青春の放熱

おじさんがももクロちゃんのアルバムについて感想を述べるという至極どうでもいい更新なので好きな方だけ。

 

ももクロちゃんのニューアルバム「MOMOIRO CLOVER Z」はとっても素晴らしい。まあ発売されるアルバムは毎度毎度素晴らしく、かつて「まあ売れるんでしょうけど」とクサして数年干された人がいるとは思えない出来です。仲直りしてるからいいんですけどね。

 

今回アルバムの初回限定盤Bには4人で改めて収録した昔の楽曲が「ZZver.」として収録されている。*1ももクロちゃんはライブで割と古い時代の曲も歌うグループなので、全然古い感じはしないのだけど、いかんせん今は4人であるし、歌も確実に上手くなっているし、当時の曲と今の曲とでは様変わりしているものもちらほら。グループの仕切り直しとして、長いこと聴いている楽曲のリアレンジはファンには嬉しい仕様だ。

 

正直なところ5人(あるいは6人)が4人になったところでの「パワーダウン」感はあまり感じなかった。もちろんリアレンジする際にそこのところは細心の注意を払ってはいるだろう。しかし同時に楽曲制作当時のお世辞にもうまいと言えなかった歌が、10年のときを経て確実にパワーアップしているところが大きい。

 

特にリーダー百田夏菜子の歌声はとても素晴らしい。歌唱力という意味では「普通」なのだろうが(もちろん昔に比べれば格段に上手くなっている)、「普通」じゃないのは彼女の歌声。こちらの感情を気持ちよく揺さぶるのだ。今風の言葉を使えば「エモい」のである。昔は歌唱力の拙さからくるやや叫びにも似た歌声にその片鱗はあったのだけども、今は完全に気持ちが歌声に乗っているという感じ。もちろん最近のライブではこの夏菜子ちゃんの歌声を聴くことは出来るのだけど、これを改めて音源として収録してくれるのは有り難い限りである。

 

なもんで、どの楽曲もリアレンジされたものは素晴らしく、「4人のももクロ」の良さをストレートに感じることが出来る。基本的にリアレンジされたものは全ておすすめだ。しかし昔の楽曲を長く聴いていれば聴いているほど、元の楽曲に思い入れも強くなるというもの。早見あかりの歌声が、有安杏果の歌声が聞こえないことで違和感を覚えることも物足りなさを感じることもあるだろう。

 

自分はそこらへんあまり気にならない人間なので、どの曲も基本的には「おー」と思ったりしたわけですが、唯一「全力少女」だけが「上手いけど、前のほうが良かったかなあ」と思ったのです。以下理由。

 

「全力少女」は2011年に発表された楽曲であり、ファンの中でも人気の高い1曲である。初期ももクロのライブパフォーマンスを形容する「全力」という言葉が入っているという意味でも重要な曲であり、10代の恋する少女の心情を綴った歌詞は当時の彼女たちにシンクロするような曲でもあった。

 

しかし時は流れ、ももクロのメンバーもみな20代。最年少佐々木彩夏ですら今年で23なのである。もはや「全力“少女”」という歳ではない。ただし楽曲は楽曲であるから、今のももクロちゃんだって全力でこの曲を歌うのだ。ZZver.での「全力少女」は「等身大の自分たち」を歌う曲から「全力で恋する少女を応援する立場」に聴こえる。アレンジが多少しっとりしているのと、あとは全員の歌声が大人になったせいである。そりゃそうだ。

 

自分が元々の「全力少女」に感じているイメージは「青春の放熱」である。若くて歌唱力も表現力もなかった当時のももクロが「全力少女」というキーワードのもと、自分の出来ることを歌い、踊る。それは拙いかもしれないが、確実に10代にしか出せないパワーであり、当時の楽曲にはそのパワーが封じ込められている気がするのだ。ものは言いようであるが、当時の拙い歌声が楽曲の良いスパイスになっている。もちろんZZver.が悪いことなんて全然ない。しかしどちらかに軍配を上げるとするならば、「全力少女」に関しては僅差で旧ver.なのかな、と個人的には思う。

 

……とまあオッサンの御託はどうでもいいので、古くからのファンは限定版BでZZver.を、「ももクロしっかりと聴いたことないのよ」という人はベストアルバムからの今回のアルバムというコースで聴いてみてちょうだいな。ライブに行って泣くまでがももクロちゃんの楽曲です。

 

*1:2011からグループ名にZがついたので、それ以前に発表されて再収録された楽曲は「Zver.」として、さらに有安がいなくなり4人になって再収録された曲はガンダムにあやかって「ZZver.」となっている