建前は大事

日曜の朝、完全に寝惚けている頭でテレビをつけたら「家でやれ」というフレーズが今まで使ってきたどの場合よりも相応しい場面に遭遇しました。


フジテレビで放送されている「ボクらの時代」という番組において、「高橋英樹×高橋美恵子(小林亜紀子)×高橋真麻」という高橋親子3人が鼎談をしていたのだ。


「ボクらの時代」は日曜朝7時から放送している番組で、縁の深い3人がトークを繰り広げるというシンプルなもの。名前もそうだが「僕らの音楽」のトークのみバージョンと考えてもいいだろう。組み合わせとしては同じジャンルに属する人たちのトークもあれば、フジの映画やドラマの宣伝の時もある。Wikipediaには今までの出演者が羅列されており、それを眺めていると回によってはかなり興味深い組み合わせもあるのだが、いかんせん日曜の朝ということで自分は大体見逃す。録画予約しておけばいいのだろうが、大抵忘れる。要するに視聴習慣がついていないということだ。


でまあ今回も誰が出演しているかなんて知らないままテレビを見たら、そこに出ているのは高橋親子。自分には何が行われているのか一瞬分からなかった。しかし時間が経つにつれようやく自分の思考回路が繋がってきたとき、どうしようもない気持ち悪さに襲われた。


誤解のないように言っておけば、この番組で親子共演というのはさほど珍しいことではない。前述wikipediaより調べてみれば過去にも宮川大助・花子に娘のさゆみ、アニマル浜口夫妻に浜口京子柄本明ファミリー(柄本明角替和枝柄本佑柄本時生)、海老名香葉子林家正蔵・林家いっ平(現・三平)、荻原健司荻原次晴・父親、、そして来週放送予定の梅宮ファミリー(辰夫・クラウディア・アンナ)とまあこんな感じ。


もちろんこれらの家族は家族皆、あるいは2者が有名人であるという要素を満たしている。そりゃ一人だけ有名人で残り2人が一般人だったらおかしいことになるので当然といえば当然。その点高橋親子だって3人が3人とも有名人ではあるけど、ひとつおかしいのは娘の高橋真麻はご存知のようにフジテレビのアナウンサーであるということ。正直「それはアリなんだ」と思った。


高橋夫妻の娘としての高橋真麻はフジテレビのアナウンサーであるから一応は有名人扱いしてもいい。けど、だからといって曲がりなりにも自局のアナウンサーをそういう扱いでテレビに出すのはちょっと変じゃないだろうか。高橋親子の共演は過去に何度も行われてはいるのだが、あくまでそれの共演はちょっとしたお遊びみたいなところがあった。しかし今回の場合は完全に「高橋親子であること」がメインの出演なわけで、これはもうお遊びどころの騒ぎではなくなっている。


フジテレビが女子アナをどういう基準で採用しているのかは知りません。だから多少容姿に難があるとしても、「女子アナになるには美人でなくてはならない」という採用基準がない以上、高橋真麻を「コネ採用」だと言い切ることは出来ないのです。だから採用したならしたで、他のアナウンサーと同様の扱いをすべきなんです。けど、こんな番組の起用のされ方をしてしまっては、もう完全に「高橋夫妻の娘としての高橋真麻(一応フジテレビアナウンサーだが、完全なるコネ入社)」という解釈しか許されなくなる。簡単に言えば「恥知らず」でしょうよ。企画するほうもするほうだが、出演するほうもするほうだ。


自分は高橋真麻という女子アナの佇まいは嫌いじゃないんです。むしろ普通の人よりは好意的なくらいです。アナウンス技術もそれほど悪くないですし。親子共演だってお遊びの範疇ならば別に構いません。しかし今回のように「親子共演」ということがメインになってしまのは、やっぱりどうしても「そこまで行くのは違うんじゃねえの」と言いたくなるんです。


肝心のトークの内容は殆ど覚えちゃいません。うっすらとした記憶では真麻が恋愛観について語っていたような気がしますが、それこそ「んなもん家で話せ」というようなもんです。本来「テレビ的な面白さ」という意味では笑いどころがたくさんあったのでしょうし、こんなもん自分が笑わなくて誰が笑うんだと言うのが正しいのでしょうが、自分にはこの状態があまりに笑えなかったもんでそれどころじゃなかった。


例えば高橋真麻がアナウンサー以外の仕事でそこそこ有名人だったら自分は別に何も感じなかったでしょう。アナウンサーだとしてもフジ以外の局だったらセーフ。反対にフジのアナウンサーだとしても他局の番組ならばまだ許せる。フジがフジの社員なのに真麻を高橋夫妻の娘として「も」扱うからどうしようもない。


有名人の子息を社員にして、しかも有名人の子息としてテレビに出すことは気持ち悪い。政治家の世襲をどうこう言えた立場じゃないだろ。テレビ局はそんなのがゴロゴロ存在するから麻痺しているのかもしれないが、いち視聴者からすればこんなに気持ち悪いことはない。たとえあまりに分かり易過ぎるコネ入社であったとしても、それを前面に押し出すして開き直るような真似をするのはやっぱり違う気がする。全員分かっていたとしても「そうじゃないよ、実力でアナウンサーになったんだよ」という建前くらいは大事にしてくれ。