匠の配置

爆報!THEフライデー」にてEXIT兼近が逮捕歴について語る。

 

とはいえ「これは全く知らなかった!」という情報が出てきたわけではなく、今まで流れていた情報を整理したような感じ。逮捕された容疑の詳細について語られることはなかったが、札幌在住の身としては「ススキノでよく捕まっているタイプのやつ」だなあという印象くらいでしかない。

 

自分だってそりゃあ犯罪者に対する嫌悪感がないとは言わない。しかし自分の嫌悪感の源泉は「犯歴を武勇伝的に思っているその性根」であり、逮捕歴はなくてもそういう人間は多い。ただの素行不良を「やんちゃ」と言い換え誤魔化すのが嫌いだ。一方兼近は自分のやったことを美化するわけではなく、「正しく反省」しているように思える。兼近に逮捕歴はあるかもしれないが、いまだに「やんちゃ」したくてたまらない奴らよりよほどマシである。

 

だからまあ今回の番組は「もうこの話題は今後一切なし!これで終了!」というケジメだったのだろう。それでいいと思う。これ以上掘っても何も出ないよ、という意思表示でもあるんだろう。吉本にしては珍しくちゃんとした対応だ。何かを学んだらしい。

 

個人的には文春の記者の直撃が悪意ありまくりな感じで描かれていたのが笑った。いやでも実際あれぐらい悪辣なんだろうし、もっとやったほうがいいよな。それと取材を受ける番組は「爆報」で良かったのだろうか。それこそ同じ日に「金スマ」だってあるんだ。今のEXITならば金スマでいけたはずなのだけど、逮捕の内容が女性受けしないと踏んだのだろうか。でも「爆報」見ている人も大概金スマ見ている層とかぶっている気もするんだけど。そこらへんの謎が残る。

 

本題はこちらではない。こちらではないのかよと言われそうだが、こちらではないのだ。個人的に面白かったのは「この日の番組構成」である。

 

どう考えたってこの日の目玉は「EXIT兼近が騒動を語る」である。だから番組としては極力引っ張りたい。しかし2時間の構成の中で最後まで引っ張ると、前半の内容で飽きられたら再び戻ってくることはない。絶妙なタイミングでこの話題を投入する必要がある。

 

そんな中まず番組が扱ったのは「羽生ゆずらない」である。興味のない人は「誰だよ」となること請け合いのモノマネ芸人だ。もちろん名前の通り「羽生結弦」のモノマネ芸人であるが、現在は改名し本名の「あいきけんた」で活動している。改名は自身の文春報道による世界中の羽生ファン(本物のほう)からのバッシングによるものだとか。自分は「改名した」ということは何となく知っていたけども、詳しい経緯は知らなかった。ていうか知る気もなかった。

 

というわけで最初のVTRとしてはいい感じに小粒で「早くEXITを出せよ!」と適度な飢餓感を煽る感じになっておりました。そしてまだこんな小粒のジャブで引っ張るのかと思いきや、この次がEXITである。あまり引っ張るのは得策ではない、と「ぴったんこカンカン」の安住騒動で学んだらしい。

 

で前述のEXITに関するVTRが流れ、本来の目的はここでお終い。しかし次に持ってきたVTRが「歌姫の元恋人Mの現在!」である。これはねえ、結構ズルいんですよ。もちろん歌姫は浜崎あゆみだ。VTR中では頑なに浜崎の名前は出さないんだけど、BGMが全部浜崎だしVTR見ているスタジオの出演者が「あゆじゃん」って言ってるのに笑う。

 

もちろん「M」はエイベックスの松浦社長のほうではなく、ダンサーですぐ別れたマロこと内山麿我(まろか)。Mであることに間違いない。昔のテレビ番組がよくやってた手法ですよね。別に「M」が「マロ」であることがズルいわけではないんですよ。ズルいのは「絶妙にどうでもいいVTRを持ってきて、EXITの余韻でつい見ちゃう」という点である。

 

これねえ、不思議なもんで自分は全て見てしまったんですよ。「どうでもいいわー」とか言いながら。でもあまりにどうでもいい感じが、EXITの多少重くなっていた余韻を抹殺してくれるんですね。これは絶妙かつ巧み、まさに匠の配置だなあと思いました。

 

もっとも自分は内山麿我に多少の興味があり、過去に「本当にどうでもいい」と思いながらこんなものを書いてしまっている。ヒマすぎて死にそうな方は一読してほしい。

nageyarism.hatenablog.com

内山の「まろ」の字は「麿」という「麻」の下に「呂」を書くタイプであるが、どうしても「磨」(「麻」の下に「石」)と間違いやすい。実は今回のVTRの中でも一か所「磨」の字を使っていたテロップがあった。気付いたのは世界で自分だけだろう。

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それはともかく、内山が相変わらず女性にだらしなく現在の妻がキレているという、当人同士以外は全く興味がないやり取りを全国に放送する。どうだい、ワイルドだろ?と言わんばかりのどうでもよさ。これはEXITの事をきれいさっぱり忘れさせてくれました。素晴らしいです。

 

最後は朝ドラ「なつぞら」のモデルとなった奥山玲子さんの話題でしたが、マロの後ではただの付け足しにすぎません。マロで終わると番組そのものが破綻してしまいますが、なんとなく最後にちゃんとしまっていれば「番組っぽい」という体裁を整えるものですね。よくできています。

 

ただの下世話な番組と思いきや、構成の緩急がとても練られている。だてに8年も続いているわけではないな。ていうか8年もやっているのか!とこの一文を書くときに調べたこの事実が羽生よりも兼近よりもマロよりも何より衝撃っていったいどういうことよ。