいところがひとつもないです。

 

そして自分は当時の日テレ月10枠(読売テレビが制作していた枠)で最低視聴率を叩き出し、早々に打ち切りになった「ギンザの恋」も見ているのです。トータス松本主演の最初で最後のドラマです。中村玉緒と親子の役でした。今となっては視聴率5%前後のドラマなど珍しくもないですが、2002年当時はドラマで10%を切るなんてのは爆死もいいところでした。

 

自分はこのドラマに関して殆ど何も覚えてませんが、少なくとも「ドラマそのものがめちゃくちゃつまらない」とは思っていなかったと思います(もちろん面白いとも思っていなかったと思いますが)。ただ、やっぱり記憶におぼろげに残っているのは「トータス松本の演技はなあ」である。

 

「いだてん」では「前畑ガンバレ」の実況で有名な河西三省アナウンサーを演じていましたが、ここにはあまり違和感がなかった。おそらくトータスに余計な演技をさせなかったからだと思います。だから使い方によっては悪くない。けど、ドラマの中で目立つ役になってしまうと、途端にそのエグみが出てくる。

 

そして時は流れ2021、やっぱりテレビの前で見るトータス松本の演技は「いやあ、なんだかなあ」なのだ。役柄のクズっぷりがどうこう、ではなくて、単にトータス松本の演技のエグみがそのままエグみとして伝わってくる。だから、出てくるたびに自分は「またかあ」と思ってしまいます。

 

これは単に好みの問題であり、もちろんトータス松本の演技を評価する人がいても不思議ではありません。ただ、長いことトータス松本の演技をちょいちょい眺めていた自分としては「そんなわけあるかよ」とは思うだけです。

 

「おちょやん」が面白くないのはトータス松本のせい「だけ」ではありません。そこは誤解のないようにしたい。トータス松本の役が別の人だったとしても、それはそれできっちりつまらないはずですから。これは冗談でもなんでもなく、タイトルとあらすじだけを見たらふざけているとしか思えない「江戸モワゼル」のほうが全然面白いですから。制作しているのは「ギンザの恋」で爆死した読売テレビなんですけどね。