なぜそうなる

・L&G被害者、細川たかしらを提訴
「円天」という独自の通貨単位でもって違法な出資を募ったL&G事件の被害者のうち7名が、細川たかしを含んだ4名を「広告塔の役割を果たし、詐欺商法の被害を拡大させた」として総額4600万円の損害賠償を請求したらしい。


いやね、詐欺事件においてやっぱり悪いのは加害者であり、一番悪いのは逮捕された波和二会長であることは言うまでもない話ですし、騙された被害者は充分に気の毒だとは思うんです。けど、この手の詐欺っていうのは何十年も前から手を変え品を変え行われてきたいわば「伝統商法」みたいな部分もあり、充分な見識を持っていればそうそう簡単に騙されるもんではない。なにしろ会長の波という男が詐欺の常習犯だったということは有名な話だ。逮捕されても反省の色すらない。


だから、敢えて厳しいことを言えば「騙された被害額は授業料だと思って諦めろ」ということになると思うんです。単純に騙されたのではなく、「円天を購入すると美味い話にありつけまっせ」という甘い話に騙された自分がそこにいる。そうそう世の中うまい話なんて転がっているわけないだろうということは、何十年も生きていれば分かるようなもんだと思うのだが、高齢者に限ってコロっと騙されている。残りの人生はもう長くないのかもしれないが、授業料だと思って諦めるのが一番賢明のような気がする。


にも関わらず、広告塔の細川たかしに損害賠償を請求するのはお門違いもいいとこの「愚行」にしか思えない。


もちろん気持ちは分かる。大物歌手である細川たかしが堂々と支持しているわけだからこのグループは信用出来る。ある程度の胡散臭さを嗅ぎ取っていた人も、細川たかしの登場によって信用した人がいても不思議ではない。いや、割と多いのかもしれない。しかし、重要なのは細川たかしに損害賠償を請求するのはお門違いであるということ。だって、雑な言い方をすれば「逆恨み」でしかないでしょ、これ。


細川たかしが出てきたから信用するに至った、という心情をどう裁判で説明するんだろうか。そこまで筋金入りの細川たかしファンだったということを裁判で証明するんだろうか。むしろ原告側が細川たかしが出てきて「あっけなく」騙されましたというマヌケを立証してしまうんじゃないだろうか?


そりゃ細川たかしだって全く責任がないわけではない。本人がどこまで知っていたかはともかく、犯罪の手助けをしてしまったことは大いに反省すべきであろうし、その点を詰られても反論は出来ないような気がする。歌手としての評判が下がっても仕方ない。しかし、だからといって被害者側に損害賠償を請求されるべき話じゃない。個人的に彼らに接触を持っていたならともかく、イベントでコンサートを開いたその客だっただけで損害賠償とは、これはやっぱり逆恨みでしかないだろう。


そして自分が一番気に食わないのは、こういう裁判を起こすメンタリティにある。もちろん金を取り戻したいという気持ちは分かる。切実なのも分かる。しかし、こんな典型的な詐欺に引っかかってしまった自分のマヌケさを棚に上げてあろうことに細川たかしに損害賠償を請求するというその思考回路がイヤだ。根底に見えるのは「自分の判断が悪いのではない、細川たかしが出てきたから騙されたんだ」という責任の所在を他人に押し付けようとする態度だ。


これまた雑な発言をしてしまえば、細川たかしに損害賠償を請求をふっかけている時点で、この人たちはまた同じような手口に騙されるんじゃないかと思うのだ。もちろん円天とまるっきり同じなのではなく、同じ構造をもった詐欺のやり方に騙されるということ。なぜなら「自分は自分のせいで騙された」という反省が見えないから。こういう八つ当たり的な裁判を起こす人間が詐欺に騙されるんだろうなあ、という見本のようだ。あーやだやだ。