ハードルはそのまま!

ドラマ「チャンネルはそのまま!」を全て見ました。

 

「チャンネルはそのまま!」は佐々木倫子のマンガであり、それを原作にしたドラマが北海道のローカル局であるHTB(北海道テレビ)の50周年記念ドラマとして制作された。Netflixで先行全国配信されたが、地上波では北海道が当然のことながら初放送になる。

 

制作のHTBは「水曜どうでしょう」で全国にも知られた地方局。今回のドラマの監督(複数名いる)にも「ヒゲ」の愛称でお馴染みの藤村氏が含まれている。何ならドラマ本編にもかなり重要な役として登場している。というのも原作漫画におけるその役が自身がモデルとなっているというのだから仕方ない。

 

また、HTBはそれこそ「どうでしょう」でお馴染みだった平岸高台にあった本社を札幌駅近く中央区のど真ん中のビルに移転し、お役御免となった旧本社を撮影の舞台として丸々使用したというのも面白い。思い出を作品に残すという意味でも優秀だし、「そもそもスタジオ作る必要がない」という意味でも経費削減である。結構豪華な出演者(ゲスト)も制作費を回せたことが大きいんじゃないかと思ってしまう。

 

さてこのドラマ、北海道に住んでいる自分はただテレビで流れているものを見たに過ぎないわけだが、今後Netflixを介さなくても色々な地方局で放送されることが決まっているようだ。商売上手だHTB。しかしどんなに商売上手でも「ももクロChan」打ち切りの恨みは死ぬまで言い続けるぞ。たぶんもう北海道内でも自分しか言ってないと思うけど、これは言い続ける。決めたこと。

 

それはともかく、このドラマ、ネット上での評判がすこぶるよい。そりゃそうである。だって「見たくてNetflixで見た人」と「北海道に住んでいて北海道バイアスのかかったドラマを見た人」の感想を総合すれば、「面白い」という感想にはなるだろう。しかしここは自分は冷静に、「ハトヤが見たドラマの感想」という最悪のバイアスがかかった状態でいくつか気になった点を挙げておく。今後見る予定のある人は「本当かよ」と思って見ていただければ、見る予定のない人は適当に読み流していただきたい。

 

芳根京子すごい

最初に挙げるポイントがかなりバカっぽい感想で申し訳ないが、このドラマの制作が主演を芳根京子に据えた時点で90%以上成功は約束されていたと言っても過言じゃないだろう。「べっぴんさん」は芳根京子の演技の素晴らしさを全く生かすことのない雑なドラマだったが、このドラマに関しては「芳根京子は凄い!」と素直におすすめできる仕上がりになっている。原作未読の自分でも「原作はこんな感じで面白いんだろうなあ」と思えるもの。それはひとえに芳根京子のおかげ。ちなみに芳根京子ももクロちゃんの黄色こと玉井詩織さんと仲良しでよく出かけているのだが、この世のものとは思えない顔の小ささを誇る玉井さんと写真で並んでも遜色ない顔の小ささである。これもすごい。

 

音尾琢真の扱いが雑

北海道が誇る演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーも総出演。大泉洋「どうでしょう」の関係は今更説明するまでもないだろう。なもんで大泉は蒲原という非常に重要な役。森崎は雪丸(芳根)の父、安田はライバル局ひぐまテレビの情報部長、戸次は蒲原を逮捕する刑事と、皆それなりにちゃんとした役を与えられているのだけども、音尾だけは「蒲原のことを昔からよく知っている農家」という、かなり地味な役。しかも田中邦衛のモノマネをさせられており(本人が自らしたのかもしれないけど)、完全なるオマケ扱い。これはチームナックスにおける音尾の立ち位置としては間違ってないのだけど、さすがに差がありすぎて笑う。

 

夏菜子ちゃんいらない

自分がこんなこと言うのもアレなんだけども、これは確実に書いておきたい。自分が敬愛してやまないももクロちゃんのリーダーであり赤い人こと百田夏菜子さんがカメオ出演しているわけですね。というのも主演の芳根と百田は「べっぴんさん」で共演した仲であるし、またももクロちゃんの主演映画「幕が上がる」には芳根さんが出演しています。同名舞台にも出てます。そしてその映画の監督は「踊る大捜査線」で有名な本広克行。今回のドラマの総監督でもあります。そしてこの回の担当監督はももクロライブの演出担当でもある佐々木敦規。そんなこともあり、百田さんが札幌で行われた「ももクロ10周年記念展」での来場のついでに同時期に撮影されていたこのドラマにもちょろっと出ているわけです。

 

そんな事情を詳らかに知っている自分のような人間は、夏菜子ちゃんが画面上に出てくることに対してニヤニヤしながら見てしまうことは必定なのですけども、そうでない人にとってみれば、そもそも「この意味ありげに出てきたお姉ちゃんは誰なんだろう」となる。そのお姉ちゃんが「ももクロの人」あるいは「百田夏菜子」と認識できたとしても、「ん?これは何か意味があるの?」と思ってしまうような感じの出方なわけです。

 

ラーメンの出前持ちとして登場した夏菜子ちゃんに対して、芳根さんに「どこかでお会いしましたっけ」とか言わせてしまうんだよね。もう、これが辛い。好きな人はいいんだけど、そうじゃない人は確実に「ん?」ってなる。ストーリー全然関係ないし、彼女ら(監督含む)の関係性なんてどれだけ知ってると思ってるんだよ。

 

自分が本広克行という映画監督をあんまり得意ではない理由のひとつでもあるんだけど、「好きな人向けへのサービスが過剰すぎて本筋でスベっている」というのはどうにかしてほしい。もっと自然にストーリーの邪魔をすることなく入れ込むことは出来ないもんなのか。自分の言ってることがなんとなく分かると思うので、4話の該当シーンを見てどう思うか(思ったか)誰か教えてくれないでしょうか。

 

ちなみにどうでもいい話だが、wikipedia当該ページの出演者の記述の中には夏菜子ちゃんは含まれていない。書いた人も「書かなくていいだろ」と思ったに違いない。

 

・あまりハードルは上げて見ないほうがいい

個人の感想としてドラマ全体の評価をするなら「まあまあ」である。つまらないドラマでは全然ありません。間違いなく「べっぴんさん」よりは面白いです。ただ「面白すぎる」とかいう文言で煽るほどのもんではないです。演出はところどころ「どうでしょう」風味もしますし、好みが分かれるとは思います。ストーリーに関してのツッコミどころを挙げれば、最終話で逮捕直前の蒲原の中継をマスターカットをするかしないかで悩むところがあるんだけども、あんな特ダネすぐ判断するだろうよ、とは思った。

 

「あんまり期待していなかったけど、見てみたら思ってたより面白かった」くらいのハードルの高さぐらいが一番楽しめるんじゃないのかと思います。一番いけないのは期待しすぎてつまらんと感じてしまうことでしょう。それは誰も得しないです。やっぱり自分は道民であるし、北海道にいるからこその面白さは間違いなくある。ただそうでなくてもこのドラマの良い部分は伝わるし、充分に楽しめるはず。ただしあんまり期待しすぎちゃダメよ。