ググるカス

「ロンドンハーツ」でお笑い芸人の下の名前が思い出せるか、つうクイズをやってましてですね。

 

企画そのものはひどく単純。ふだん「コンビ名+苗字」で呼ばれたり認識されたりすることが多い芸人の下の名前がちゃんと言えるか、というだけのもの。たとえば第1問はオードリー春日の下の名前を当てるというもの。正解は「俊彰(としあき)」なのだけども、それを知っていて偉いということでも、それを知らなかったから恥ずかしいということもない、単に「それ知ってるの覚えてるの」という他愛のない企画である。ただ出演している芸人にはそこに人間関係が付属するので、視聴者とは少し違う意味が出てくるのだけど、まあそれだけ。

 

こういう「知っていても何の役にも立たない」系のクイズが自分はとても好きだ。特に芸人の下の名前なんてのは自分の得意ジャンルであり、これはもう完全に勝負だと思って全部やってみた。前述第1問春日は楽勝で正解。第2問FUJIWARA藤本の名前「敏史(としふみ)」も難なく正解。

 

しかし第3問TKO木下の名前が全然思い出せない。正解は「隆行(たかゆき)」なのだけど、聞いてようやく「あー、字面で見た事ある」くらいのレベルで全然ダメ。あっさり全問正解の夢途絶える。第4問ダチョウ倶楽部のリーダー肥後の名前「克広(かつひろ)」は正解。第5問ザキヤマことアンタッチャブル山崎の名前「弘也(ひろなり)」も正解。しかし第6問TKO木本でまた分からない。正解は「武宏(たけひろ)」で、「たけナントカ」までは分かったけどここが限界。結局終わってみればTKO二人とも分からないだけ、というTKOに対する愛がないことだけが分かって終わった。

 

とまあ、TKOへの愛がないから何なのだ、というだけの話なのだけども、これってそもそも「そういうだけの企画」なのだからそれでいいのだ。んでまあこの話を無邪気に書こうと思って、念のため名前を検索して確認しようと思ったわけです。すると検索候補にまあ出るわ出るわ「〇〇 名前」が。これはどういうことかといえば、検索した人がたくさんいたということですね。

 

そもそもこんな検索候補が出ることがヘンなのだ。単にその芸人のことを知りたければ、たとえば「オードリー 春日」と検索すれば済むわけだ。わざわざ「名前」と検索する必要はない。もっと言えば名前を知りたい場合だって「オードリー春日 名前」と入れなくても名前くらいは出てくる。なんでこんなお世辞にも賢いと言えない検索が候補に出てくるのか、と考えればそれはやはり「クイズで名前を知りたい人が検索した」ということに他ならないだろう。

 

かくいう自分も検索しているわけですが、これはあくまで「確認のため」である。番組放送中(といっても録画だけど)に検索したわけではない。番組中もクイズを楽しむために「検索しないで考えてみよう」みたいな表示が出ていたわけだ。そりゃそうだ。しかしそんな注意を無視して名前を検索する人間の多いこと多いこと。いやあどうかしてるね。

 

クイズの答えが分からないから検索する、というのはよくある話だろう。単にクイズの答えが早く知りたい、というだけの話。たとえば雑学系のクイズの場合であれば調べることで「ためになる」し、ちょっとでも早く答えが知りたいというのは分からないわけじゃない。

 

しかし今回のクイズは「お笑い芸人の下の名前」である。早く知ってどうする。いや、そもそも知ってどうする。そして知ったから何なのだ。楽しいか。楽しくないな。じゃあなぜ早く知る意味がある。困っている芸人より少しでも早く知ったことで優越感を味わうのか。そもそもそんなものあるか?じゃあ何のため。おそらく、おそらくではあるが「分からないことがあったら脊髄反射的に検索して答えをすぐ知ろうとする」だけの話じゃないだろうか。何の考えもなしに「ググる」ということをしているのだろう。

 

知らないことを知ろうとするときにするのは望遠鏡を覗きこむことではなく、グーグルで検索すること。特に若者にはそういうクセがついているのだと思う。決して悪いことではないだろう。しかし「考えることそのものを要求されている」ものにおいて、それを放棄して、いや放棄しているとも実感できずに「ただ調べる」クセがついているのは、これはちょっと怖くないだろうか。お笑い芸人の下の名前を番組よりちょっと先に知ることは、いったい何だというのか、ということすら考えずに検索していることに気づいているのか。

 

はっきり言えば、こんなもの知ろうと知るまいと、本当に何の影響もない。だからこそ「あれ、なんだったっけ」と考えることそのものに面白さがあるのに、そんなことをひとつも考えずにバカの一つ覚えですぐ検索して答えを知る。ちょっとの時間考えることをしないのも怖いし、考えることを放棄して得られるものは「他人より数十秒早いすっきり感」だけしかないのも怖い。そんなに我慢できないか。我慢せずに先に知ってこの後どう番組楽しむつもりなのか。そんなに答えを急いでどうするのか。深夜にロンハー見ているやつらが何を急いでいるのか。全てひっくるめて、「怖い」と自分は思う。

 

まあ自分もネットの検索には大変お世話になっているので、検索することそのものを揶揄することは出来ない。しかし、しかしだ。あれだけ分かりやすく「検索せずに考えてみよう」とか表示してくれているのに、検索して答えを先に知ろうとする人がたくさんいるであろうことを考えるにつけ、そりゃあテレビ作る側は視聴者を軽んじるわけだよ、とは思った。なんかもう考えれば考えるほど虚しい。こういう気持ちを何と表現したらいいのか分からない。しっくりくる言葉を検索してみるか。