アイアンメイデン

「処女喪失は17歳」という発言はしていないとして、週刊誌に対する法的処置の検討を始めた加護亜依


おそらくは「事実と違うことを書かれた」という名誉毀損で訴える算段なのだろう。名誉毀損の構成要件としては、報道された内容が事実あるなしに関わらず名誉を傷つけるようなことを公衆に対して広く伝えたことが必要である。名誉毀損の訴訟に関しては、大抵の場合「虚偽の内容を報道され、名誉を傷つけられた」ことが争われるが、実はその内容が事実であるかどうかは必要条件ではない。もちろん虚偽の内容の場合は相手の害意が立証しやすく名誉毀損が成立しやすいわけだが。


仮に「処女喪失が17歳」という発言及び情報が事実だったときに、名誉毀損は成立するだろうか。おそらく、しない。


イメージが大事である芸能人、とりわけアイドルであれば処女喪失の年齢をバラされたことは商売に関わることだ。一気に人気が凋落する可能性も大きい。しかしだからといって「名誉毀損」とはならないだろう。処女喪失の年齢が17歳だったことが何か悪いイメージをその人に与えているかと考えても「まあ、そんなもんじゃないの」くらいの感想しかなかろう。名誉は毀損していない。せいぜい考えられるのは商売をダメにしたという観点で損害賠償が発生するか、あるいは憲法生存権や幸福追求権をベースにしたプライバシー権の侵害による損害賠償だろう。いずれにせよ名誉毀損ではない。


では「処女喪失が17歳」という発言及び情報がウソである場合はどうか。


まず、前述のような「プライバシー権の侵害」にはならない。なぜならこの情報はウソであるから。ウソのプライベートが暴かれても本人に守られるべきものはない。商売をダメにしたという点での損害賠償は可能であるが、この場合商売をダメにしたことで加護側がどれだけの損害を被ったかを算定しなければならないが、自分が思うには「0円」だろう。アップフロントをクビになり、これから再起というときに発生したスキャンダルでは、加護が復帰して順調に仕事をこなしたときの利益を算定できないからだ。というわけでこれも現実的には無駄かつ無理。


となると、加護が訴えるのは「取材で答えてないことをさも答えたかのように書かれた精神的苦痛による損害賠償」しかないだろう。


仮に裁判で争うとなれば、訴えた側は訴えるべき根拠が必要である。この場合加護は「インタビューで処女喪失は17歳と答えていない」ことを自ら証明しなければならない。一番手っ取り早いのは加護側がインタビューの時の音源を持ち出して、インタビュー中にそのような発言をしてないことが示せればよい。しかし最初からこのような事態を想定でもしない限りインタビューする側は録音することがあっても、される側が録音することはまずない。また、インタビューは大抵関係者のみで行われるわけで、この場合は当事者同士(加護側の人間と週刊誌側の人間)しかインタビューの場所にいないはずだ。となると、証言による信憑性は五分。現実的に「インタビュー時にそんなこと言ってない」ことを証明するのは録音の音源を持ち出す以外は困難だ。


ではどうすればいいか。答えは簡単。加護の「17歳で処女喪失」発言がウソであることを証明するなら、そんな発言をする蓋然性がないこと、つまり「加護が 17歳で処女を喪失していない」ことを証明するしかない。加護に残された道はこれしかないのである。発言の真偽を巡って、自らが「処女喪失は17歳ではなく別の年齢である」ことを証明しなければならないのだ。こんなバカげた話があるまい。裁判で「私の処女喪失は15歳であって17歳じゃない!だからこの発言はウソだ!」とすることに何の意味があるのだろうか。


週刊誌側はインタビューの内容に自信があるのなら、いやなくても加護側が法的措置に動いたら堂々と裁判を受ければいいのだ。そうすれば加護側は音源を入手していない限り、自ら加護の処女喪失年齢について発表せざるを得なくなる。しないと勝てない。だったらこんな愉快なことはないだろう。



と書いてはみたが、おそらくこんな事態にはならない。加護側が法的処置に動くかどうかも怪しいし、動いたとしてもどうせ早々に和解するのは目に見えている。要するに話題作りだ。はっきり言って今の加護にとって処女喪失がいくつであろうと、はたまたいくつであると報道されたところで大した意味も違いもない。ここで騒いでおけば一部マスコミや自分のようなヒマ人が取り上げてくれると踏んでいるんだろう。あるいはもっと穿った見方をすれば、最初から騒ぐのが目的であんな記事をぶち上げさせたのかもしれない。週刊誌と加護側の共犯の可能性もあるということだ。


あれだけタバコで騒がれ「タバコをやめます」とぶち上げたけども未だにタバコがやめられないとも発言する加護の処女喪失年齢なんぞ、小指の先ほどの価値も持ち合わせない。今後イメージが悪くなることはあっても良くなることはないんだから。


もし仮に加護側がこんなバカげた話で法的処置に出たならば、モー娘。時代の加護ファンは「あの頃応援していたのに裏切られた。精神的苦痛による慰謝料を請求したい」とか言って加護側を訴えたらどうか。もちろん噴飯モノの言い掛かりでしかないが、加護の今回の「法的処置を検討」の発言も同程度に噴飯モノだということでもある。