掌リターン

くぅちゃん、かわいそうやん。


いやー、世間の倖田來未に対する掌の返し方が凄い。見事なまでに掌返しましたな。いやね、おそらくは自分のように「倖田來未のあの評価、どうなの」と思っていた人は世間に思った以上に多かったんでしょう。それが今まで見て見ないフリをしてきたけども、「羊水は35歳から腐る」というあまりにも分かりやすい失言を機に叩いてしまおうという輩がなんて多いことか。


そりゃ「羊水腐る」発言を擁護するつもりは全くありません。別に倖田來未に関わらず、内輪の話で「35歳までに結婚して子供産まないと、羊水腐ってまうで」と冗談で言うことはあると思う。そして別に本気で倖田だって羊水が腐るとは思ってないだろう。思ってたらそれはそれで酷いんだけど。


ただ、そんな発言を仮にも「スター様」でいらっしゃる倖田がラジオで発言していいものではないというだけの話。これがもし「そっくり」と形容される綾戸智恵が、「わてな、小さい頃に35歳までに子供産まんと羊水腐る言われまして、それで急いで子供産みましてん」と言っても誰も問題視しないだろう。キャラの問題もあるだろうが、やはり35歳に満たない倖田が35歳以上の女性の出産を否定するような発言は、以前に書いた滝口ミラのネタではないがそこにリアルな質感の悪口として映る。


そもそも倖田がそういう考えを持っていたところで批判はすべきではないが(いかに芸能人であろうと我々が思想にまで介入する権利はない)、それを公の場で発言するかはまた別。そして自分の立場を鑑みて、その発言がどのような影響を与えどのような事態になるかを考えられないのは「芸能人としてダメじゃん」の一言で片付いてしまう。倖田だってそこそこ分かってはいたはずだが、それでもこういう発言が出てしまうということは、やっぱり最近調子に乗ってたんだろうなあと。だから倖田が反省するのはこれ当然のこと。別に同情はしない。


しかしだからといってCM業界が一気に掌を返すのは違うと思う。なぜならCMに起用するということは彼女の価値を利用すると同時に、彼女の価値を高める片棒を担いでいることになるからだ。特に自分が腹立たしいのは、ここを長いこと読んで頂いている方にはお分かりだとは思うが「氷結」のCMを放送していたキリンである。キリンは氷結のCMを放送しないことを決めたようだ。


確かに倖田來未は調子に乗っていた。ではこの倖田來未を「羊水腐る」とラジオで平気で言わさせてしまうほどに増長させた原因は何か?と問われれば自分は間違いなく「氷結のCM」と答えるだろう。ここで何度も書いているが、あのCMこそが「天下の倖田來未はこんなことをやるくらい世間に認められてますよ」というのを我々に見せ付けるものだった。あの時に既に手遅れの感はあったが、それでもあそこで「ふざけるな倖田。お前がそんなCMするなんて許してねえぞ」と世間が声高に叫んでいれば倖田がここまで増長することはなかったと思っている。キリンはあのCMを作ることで倖田來未の無駄に高い評価に寄与してしまったのだ。


つまり、キリンがあのCMを作ったことについて倖田を増長させた責任があると自分は考えている。倖田の失言の原因の半分はキリンにあると言ってもよい。そのキリンが倖田の失言によってCMの放送を見送るとはどういう了見なのだろうか。倖田を増長させておいて、その増長による舌禍が起きたら知らんぷり。これはあまりにも酷い。今まで散々持ち上げておいて、なにかやらかしたら掌を返す。昨年見たことがある光景、そう、亀田一家とTBSの関係に似てはいないだろうか。


TBSは散々亀田一家を持ち上げた。それは亀田興毅、大毅にボクサーとしての価値とともにキャラクターの面白さがあった。キャラクターがあったから(そしてそれなりに強かったから)TBSは持ち上げたのだろうが、TBSが過度に持ち上げなければあそこまで極端なキャラクターにはならなかった。しかし負けたことにより亀田兄弟のキャラクター及び「強ければOK」という図式が破綻すると、そのキャラ作りの片棒を担いできたTBSは掌を返したかのように亀田批判を始める。こんな醜いことはない。視聴者の誰しもが思っただろう。それと同じことを、キリンは倖田來未に対してやっている。なんて下品なんだろう。TBSに下品を感じた人はキリンにも下品を感じなければおかしい。


キリンは少なくとも倖田來未のあの「な!」のCMを放送し続ける義務がある。それが倖田を増長させた結果あの発言に結びついたことを反省する手段に他ならない。自分はあの発言とは関係ありませんよとほっかむりをしてCM放映を自粛するなんてもってのほかだ。それどころか「羊水腐るっていう発言しても、それが倖田來未やん。な!」というCMを放送すべきなのである。だって、あの氷結のCMはそんな倖田來未を世間が許容しているという了解で作られていたんだから。それを今更曲げるなんてことをしちゃいけない。


倖田來未の発言は悲しいまでに自業自得である。それは間違いない。しかしだからといって彼女の増長に手を貸していたCMが一斉に放送見送りや自粛を決め込むのは卑怯である。その点のみ倖田は可哀相だ。彼女が増長してもいいというお墨付きを与えていたCMが「そんなこと言ってません」と言ってしまったら、倖田がなんで増長していたのかが分からなくなってしまう。この点をうやむやにしてしまうと、また同じことが起こる。日本人はこういう出来事に怒りを表すがすぐ忘れるし、同じことをやらかす。いいかげん学んでもいいんじゃないだろうか。少なくとも今回CM自粛を決め込んだ企業はまた同じことをやる。特にキリン。世間が忘れても、自分だけは忘れないようにしたい。