面白ければいいけどね

最近の「キレイになる女芸人」がどうしても解せない。


森三中やらクワバタオハラのくわばた、その他諸々がキレイになろうとしている。主にTBSが扇動している印象。元々は「おネエMANS」が単発の企画として女芸人をキレイにメイクするという流れだったように思うが、それを昨今の(というかいつから続いているか分からない)美容ブームと結びつけて「金スマ」「ドリーム・プレス社」あたりが次々と女芸人をダイエットや美容の素材として使い始めた。由々しき事態であると思う。


いつの時代も女性はきれいでありたいと願う気持ちは一緒だ。その願望は美醜を問わず。キレイな人はもっとキレイになりたいし、ブサイクな人は少しでもキレイになろうとする。悪いことではない。世の男性だってブサイクが沢山いるよりはキレイな人がたくさんのほうが嬉しい。だから女芸人といえども女性である以上は美しくなりたいという願望を認めないわけにはいかない。ダイエットもまた然り。


しかし一方で、「こいつらは痩せること美しくなることが同時に芸人として面白くなくなることを理解しているんだろうか?」と思わずにはいられない。


言っては悪いが、森三中にしろクワバタオハラにしろ、昨今のお笑いブームにおいて芸人としての面白さは相対的に考えればそれほど高くない。いや、低い。自分の見る限り森三中のコンビとしてのネタはほぼ意味不明であるし(黒沢ピンの歌ネタとかは面白いけど)、クワバタオハラのネタも最近少しマトモになったとはいえ、少し前までは酷いもんだった。


それにも関わらずテレビで重宝されてきたのは事務所の力も大きいだろうが、少なからず「ブサイク」というテレビ的に強力かつ分かりやすい武器があったからだと思う。簡単にいえば「キャラが立っている」からだ。にも関わらず「キレイになる」という自分たちの売りである部分を弱体化させることが、彼女らにとって何に繋がるのか自分にはさっぱり意味が分からなかった。


そこで考えた。なぜ彼女らがキレイになることを厭わないのか。それは「お笑い芸人を降りた」からじゃないだろうか。


お笑い芸人としては太っていたりブサイクであるほうが面白い。だから芸人であれば面白いほう(というか唯一の武器)を選ぶのはごく自然である。しかし、彼女らに「お笑い芸人ではない」という意識が芽生えたらどうだろうか。現状を見れば、森三中クワバタオハラもテレビにおいてネタを披露する機会は殆どないと言ってもいい。大抵芸人はテレビでネタを披露する段階を経て、徐々にネタを披露しないいちタレントとして扱われるようになる。この流れはタレントとしてのステップアップと考えてもいい。


この観点から考えれば、森三中にしろクワバタオハラにしろ、既にネタを披露することがなくリポーターやタレント活動がメインであるから、既にステップアップした位置にいるといえる。しかし本当は最初からそれほどネタを披露する機会を与えられず、女性であることの利点を生かしてリポーターなどのポジションを任せられたという事情がある。決して「もう彼女らはネタを披露するようなポジションではないですよ」という意味ではなかったはずだ。


にも関わらず、彼女らはその責務をまっとうし(その事自体はもちろん悪いことじゃない)首尾よくそのポジションに落ち着いたもんだから、芸人として、いや芸能人としてのステータスも一歩上がったもんだと錯覚しているのではないだろうか。だからこそ彼女らは番組の企画として痩せて美しくなることを厭わない。既に「芸人として芸を披露する」というポジションを卒業したのだから、美しくなっても問題ない、いやむしろそちらのほうがいいとすら思っている。


思うのは勝手だけど、自分はそんな横柄な考え認めんぞ。


いや、キレイになってもいいさ。面白ければ。けど森三中だってくわばただって、美人になることで間違いなく面白さが減殺されるでしょ?極端なことをいえば、蛯原友里押切もえ山田優森三中のコントをそのまま演じて大爆笑を取れるのか?クワバタオハラの漫才におけるくわばたの妄想を香里奈が演じて小原のツッコミが冴えるのか?もし彼女らが演じても素直に大笑いできるような見事なネタを作れるなら問題ない。けど奴らが作るコントやら漫才ってのは、少なからず演者がブサイクであることが笑いに寄与してるんじゃねえのか?


にも関わらずキレイになろうとする。それはもう完全に笑わせる気がないじゃない。そもそもだってさほど面白くないのに、その微々たる面白さをさらに削るってのはもう間違いなく芸人降りてるとしか言えないだろう。もしかして美人になっても面白くなるほど腕を上げたのか?だったら見せてみろや。


これはもう完全に「自分たちはネタを披露する機会がない」と油断しているか、「美しくなってもネタが面白い」と錯覚しているかのどちらかでしかないんだ。芸人としてではなく、ただ一人の女性として目先の「美しくなりたい」という欲求のもとにそういう企画に安易に乗っかっているだけだ。そしてちょっとだけキレイになって「キレイになったよねー」と言われたいだけだろ。普通の人ならいい。でもオマエら芸人だろ?我慢しろや。どこの世界に商売道具を捨てて成功する職業がある?



あと、言いたくはないが「キレイになる」とはいってもたかが知れているというレベルでいい気になっている(あるいは番組が過剰に持ち上げる)のが滑稽だというのもある。むしろこっちが理由として本命かもしれない。ブサイクがブサイクに抗うことの無意味を知っているからこそ芸人という道を選んだじゃないのかなあと思ったり。虚弱体質の男が通信空手で強くなろうとしているのに似ている気がする。