ああ「世にも」よ

世にも奇妙な物語24冬の特別編」の感想を。

 

フリー

清野菜名主演。web広告を作る主人公(清野)。締め切りに追われ、怪しげなフリー素材のおじさんを使うと、そこから素材のおじさんにつきまとわれるようになる。調べていくうちに、そのおじさんが仕事の対価を支払われずに失踪したことが分かり、無念を晴らすべくおじさんに対価を支払わなかった会社を告発。おじさんは現れなくなるが、そのまま主人公もフリー素材の世界に閉じ込められてしまう。

 

最終的に自分も「その世界」に取り込まれてしまう系は「世にも」の王道。しかし肝心のホラー部分がまあ大して面白くもなく、そして「おじさんが急に現れるのが怖い」は完全に「水曜日のダウンタウン」のそれであり、なんか小さく悪くまとまった作品になりましたな。

 

第1回田中家父親オーディション

アンガールズ田中主演。仕事で毎日帰宅も遅く、家族サービスもままならない主人公(田中)。ある日帰宅すると、家族から「父親オーディション」の開催を告げられる。オーディションの開催を不服に思いつつも、参加することで自分の家族に対する努力が足りなかったことに気づく。オーディションの結果合格し安堵するも、直後に家族の新メンバーオーディションを告げられる。

 

これも「なんか面白くなりそうだったけど、さほど面白くもなく、そしてオチも大したことない」という非常にがっかり仕様。アンガールズ田中が主演というのはよかったんだけど、そこでもう満足してしまったんだろうな作る側は。

 

City Lives

佐藤勝利主演。密着ロケで「街」を訪れた佐藤(本人役)。「街」とは都市に擬態する動物であり、佐藤と密着スタッフは「街」の機嫌を損ねたのか、街の中に取り残されてしまう。取材している中で街が今まで見たことない動きを見せたことで、街そのものが死んでしまうかもしれない措置をとることになったが、佐藤は街が佐藤の音楽を欲していたことに気づき、音楽の力でもって街と共鳴し、無事脱出することに成功する。

 

いやー、これはなんだろうな。「街そのものが意志を持ち、変化しつづける」という比喩をファンタジー的に仕上げて、映像も良かったのに、オチが酷い。なんで佐藤が本人役でなければならなかったのかの答えでしかない。ちょっとうまくやれば傑作だったのかもしれないだけに、これはもったいない。佐藤が悪いわけではないのだけど、フジテレビがよくやる「何かに忖度したやーつ」じゃないのか。

 

調べてみると、どうやら元々はフジテレビが深夜で連ドラとして放送されたもので、今回はその続編的な立ち位置らしい。どうりで設定やCGが作りこまれているわけだ。じゃあそっちを放送してくれよ。たまにこういうことやるけど、「知らん!」とおいでやす小田ばりの声が出る。

 

ああ祖国よ

尾上松也主演。原作は星新一。アフリカのよく分からない国に宣戦布告された日本。テレビ局がその宣戦布告をスクープし、その番組を担当することになった主人公(尾上)。最初はなんだかよく分からない状況を番組にしていたが、次第にテレビ局がバラエティノリを暴走。政府の対応もひどく、最終的には賠償金1億ドルを支払うということで決着。これで万事解決と思いきや、また別の国が宣戦布告を仕掛けてくる。

 

星新一が1969年に上梓した作品。「金で解決すりゃあいいと思っている」「平和ボケしていて、当事者意識が全くない」「テレビは無責任に数字が稼げればいいと思っている」など、当時の日本の状況の皮肉の塊のような作品であるが、その皮肉が現代においてもっと酷い状況になっており、なんなら「無責任に他人の新居を報道して怒られる」というもっとも酷いかもしれないテレビ局がドラマとして流す地獄のような時間。星新一も「おいおい、55年後はこの時よりもっと酷いのかよ」と思っているんじゃないか。そういう意味で価値はあるような気がするが、制作側がどんな気持ちで作っていたのかを「世にも」でドラマ化してほしいわ。自分なら発狂しそう。

 

まあ「世にも」なので、どんなものが出てきても見ますけども、年末のクソ忙しいときにわざわざ時間割いて見るほどのもんではありませんでしたね。あとタモリに「来年は35周年ですね」とか言わすなよ。長くやってることに価値を見出すなって。それをタモリに言わすなって。がっかりすることの多い年末でした。たぶん年内の更新もこれで最後。もっと景気のいいネタで終わりたかったなあ。よいお年を。