地獄を見た

湾岸スタジオに入ってから、さんまが「HEY!×3」収録現場に乱入。ダウンタウンとさんまという貴重なスリーショット。どうやら本当に乱入だったようで、高島アナが突入の時にあんまり見せない焦った顔になっていた。


本当にさんまは疲労のピークに達していたようで、ダウンタウンに何度も「ネプリーグ代わってくれ」と懇願。当然半分はシャレだろうが、半分は本心だったように思われる。さんま×紳助、さんま×タモリも貴重な映像ではあるが、「滅多にない」という意味ではさんま×ダウンタウンは今回一番貴重な映像になるはずだった。この時点では。


CMを挟んでまで繰り返された押し問答も結局は交渉決裂。そのままネプリーグへ。マラソンのときには4人しかいなかったメンバーは山田邦子扮する欧陽琲琲が加わって5人のひょうきん族チーム。さんまの口数が少なく、「はねトび」のときに見せていたような積極的なボケもままならず(当然だけど)番組としては非常にスムーズな進行。「はねトび」とは真逆のさんまが見れた。


さんまがマトモにゲームをこなしたおかげで展開としては最後のステージ「ファイブボンバー」まで逼迫していたが、ファイブボンバーにおいてネプチューンチームのにしおかすみこが2人目なのに全く答えられないうえにちっとも面白くないという芸人としての存在を否定されかねない醜態を晒し一気に均衡が崩れる。普段ならさんまの説教もんなのだろうが、疲れていて説教どころではなかったのかそれほど怒られず。


ひょうきん族チームは最初の問題を4問正解すれば勝ち、というシチュエーションになり、1枠のさんまがボケることなくマトモに答えて、しかも4番目の太平サブローがボケたつもりで正解を答えてしまい呆気なくコーナー終了。ゲームとしては何の問題もないわけだが、昭和芸人にとって「それでは全く物足りない」という結果に。マジメしか求められなかったはねトびの短縮鉄道は一体なんだったのだろうか。

18:30

サザエさん。さんまがアニメに出演。まあこれは27時間総合司会の特権なので特に触れるべきこともなく。

19:00

めちゃイケやべっち寿司をフォーマットに、「からくりTV」出演のためさんまが出られない穴を埋めるという企画。さんまのかぶり物をした人を「神様」と称して、「代理の人が入っているから」というていで好き放題にする壮大なコント。


結局はかぶりものの中も本物のさんまが入っているのだが、20時またぎのときだけ別人に入れ替わって「本当は入っていませんでしたよ」という体裁をとりつつもやっぱり本人が入っていたんですよ、ということを匂わせる。やり方としては非常に婉曲であり、視聴者としてはオチを含めた笑いどころをすかされた印象。視聴者としては入っていることを楽しむべきだったのか、それとも入ってないのに入っていると皆が思っているのを楽しめばよかったのかあれでは分からない。しかしこの後の事件を考えればもうそんなことどうでもいい。


ホリケンVS矢作、岡村VS宮迫(とそれを止める蛍原)というめちゃイケのお約束を交えつつ20時過ぎてさんま登場。「27時間名場面」と称してベスト5をカウントダウンで発表。主にナイナイが司会をした4年前の27時間からのランキングだったが、1位がさんまの自動車どっきりという名作。ランキング自体はそこそこ納得の出来だな、と思っていたらこれが壮大な事故の前振り。


1位が発表された直後に繋がる中継。たけしがペイントアート名人の鬼瓦権造に扮して、自動車をペイント。最初にペイントしていたのは岡村の車であり、「今回はさんまと見せかけて岡村か」と一旦思わせておいて、そのペイントされている車の下に置かれていたのがさらにペイントされたさんまの車。お約束のように止めに行くさんま。


スタジオではたけしがペンキを車にぶちまけており、さんまが止めに入るとさんまにペンキを浴びせ掛ける。それからはさんま以下たけし、岡村、今田、宮迫らがペンキまみれ。さらにたけしはさんまの車を動かし上に乗っていた岡村の車を落とそうとする。それでも足りないたけしは車を方向転換しどこかに向かおうとする。


