角度がえぐい

「脱力タイムズ」の古坂大魔王回が素晴らしかったです。


「脱力タイムズ」とはくりぃむしちゅー有田がキャスター「アリタ哲平」に扮し(といってもまんま有田なんだけど)、ゲストコメンテーターとして呼ばれた芸人(および芸人に準じる人)をターゲットに本物の文化人とゲストタレント(今回は満島ひかり)とともに徹底的にボケ倒すという、現在のバラエティの中でも1、2を争う「クレイジー」な番組である。


今回古坂大魔王は「ピコ太郎が出演できなくなった代わりにプロデューサーの古坂が出演」という紹介。もちろん古坂とピコ太郎は同一人物であるが、様々な番組で古坂は頑なに「ピコ太郎と古坂は別人」と貫き通している。それを出演者が「同一人物なんでしょ?」と聞くひとつの形が出来上がっているのだが、ボキャブラ時代からの盟友であり、古坂の面白さをよく知る有田はそんなイジり方をしない。「あくまで古坂とピコ太郎は別人」というスタンスのもと、出演者に「ピコ太郎がこなくて露骨にガッカリ」をさせるのだ。古坂を知り尽くしている有田だからこそ、相手の懐に入って仕掛ける。


さらには「人生に影響を与えた人」として、次から次へと大物芸能人を真似するモノマネ芸人をVTR出演させる。まるで「ピコ太郎が古坂じゃないと言い張るのはこういうことですよ」と言わんばかりに。勿論それは嫌がらせではなく、ちぐはぐな面白さの手段として用いているのだ。一方でBOOMERやX-GUNといったボキャブラ同世代芸人はそのまま出演させ、古坂の正解すぎるツッコミを待つ。これは有田の古坂のみならずボキャブラ同世代芸人に対する愛だ。


そして最後には、「満島さんにピコ太郎さんからVTRが届いてます!」と振る。そんなVTRを撮った覚えがない古坂は「いや、届いてないと思いますよ」と否定。「古坂さんじゃなくてピコ太郎さんだから分からないじゃないですか」と満島。こんなもん笑うしかない。そして流れたVTRには「コーラを一気飲みした後でPPAPをやります」というハイキングウォーキングQ太郎(もちろん“太郎”つながり)が登場し、会場の笑いを誘う。全てがトリッキーでありかつ効果的に笑いを誘う。30分の番組に「俺なら古坂大魔王をこう使う」という有田の笑いが凝縮されていた。見事としか言いようがない。


この番組が生み出す有田の笑いは、他の番組の目線とはちょっと違う。古坂がピコ太郎VTR紹介のときに思わず「角度がエグい」と発言したのだが、まさにその通り。今こんなエグいお笑い番組を見ることが出来るのは、たぶんここだけ。もっともっともっと話題になっていい番組なんだけどなあ。