元彼女に「売られる」気分

「ロンドンハーツ」のオードリー春日観察が面白かったです。


同番組は鳥居みゆきの生態を観察する「鳥居みゆき24時」を過去に3度放送。謎に包まれている鳥居みゆきの生態を少しずつ解き明かしており、最新作では実の姉が登場し、鳥居が姉に甘える場面を捕えることに成功している。


本来鳥居のようなキャラクターの芸人は私生活をあまり晒さないほうがいい。晒してしまうとあの芸風が「普通の人が無理してやっている」という、いわゆる「我々と同じ」の構図に貶められるわけで、一気に視聴者の安心と油断と軽視を生む。あくまであの芸風が狂気として映るからこそ鳥居はテレビ芸人として重宝されるのだ。もちろんテレビでなくても鳥居の芸風を賞賛する声はあるし、お笑い好きはそれで構わないという人もいるんだろうが。


だから鳥居のこの企画は鳥居みゆき潰しにも繋がりかねないわけだが、そこは当代一の芸人観察番組の「ロンドンハーツ」であり、芸人を潰すような真似はしない。それと同じことが今回の春日観察にも言えた。あくまで春日のキャラを尊重し、彼の芸人としてのキャラを潰さない程度において素を晒そうとする絶妙なバランスによって成り立っている。その匙加減の絶妙さが「ロンドンハーツ」の凄いところでもある。


とまあ、今回の番組が面白く素晴らしい番組だったことを念頭に置きつつも、それでも「これは……」と思えてしまうのが「春日の元彼女登場」である。


そりゃ見ているほうからすれば、芸能人の真に近しい人、今回でいけば春日の元彼女が顔出しで登場するのを野次馬根性で見てみたいというのはある。けど、一方で「春日が芸人としておいしくなるならば協力する」と口では言うものの、おそらく出演料という名目で多少なりとものお金を積まれてロンハーに加担した、つまりは口ではなんと言おうと金で自分の彼氏(だった人)を売り渡した人間と付き合っていた、という事実は企画の面白さ以上に何か「イヤな感じ」を残しはしないだろうか。鳥居姉妹のように完全なる身内であればまた話は違ってくるのかもしれんが。


やっていること自体は、スキャンダル雑誌にツーショットプリクラを売って金にしているような人間と差がないわけですよ。身内を金にかえているわけですから。ただ「ロンハー」は見せ方が上手く、また対象となる芸人への愛がありますから、それほどイヤな感じがしてないだけであって、冷静に考えたら結構悪質でしょう。冷静に考えなくても悪質かもしれませんが。


ま、顔出しで出てこれるということは、それだけ現在も円満な関係であるということの裏返しであるから、半分身内のような感覚かもしれないが、これがもし喧嘩別れでもした相手だったならば、相手を徹底的に貶めることも可能なわけで、やっぱりあまり気分のいいもんじゃないなあとは思う。


ただ、いくら「いい思い出」だったか知らないけども、またどんな理由をつけていようとも過去のことを金に換えるような真似をする知り合いがいるというのは悲しいことであるし(またその程度の人間と過去に付き合っていたというのも悲しい)、見ているほうとしてもあまり気分のいいもんじゃない。芸人にとって「面白くなる」ことは何よりの免罪符ではあるんだが、それにしてもちょっとね、という気がする。


単に自分の人間不信が悪い想像を膨らませすぎなのかもしれないが、ちょっとイヤな気分になりましたとさ。ま、あれが無償の出演だとしても、それはそれで気持ち悪いって思うんだけど。