上からの鳥瞰カメラで判明したことであるが、スタジオ内の壁で仕切られた場所にブロック塀が用意してあり、VTRでも紹介されたようにまた車庫入れに失敗する予定だったのだろう。しかしそのブロック塀の存在を知らされていなかっただろう出演者はたけしの乗った車が無軌道に暴れ回っているように映り、どうしたらいいか分からない。そんな中ブロック塀を隠していたセットの壁の前に立っていた今田が、ブロック塀に突っ込もうとした車にはねられるというとんでもない事故が発生。


スピードはそれほど出ていなかったしセットの壁がクッションとなって怪我こそなかったものの、生放送中の番組でタレントが車にはねられるという衝撃映像が放送された。さすがにこれには自分も「何か見てはいけないものを見てしまった」と複雑な気分になった。もはや岡村&さんまの車の真偽や本物だった場合の倫理的問題なんぞちっぽけな問題であり、「人がはねられる」というやりすぎの極北を目にしたことが大問題だ。


もはや笑える笑えない、抗議するしないの次元ではない。クールポコではないが「やっちまったなあ」の一言でしか表現できないあの独特のヤバさ。この後今田は何事もなかったかのように「カムバック列島カーペット」の司会をこなしていたのが不思議でならない。まるであの事故なんぞ収録のVTRで何の問題もなく、あれは夢の中の出来事だったかのようだ。真っ青な今田と真っ赤なさんまが司会をしている時点で夢でも何でもないんだけど。


宮迫の「今は2008年ですよね」がこの一連のコント、事件、事故の全てを象徴している言葉だった。

21:00〜

カムバック列島カーペットを経て(玉ねぎ早食い名人優勝おめでとうございます)、番組向上委員会のファイナル。主にひょうきん族チームの懺悔。毎年恒例の新人アナウンサーによる提供読み。そして最後は「今夜も眠れない」内でさんまに依頼されたBEGINが「夢のまんま」というこれまた普通にいい曲を披露。このままいい感じで終わるのかと思いきや、最後に登場するはタケちゃんマンの恰好のたけし。


ポン菓子(米などを高圧で爆発させるお菓子)の装置をリヤカーで背負って登場し、実際にポン菓子を作成。さらに出演者の頭上からも発射させ、先ほどまでの感動ムードをぶち壊す。そのくせちょっといい事言おうとするし。


さらには総合演出の三宅氏が実は今年で退職ではなくあと2年会社にいることが判明。さんまもたけしも「今年で退職するから」という誘い文句だったから引き受けたのに、という話になり懺悔室へ。27時間テレビは毎年最後は内輪ネタで終わることが多いのだけども、今年もご多分に漏れずそういう展開に。ちょっとテレビに詳しい人なら三宅氏がどういう人で、どういう経緯で今年の27時間テレビになったのかを知っているから楽しめるんだろうが、多くの人には関係ないわけで、こういう演出はいつもながら手前味噌でなんかしらける。



面白かった部分やそうでなかった部分、色々ひっくるめての27時間であったけども、最後の1時間半で全てがぶっ飛んだ。よくもまあ最後に謝罪の一言も出ずに終わったもんだと思う。なんだかんだで昭和を牽引してきたお笑いのパワーには敵わないということを証明したかのような番組でもあったし、一方で「もうそんな無茶出来る時代でもないよな」という相反したなんだか居心地の悪い感情が最後に自分に残った。


最後の事故は確かにハチャメチャで面白い。今田もピンピンしていたからまだ笑いになる。けどあの延長線上にあるのは間違いなく「悪ふざけによる死」であり、それが見えた今素直に面白がっていられないというのもまた事実。無茶の極北を見せ付けて終わっていった今年の27時間テレビはいい意味でも悪い意味でも間違いなく記憶に残る一本となった。


そしてなんだかんだ言っても明石家さんまというお笑い怪獣の凄さを認めざるを得ないだろう。さんまがバラエティにおけるルールである時代はちょっとづつ終わりを見せてはいるが、それでもまだ若手に対してあまりに圧倒的な力を見せている時点では、すんなりと引導を渡せるような事態にはならないだろうとつくづく思う。


最後に、こんな酔狂な番組を放送した27時間テレビの全ての関係者、およびその27時間テレビを楽しみつつ自分の実況まがいの更新を読んでくれた皆様に感謝を申し上げたいと思います。今後また同じようなことをやる自信も気力も現時点ではありません。ただもし仮にそういう機会がまたあるならば、その時はまたよろしくどうぞ。


おしまい。