オサレクリエイティブ

特上カバチ
櫻井翔堀北真希主演のドラマ。モーニングで連載中の同名の漫画が原作。


特上カバチ!」といえば青木雄二の「ナニワ金融道」の系譜を受け継ぐ法律マンガである。ナニ金が金貸しの立場から見た法律テクを、そして「カバチタレ!」では行政書士の立場から見た法律テクをマンガに盛り込み、読者に対し「連帯保証人にはなってはいけない」「法の無知は恐ろしい」ということを知らしめた。「特上カバチ!」は実質カバチタレの続編にあたり、「カバチタレ!」では補助者でしかなかった主人公の田村が行政書士に合格し、ひとりの資格者として活動する。


ではドラマではどうなっているかといえば、櫻井演じる田村はまだ補助者(つまり無資格者)のままであり、一方で堀北真希演じる住吉はバリバリの行政書士(しかも堀北の年齢に合わせてか、22歳バツイチという設定に)である。特上カバチにおける住吉の立場は、有資格者となった田村に対立する立場として登場した(加えて、女性のレギュラーキャラが皆無だった)わけで、田村が無資格者では、それはもう最初から格が違うということになる。別に最初から田村を行政書士にしてもよさそうなもんだったが、ここには「田村の成長」という要素を盛り込むつもりなんだろう。まあ田村の成長というよりは櫻井翔の成長なんだろうが。


ドラマの出来としては40点くらい。櫻井と堀北を起用していることから、中高生あるいは普段モーニングを読まない女性層にも見やすいつくりにしようとして、変なCGや大仰な説明、クイズなんかを盛り込んでいるんだろうが、正直邪魔すぎる。本編のほうでは案外マトモに話が進んでいるだけに勿体無い気がする。特に原作ファンからは評判悪いだろうなあ、と。自分含めてだが。


それよりなぜフジの「カバチタレ!」といい、今回の「特上カバチ!」といい、こんな泥臭い漫画を無理やり「オサレ(オシャレというのもなんか違うけどオシャレっぽい雰囲気を醸すもの)仕立て」にしようとするのだろうか。いや別に「オサレ仕立て」が悪いとは思わないんです。自分のような人間が見るから「オサレ仕立て」が鼻につくというだけで、世の中で「オサレ仕立て」を望んでいる層は結構な数でいますし、またテレビにそれを望んでいる人も少なからずいるわけです。その需要を否定しているわけではありません。


しかしだったら最初からオシャレの要素があるものを「オサレ仕立て」にすればいいだけの話で、何もオシャレ要素がない「カバチタレ!」や「特上カバチ!」をオサレ仕立てにしようとする意味が自分にはよく分からない。


かくいう自分だってなぜか「リアル・クローズ」をずっと見てましたし、「オサレ仕立て」そのものが嫌いではないんです。むしろ自分に全く馴染まないからこそ「妙に見てみたい」という気分にはなるんですが、それを「特上カバチ!」には求めてないというだけの話。櫻井翔が成長する話なら、別にこの話じゃなくたっていいじゃない、というだけ。自分は中居が演じた「ナニワ金融道」のような泥臭くなおかつ面白いを原作ファンとしては希望してしまうわけです。


もっと言えばドラマの「カバチタレ!」も結構好きだった。主人公の田村、ならびに相棒の栄田をまるまる女性に換えてしまうというウルトラCを成し遂げたということもあり、ドラマとしては面白かったと素直に思うんです。ただ、あれが「カバチタレ!」という名前を冠したドラマである必要は全くなかったとは今でも思う。


だから、今回も「櫻井翔堀北真希が出演する法律ドラマ」であれば、別に良かったと思うんです。中身は思ったほど悪くないし(但し中村雅俊演じる大野とのビルの屋上でのシーンは酷かった)。


カバチタレ」シリーズに、クリエイターの、あるいは広告会社やテレビ局の人間の「オサレクリエイティブ心」を刺激する何かがあるのかもしれない。だからこそシリーズの名前を冠して無駄にオサレを煽ろうという気持ちになるのかもしれないが、はっきり言って自分にはよくわからん。別に「特上カバチ!」じゃなくてよくないか?、とただそれだけ思う。