ほどよくまとまる

今年の「高校生クイズ」を見ました。感想としては「ほどよくまとまっている」でした。

 

3年1周期の高校生クイズは今年から新ターム。司会も枡アナから安村アナに変更され、パーソナリティも千鳥からかまいたちへ。リニューアルといえばリニューアルだが、縮小再生産といえば縮小再生産である。ただまあ悪くはなっていないのでアリ。

 

コロナ禍での開催ということもあり、大勢のチームがスタジオに来られないのは昨年と同じ。1回戦はリモートで2回戦に進出したチームからスタジオというのも致し方ない。ただまあだからこそ1回戦は「せっかく全国大会に進出したチームに少しでも楽しんでもらいたい」という気持ちが欲しいのだけど、毎度毎度扱いが軽くて哀しい。

 

2回戦からはスタジオで大小のボール仕分け問題。決勝の砂トロフィー引っこ抜きもそうだけど、奇抜なアイディアもさることながら最終的に「理系の実地知識が必要」という着地点は、「東大王」との差別化において非常に重要。結局「知の甲子園(クイズおたくドヤ顔選手権)」時代の高校生クイズは「東大王」が継承した形になり、そこに憧れがあるクイズ研究会の面々はそちらに流れた。今回高校生クイズにはクイズ研究会系の出場者がめっきり減っていた。予選ではじかれたのもあるのだろうが、そもそもこちらを狙ってこなくなったのだろう。自分はそれでいいと思う。棲み分けは必要だ。

 

ボール大小の仕分け問題に関して言えば、自分はずるい大人なのでこんなことを考えていた。仕分けミスは+5秒のペナルティ。200個あるボールを全て大の箱に分ければミスは100個で500秒(=8分20秒)加算。全てを箱に入れるだけで30秒くらいはかかるとしても、それでも8分50秒になる。次のクイズに進んだ高校の一番遅かったタイムが8分49秒だったので、手早くやればこれでも勝てたんじゃないかと、見ながら思っていた。

 

3回戦は3チーム合同の協力戦。やっぱり高校生クイズにはこれが必要なのよ。クイズそのものは「さもありなん」な問題だったが、共同戦線を張るクイズがあるからこそ、次の展開がある。問題そのもので関係性はそこまで見えなかったけども、これは有効打だったなあと。

 

準決勝でマトモなクイズ。ただし単なる知識クイズではなく、今回の高校生クイズのテーマである「ソウゾウ力」を生かした問題。「東大王」との差別化になれば、もうこの路線しかないわけですよ。「オリンピックのサッカーのハーフタイムの時間帯にトイレに行く人が増えるので、その時間帯に水道使用量が上がる」という問題は、ワールドカップのときの高校生クイズの過去問にあったと思う(それとも「雑学王」だっただろうか、定かじゃない)のだけど、一応知識側にも配慮してんのかなあとも少し思いました。

 

決勝は近年恒例の「体力実地知識ミックス問題」。今回は砂に埋まった巨大優勝トロフィーを引き抜く問題。体力も必要といいながら、砂に埋まったトロフィーを引き抜くには明らかに「理系の知識」が必要。ボール仕分け問題で灘高校が「ボールに光を当てて、影の大きさで仕分けする」なんてことをして失敗していたが、自分の持つ知識を基に実地に役立てるというのがいかに難しいかが分かる。この路線は最終的に「知識のみを持つ人間よりも、そこそこの知識を持ちながら発想力や行動力を持った人間が最後にまくっていく」というカタルシスを生み、「これなら自分たちでも勝てるかもしれん」となった高校生が戻ってくる可能性が以前より少し上がったのかなあ、なんてことは思う。

 

高校生クイズはこの路線をブラッシュアップし、あとは高校生同士の友情を生む仕組みさえちゃんと整えれば息を吹き返すんじゃないだろうか。周期1年めにしてはほどよくまとまっており、またかまいたちの有能さが目立った(高校生相手では千鳥よりもかまいたちのほうが優秀)。何百回も書いているけども、高校生クイズは「クイズ大会」ではあるけども、それよりも「青春を軸にした人間ドラマ」であってほしいのよ。クイズマニアのためのクイズは「東大王」に押し付けておいて、高校生クイズは「人間ドラマの復権」を目指そうぜ。自分は高校生が仲良く盛り上がったり、いがみあったりする瞬間が見たいのです。

 

あと最後に声を大にして言っておきたいが「トトトトラーイ」はやめよう。