襲名披露興行

日本において「襲名」は結構なじみのある制度であります。


伝統芸能においては、先代の名人の名前をそのまま芸名として受け継いでいく。もっと言えば歴代の天皇なんてのは「後○○」なんて具合に、歴代の偉大な天皇の名前に「後」という接頭語をつけて自分で名乗ったりするわけです。先人へのリスペクトを忘れないのと同時に、偉大な名跡を継ぐことが「芸能文化」そのものを守るということにも繋がるのかもしれません。


しかし日本の今の芸能界において「襲名」というのはあまり馴染みがありません。もちろんテレビに出演する歌舞伎役者や落語家はたくさんいるので、いつの間にか名前が変わっていた、なんてことはよくあるわけですが、それ以外の人たちで名前が変わる、あるいは襲名するなんて人はあまり見かけません。伝統芸能以外では引田天功が今のプリンセステンコーに2代目を譲ったくらいしか思いつかず、それよりも名前をつけるつけないでモメた「新加勢大周」騒動のほうが記憶に鮮やかなくらいである。


そろそろ日本の俳優も「襲名」制度を採用してみてはどうだろうか。伝統芸能よろしく、後世に伝えるべき名前はあると思うわけです。ハトヤさんが提言する後世に残すべき偉大な名跡、その名は「木村拓哉」ですね。


木村拓哉、通称キムタク。日本のドラマ界において「木村拓哉」というジャンルを築きました。今は「安堂ロイド」というタイトル超絶面白ドラマ(見てません)に出演中です。こんなタイトル超絶面白ドラマでさえ、木村拓哉という看板があればドラマとして成立してしまうのだから、これはもう現在の日本の芸能界における大名跡に決まってます。歌舞伎界のスーパースター、市川團十郎中村勘三郎松本幸四郎などの名前に比肩する名前だと思います。この名前を後世に残さないなんてのは我々現代人の怠慢というべきところ。


また、いくら初代木村拓哉こと木村拓哉が大名跡のスーパースターだとはいえ、彼ももう40。「初老」と呼ばれる年齢に差し掛かっているものであります。もちろん名人は年齢を重ねるほどに円熟味を増すものですが、「木村拓哉」というジャンルにおいてはもう引退を考える時期なのかな、とは思います。もちろんいち俳優としての木村拓哉はまだ活躍できると思うのですが、それとこれとは話が別。その一方で、「木村拓哉」というジャンルの創始者である以上、その伝統芸能を受け継ぐ後継者が現れるまでは現役を退くわけにはいかないというのも、創始者ならではの苦悩であるように思われます。


そんな「木村拓哉」といち俳優の間で揺れる初代木村拓哉でしたが、この度めでたく後継者、つまり「2代目木村拓哉」を名乗るべき人物が頭角を現してきました。はやいところ襲名をすべきです。


2代目木村拓哉を襲名すべき人物、その名は「斉藤工」。


「さいとうこう」ではない。「さいとうたくみ」である。今更自分が説明するまでもない(と思う)有名俳優である。ではなぜ今彼が2代目木村拓哉を襲名しなければならないか。それは今斉藤が出演中の「ミス・パイロット」の演技が、これはもうジャンル「木村拓哉」を名乗るのにふさわしい「キムタク」っぷりなのである。


「ミス・パイロット」は堀北真希が主演のANAドラマである。客室乗務員、いわゆるスチュワーデスのドラマはあったが、新人女性パイロットが主人公のドラマは初。まあ大して興味持たれなさそうだからやらなかっただけだと思うんだが、堀北真希が全力で堀北真希なのでそれで全てがOKなドラマだったが、ここ数回がちょっと面白い。数年前は上戸彩と同じANAで新人客室乗務員を演じていた相武紗希が今度は新人パイロットやってるのが結構笑える。


2代目こと斉藤工が演じているのは彼女らの教官役のパイロット。アテンションプリーズで言うところの真矢みきである。厳しくも温かく接するその態度は、ドラマの演出家に「GOOD LUCK!の木村拓哉風でお願いします」と言われているかのようなキムタク演技。顔もどことなく似ているということもあるのかもしれないが、ここまでキムタクに寄せてきているのはちょっと面白い。本人にそのような意識がなければなおのこと面白い。


斉藤も32歳と大して若くはないのだが、それでも初代木村拓哉よりはまだ若く、十分に「木村拓哉」のジャンルを全うできる知名度と技量がある。ここは初代木村がはやくいち「木村拓哉」に戻るためにも、斉藤に「二代目」を襲名してもらってはどうだろうか。まだ襲名が早いというのであれば、斉藤に「木村小拓哉」をとりあえず名乗ってもらうか、「斉藤工」から「斉藤拓哉」にちょっと寄せてもらうとか、まず段階を踏んでからでどうだろう。いずれにせよ両者のためにも、襲名のため動いたほうがよい。


そして今回の「ミス・パイロット」を「二代目木村拓哉襲名披露公演 ミス・パイロット」を銘打てば、意味も分からず視聴率もアップ。ついでに「初代木村拓哉」は「安堂ロイド」に改名すればいいと思います。二代目が二代目に相応しいかどうか、あなたも襲名披露公演ことミス・パイロット」を見て確認してほしい。